一重の白いバラのような音楽会
10代の終わり頃、
小さな教会の小さなコンサートで、
中世の声楽曲を聴きました。
それまでの人生で聞いたことのない音楽で、
外国の音楽なのに、
変な表現ですが、懐かしいような不思議な気持ちに
なりました。
シェークスピアの時代の可愛らしい
フォークソングもあって、
心の奥の方がときめいているのがわかりました。
それ以降、ピアノが生まれる前のチェンバロ、
日本の琵琶の遠い親戚と言われるリュート、
リコーダー、
ヴィオラ・ダ・ガンバ
(脚のヴィオラの意味)などの古楽器、
中世ルネッサンスの音楽が
とても好きになりました。
クラシックの声楽曲というと、
オペラのアリアなど、
派手な印象を持つ方もいると思いますが、
現代のような大ホールで聞く音楽では
ありませんので、全く趣が違います。
地味です(笑)。
中世の音楽は、自然の中で、または、
ろうそくの明かりの下で、少人数で
弾いたり聞いたりしたものなので、
森の中で聞く小鳥たちの声や、
風でさらさらと葉っぱが揺れるような
そういうイメージに近いかなと思います。
リュート奏者の「つのだたかし」さんの
「小さな声で」というYouTubeを以前見たことが
ありますが、そこで、
「リュートの好きなところは音が小さいところ」
とおっしゃっていました。
池内紀の「二列目の人生」のことをお話されていて、
「一列目じゃなく二列目が好き」というのが、
ああ、つのださんらしいなあと思いました。
30年ほど前に、
「つのだたかし」さんのリュートと、
メゾソプラノの「波多野睦美」さんのコンサートに
行った時は、その洗練された音楽に、ただただ
感動しました。
つのださんが、
「音が消えていく姿が見えていく演奏をしたい」と
やはり動画でおっしゃっていましたが、
波多野さんの歌もまた、細部の細部まで、
音が消えていくまで、心が寄り添っている感じの、
まさに「音が消えていく姿が見える」
非常に美しい、いつまでも心に残るコンサートでした。
一流の人の音楽というのは、
膨大な練習時間を全く感じさせないのは
もちろんですが、
大きな音よりも、小さな音、
消えていく音のありようで、わかる気がします。
「好き」を深め極めるからこそ、
軽やかに楽しみながら、
しかも自己主張をする必要のない静かな自信、
上質の
一重の白いバラのような品の良さがあり、
あのような奇跡の時間を、空間を、
作り出せるのかなと思います。
先日も何年かぶりに
「つのだたかし」さんのリュートと、
ソプラノの「鈴木美紀子」さんの小さなコンサート
に行ってきました。
ステンドグラスを見ながら聞いていると、
時を超え、場所を越え、
中世のフランスに旅をしたような気持ちに
なりました。
最近は、古楽器のコンサートは、
お寺などでも行われているようです。
もしも、機会があって、
ぴんときたらぜひ聞いてみてくださいね♡
「澄み切った歌声と繊細なリュートの音色が、
この世の雑念を払ってくれる」
(金澤正剛 朝日新聞)
かもしれません😊
最後まで読んで下さって
本当にありがとうございます。
あなたにとってよい週末になりますように♡