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マフラー

毎年この時期になると編み物をする。
3年ほど前だろうか。仕事先でお掃除のお姉さんと仲良くなり、その方に編み物を習った。

最初は全く編むことができなくて手取り足取り教えてもらった。休憩時間に何度も何度も。それからお姉さんの素敵な作品を見せてもらって。
何気ない世間話をして、お茶を飲んで。

そんなことが心から幸せだった。

最初の年。マフラーを編んだ。当時一緒に働いてた友達とクリスマスの話をしていたと思う。友達が、「私はプレゼントなんてさ、ほら。」と少し諦めたような顔をしていた。二人でコピー機の前に突っ立っていた。たまたまパートナーがいなかったのかもしれなかったが、彼女はとても心のあったかい人だった。

なんとなく、こっそり彼女の好きなピンク色の毛糸を買って、お掃除のお姉さんに昼休みに教えてもらって、マフラーを完成させた。そして、彼女の誕生日にデスクにこっそり置いた。驚くほどすごく喜んでくれたことをよく覚えている。

それから娘のマフラーも編んだと思う。ついうっかり洗濯機に入れてしまった、縮んでしまい、見るも無惨な姿だった。ブルーのマフラーだった。

次の年。娘のマフラーをもう一回編んだ。娘のクリスマス会のプレゼントにした。今度は別の会社に就職したので、会社のソファで昼休みに編んだりした。お姉さんはいなかったが、編み物の本を読みながら、そして去年の楽しかった思い出を頭の中で繰り広げながら、編んだ。ピンクと白のマフラーだった。そしてなぜか案の定、洗濯機に放り込み、見るも無惨な姿になった。

そして今年。
また娘のマフラーを編んでいる。そして自分のマフラーも。娘は紫で、私はピンクだ。

そう、2度あることは3度ある。きっと。
数ヶ月後に私は洗濯機に放り込み、見るも無惨な姿のマフラーを2本見ることになるだろう。

どうしてまぁこんなにも編み物を編むのかよくわからないが、なんとなくランニングする時の感覚に似ている気がする。
頭のなかにぼんやり浮かんでくる思考をただ眺める。ただそれだけ。

説明書には1時間ですぐ編めます!なんて書いてあったけどいったい何日かかっているのかしら。そんなことは、まぁ横に置いておきましょう。

そして、数ヶ月後には洗濯機に放り込み、無惨な姿でショックを受けるのだろうなぁ。まぁそんなことも、今日は横に置いておきましょう。

ぐるぐる回る頭の中。思考はどこかにとりあえず置いて。
やるべきことは肚に聞いてみよう。
少しずつ日が長くなっている大寒の日に思うことはこんなこと。

マジックアワー



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