vol.5 センセイ、自由は欲しくないですか?
博士とフランケン サウザーの白熱教室
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※試聴版。オリジナル版(56:02)は購入後に視聴可能。
その5(最終話)
センセイたちは、もっと怒(いか)らねばならない。
センセイたちは、類稀なる頭脳と良心とを併せ持つ、優れた人々である。それなのに、その良心に甘えて、つけ込み、いろんなものを毟り取ろうとする連中で、この国は溢れている。
良心と正義を礎とする倫理観。
医は仁術なりという格言。
センセイという呼称。
作中では、看護師さんのことを「奉仕の精神を持っている、アンパンマン」と呼ぶシーンがある。これは看護師さんを指しての言葉であったが、その実態から考えるに、センセイたちもまた、立派なアンパンマンである。
―――アンパンマン。
助けを呼ぶ声があれば、空を飛び急行し、
お腹を空かせている人がいれば「これ食べなよ」と自分の顔をもぎとって差し出す。
人々を脅かすバイキンマンと身体を張って日夜戦い、苦しくても何度も立ち上がり、その身を挺して人々のために尽くす。まさにヒーロー。救世の英雄である。
「ありがとう、アンパンマン!」
そういって感謝の言葉をかけられる。けれどもーーーその両の掌は空で、何も残っていない。しかしもとよりアンパンマンは、見返りなど求めないで戦うと決めている。
医は仁術なり。
人を慈しむ仁の精神で行う、奉仕であると自分に言い聞かせ、今日も戦う。
そんな風にして、無垢なるアンパンマン達は10年ほど戦って、ようやく気が付く。
その両手に何も残っていないことに。
青春時代の全てを投げ打ち勉学に打ち込んだ。夏の海も、冬の雪山もーーー恋も。たくさん、たくさんのものをその両手から取りこぼしながらも、ようやく掴んだ医師免許。それさえ掴めば、医師にさえなれれば、という想いで登り続けて―――彼らはとうとうアンパンマンになった。
それなのに。
努力して我慢したアンパンマンたちを待っているのは―――
累進課税のマックス税率と、24時間365日の精神の拘束。
人によっては妻にATM扱いされたり、三為業者がタワマン投資でカタにはめようとしてくる。
無垢なるアンパンマンは、四方八方から、その顔を毟り取られていく。
国に、病院に、妻に、業者に。
鳥葬の如く群がられ、ついばまれていく。
それでも「医は仁術」だからーーーアンパンマンは、怒らない。
いや、”怒ってはいけない”と思い込まされているのだ。
しかし、違う。
お医者さんたちは、センセイたちは、アンパンマンじゃない。
センセイである前に、ひとりの”ヒト”なのだ。
だからーーーセンセイたちは、怒(いか)らなくてはならない。自分の金や時間を毟り取ろうとしてくる輩には、激怒しなくてはならないのだ。
抵抗する、なんて生やさしい言葉じゃない。
「激怒」しなくてはいけないのだ。
その激怒の、憤怒の力でもって、自分の”持ち物”を守らなくてはならない。
なぜここまで書くのかといえばーーーセンセイたちは、この国で最も優しくて、最も善なる人たちだからである。自分の時間も、力も、世のため人のために使い尽くそうと一度でも誓った彼らが、そんな仁慈の心を持つ彼らが、自分の”持ち物”を守ろうとするならば、それはもう”激怒”の感情によってしか、為されることはない。
本作では、いかにセンセイが搾取されているか、報われていないかを、一世代前に体験した二人のセンセイが語ってくれる。その先に出口があると信じ邁進した二人が、その先に何を見つけたのか。そのことを、二人の先輩は語ってくれる。だからもし、現状に悩む若きセンセイがこれを読んでいるのなら、ぜひ聞いてほしい。
間違いなくセンセイの10年後を、変えるはずだから。
しかしながら、本作は決して「医師を辞めろ」とは語らない。
なぜなら博士もフランケンも、医師という存在の大切さ、尊さを知っているからだ。だが一方的に毟り取られるのはあまりにも不憫に過ぎるので、後進に自らと同じ轍を踏ませぬよう、提案をしているのだ。
全てを譲り渡すのではなく、自分の取り分を確保せよ。守り抜け。
取り分とは具体的には「時間」である。グランドタイトルの「自由」とは、つまるところ「時間」を意味している。自分の随意によって使える時間。カネも名誉もあっても、唯一この「時間」がないばっかりに、センセイたちは人生に光明を見出せずにいる。
