僕ヤバの深読み【Karte.6 僕は嫌だ】僕の心のヤバいやつ
Karte.6 山田が市川に共感する回
山田は「変わったやつ」なのだが、どうもそれが周りに理解されていない。
周りとは感性が違いすぎて自分では「面白い」と思っていることが空回りしている。
南条に言われた心にもない「面白い」という言葉が嬉しくテンションが上がってしまう山田だったが、山田を守るべく自転車を投げた市川の言い訳(アクセルとブレーキを間違えた)が山田のセンスにぶっ刺さり、爆笑しながら「市川って面白いね」と、自分への最大の褒め言葉を市川に送るという回。
この回を境に山田は「市川は自分と同じ感性を持っているのでは」と思い始める。
山田は最終的に市川の「変わったところ=自分と同じ」に惹かれるので、それの皮切りになるこの回はすごく重要だと思う。
山田は面白いと思われたい
(何を考えているかというクイズに対して)
南条「正解は『近くで見るとすげー可愛い』でしたーマジで」
山田「……」
南条「ホント可愛いね」
山田「……」
南条「つーか山田さんって意外と面白いよね」
山田「ホントですか!? どの辺が面白かったですか? 友達にいつもつまんないって言われるんですよ」
「面白い」という評価に急に食いつく山田。
フォントが変わるほどの語気の変わりっぷり。
市川の「(面白いが最大の褒め言葉なのかよ~)」の通り、山田にとって「可愛い」「キレイ」などは、言われつくされた言葉だ。
山田はむしろ、面白い(もっと言えば子供っぽい)ところに注目してほしいと思っていて、その辺りはKarte.4「僕は渡した」で市川のイラストを受け取ったあたりでもほんのり描かれている。
暴力は許せない
意中の女性が男性と楽しそうにする姿を見て、市川は気に食わない気分になる。
それもそのはずで、市川は山田のことを「面白いやつ(変わったやつ)」と思っていて、そこに惹かれている。
なのに、本心でもない「面白いよね」という言葉で山田を釣って、楽しそうに会話する南条に対してイライラしたからだ。
まあここまでは、話術の範囲なので、市川もイラつく程度だったのだろう。
が、南条が山田の腕を掴んでLINEを聞き出そうとした。
女性にとって、男性の腕力とは恐怖の対象で、絶対的で、強制力がある。
それを使ってLINEを聞こう、というのは度を過ぎた不誠実で卑怯だ。
珍しく、市川が能動的に山田を守ろうとする無意識の決意が見えるシーン。
「は?」というか「カチン」というか、「それは無しだろ」みたいな。
そんな印象を受ける市川の表情。
「僕は頭がおかしい」が「僕は頭がおかしいのか?」へ
Karte.1で市川は自分のことを「僕は頭がおかしい」と客観視していた。
Karte.1の深読みでも、筆者は「本当に頭のおかしい人は自分が頭がおかしいとは思ってないので、市川は常識人である」と読んだ。
男性の暴力に対して実直な怒りを示すあたりもそうだろう。
しかし、意中の相手を守ろうと自転車を投げる自分のこと「恋」の感覚を認識できず「頭がおかしいのか?」とバグってしまう。
山田が市川を「面白いやつ」と認識するだけの回かと思いきや、初恋のよくわからないモヤモヤした感情を、市川らしい視点から捉えた素晴らしい回。
昨夜、ファッション誌を見て冷めたと思いきや、(市川の考える)山田の魅力を欠片も理解していない男から、山田を守るために勇気を振り絞る健気さ。市川かっこいい。
Karte.5までは「市川が山田をどう思うか」というテーマが中心だったが、Karte.6から13までは「山田はどんな人間で、市川をどう思うか」というテーマが中心になっていると思う。
筆者はKarte.6を象徴的な切り替えし回だと思っていて、Karte.5からの繋がりと移り変わりが素晴らしいな、と感じた。
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