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1.元凶

こんばんは。

皆さんはコロッケそばと言う食べ物をご存知でしょうか。

わたしは柳家喬太郎師匠の落語で初めて知りました。

初めのうちはうまい美味いと蕎麦屋へ行くたびに食べていましたが、2019年の夏に東急線蒲田駅のしぶそばでコロッケそばを食べたときのことでした。大変に暑い日でしたので氷水を沢山飲みながら食べていたら気分が悪くなりました。汁まで飲み干すのがわたしのポリシーなので、死ぬ気で流し込みました。その後、吐き気を我慢しながらポプロードを走り抜け、あの汚い川を渡り京急蒲田駅までたどり着きました。その頃にはもう汗だくで気が狂いそうでした。

ひとしきり高架橋の撮影をして、京急蒲田駅の2階ホームへと向かいました。ひとまず休憩しようと思い、ちょうど切り欠きのあたりの無骨なベンチに腰を下ろすと蒲田要塞とも呼ばれる巨大な構造物である京急蒲田駅が巨木のように思えてきたのです。わたしは巨木の木陰に抱かれているような、穏やかな涼しさを感じました。

その時です、2区画空けてあとから座ってきた小太りの中年男性が電話を始めました。

キットカットはチョコだから!冷蔵庫入れて!LOOKも!
こりゃ太るわけだ。ただ、そのようなことを本気で考えている人がいるのかと気がついたのです。ちなみにこの出来事は、京急川崎のセクハラ大魔王とともに、わたしの京急三大ミステリーのひとつです。

わたしもなにか本気で考えることにしよう。ひとまずその日のことを考えました。自由が丘で遭遇した東上線系統1番Fライナー、短編成がうろつく東急電鉄の世界。色々と思い出すが、もっとも記憶の多くを占めるのはもちろんコロッケそばだ。

思いを巡らせた。

果たして、本当にコロッケそばはおいしいのだろうか、なぜわたしはあのようなものをことある事に食べているのか。

ここでわたしはひとつの道筋が見えたのである。わたしにとってコロッケそばが美味しいものであるというのは、目の前で轟音響かせながら右から左へと次々走り去っていく京急電車ほどは赤くないにしろ、嘘であるという事だ。

しかしなぜそんなものをことある事に食べるのか、なぜ当たり前になったのか。それを読み解くことはなにか大きな発見となるのではないか。そこに思考の面白さを感じた。

そこからわたしの全てというほどではないが思考の道は始まったのである。

大層なことを書いているようだが、コロッケそばを食べて気分を害して、コロッケそばを始めて疑っただけだ。

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