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事件にまつわる話

このお話は、殺人事件に関する記述が含まれます。苦手な方は読むのをおやめください。

20年位前のお話しです。ある得意先からメールで黒い女性の下着の写真が送られてきました。この下着についているレースに心あたりはないですか? という文面付きです。

そのレースは以前私が、下着用のレースとして別の得意先に販売したものでした。何か問題でも・・・この時点で不安な気持ちになります。

写真を送って来た得意先担当者に電話をすると、この下着の写真は警察から送られてきた物だというのです。

奈良県の山中で女性の遺体が発見された際に、その女性が唯一身に着けていた物で、ご遺体の身元を調べる手がかりとして付いていたレースから捜査をしているとの事でした。当時、レース卸をしている会社で構成された日本レース商業会という団体があり、警察からそのメンバーであった得意先に業界内での回覧の依頼が有ったとの事でした。

奈良県警の刑事二人が私の会社にすぐに来られました。そして刑事さんはカバンの中から正にその黒い下着を出してきました。土がたくさん着いたとても痛々しい物です。

レースは間違いなく私が石川県のレース工場に依頼して作った物で、どこのレース問屋さんに販売して、そのレースがさらにどこの下着メーカーに納品されたかを刑事さんに伝えました。

すると刑事さんがさらにカバンの中から数枚の紙を出してそれに目を通し始めました。やがて「あった!!」と声を上げました。刑事さんは事前に関西地区の下着メーカーのリストを作っていて、その中に私が話したレースの最終納品先の下着メーカーがあったというのです。

実際に私がレースを販売した問屋に一報を入れて、刑事さんが伺う旨伝えました。そして問屋訪問の後、二人の刑事さんはその足で下着メーカーに向かったそうです。

その後、そのご遺体の身元が判明したのか、事件だとすれば犯人は逮捕されたのかはわかりません。でも、黒いレースが手がかりとなってご遺体がご家族の元に戻る事ができていれば良いなと思った20年位前の出来事です。

ひとつだけ不謹慎な話。刑事さんが私の会社から出る前に、その関西地区の下着メーカーのリストを営業の資料としてコピーさせていただけませんかとお願いをしました。私はとても営業熱心だったのです。

刑事さんの答えは「ノー」でした。当然ですよね。




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