これから先の未来、人口減により医療財源が枯渇し医師が余っていく中で、年収の低下は避けられそうにない。もはや逃げ切りは不可能な局面で、どう進めば良いのか。その”処方”を、二人の先輩は示してくれる。
先ほど、医師は激怒しなければならないと述べた。自分の時間を、自由を、金を奪おうとしてくる勢力を見逃してはならない。食い物にしようとしてくる者達から、自分の資源を守り通さなくてはならない。そうして守り抜いた資源を使ってーーーやはりセンセイ達は、仁の道を歩んでいくのだ。
いかに怒れと、激怒せよと言われても。
やっぱりセンセイたちは、どこまでいっても善人で、仁慈の心を持つアンパンマンなのだ。自分勝手に、風に吹かれて歩く生き方は、努めたってできはしない。その根幹は、いかな憤怒の感情に一時とらわれても、変わることはない。
ただ、従来とはアプローチの仕方を変えるという話なのだ。
現行の、医療財源をアテにした方式ではもう無理だ。
そうではなく、真に自分が施したい医療サービスを、然るべき方法によって提供したい。
何としても達成したい。現況に歯痒い思いをしているセンセイほど、その想いは強くなる。
なぜならセンセイたちは、紛うことなき、真の士大夫なのだから。
時間を手にした憂国の士大夫たちは、再び立ち上がる。
それは賢き頭脳を生まれ持ち、その上、強く自分を律し、自らを磨き上げた者だけに課される、辛く険しい責務の道なのかもしれぬ。ゆえにセンセイたちが次のステージに進むことは、いわば必然であったとさえ言えよう。
本作は、博士とフランケンという二人のセンセイの、次世代に託す祈りの結晶。
自らの身の可愛さなど超越し、次世代のセンセイ達、さらには国家の医療体制にまで想いを致す。その姿勢にはやはりーーー”士大夫”を感じずにはいられない。
「医は仁術なり」
その本質は、センセイたちの奴隷的労働や、犠牲の上に成り立つものではない。
うまくいかない現状を真に「なんとかしよう」と思いやる真心から、始まっていくのだ。
「自由」には、フリーダムとリバティという英訳がある。
与えられる自由、受動的なフリーダムに対し、
自分で選択する能動的な自由、リバティ。
センセイが手に入れるべきは、享受する自由ではなく、自ら選び取る自由ーーーリバティなのだ。
センセイ、自由は欲しくないですか?
をはり。
著・ヤコバシ
【オーディオブックの正しい使い方を伝授する】
1.集中して聴かない。オーディオを聴くための時間をわざわざ取らない。スキマ時間や作業時間に『ながら』で聴くのが正しい使い方である。
2.ぼけーっと繰り返し聴く。聴き返すたびに毎回聴こえ方が違うぞ、とか、刺さる言葉が違うぞ、と思ったならそれは良い聴き方。一回で全部吸収してやろう、と言うのは悪い聴き方。
3.PCのnote.muサイトからMP3ファイルをダウンロードする。itunesその他で、スマホに同期する。電車や車での移動中、家事の最中に聴くのが良いと思う。ストリーミング再生で聴くのはあんまりおすすめしないかな。
センセイたちは、もっと怒(いか)らねばならない。
センセイたちは、類稀なる頭脳と良心とを併せ持つ、優れた人々である。それなのに、その良心に甘えて、つけ込み、いろんなものを毟り取ろうとする連中で、この国は溢れている。
良心と正義を礎とする倫理観。
医は仁術なりという格言。
センセイという呼称。
作中では、看護師さんのことを「奉仕の精神を持っている、アンパンマン」と呼ぶシーンがある。これは看護師さんを指しての言葉であったが、その実態から考えるに、センセイたちもまた、立派なアンパンマンである。
―――アンパンマン。
助けを呼ぶ声があれば、空を飛び急行し、
お腹を空かせている人がいれば「これ食べなよ」と自分の顔をもぎとって差し出す。
人々を脅かすバイキンマンと身体を張って日夜戦い、苦しくても何度も立ち上がり、その身を挺して人々のために尽くす。まさにヒーロー。救世の英雄である。
「ありがとう、アンパンマン!」
そういって感謝の言葉をかけられる。けれどもーーーその両の掌は空で、何も残っていない。しかしもとよりアンパンマンは、見返りなど求めないで戦うと決めている。
医は仁術なり。
人を慈しむ仁の精神で行う、奉仕であると自分に言い聞かせ、今日も戦う。
そんな風にして、無垢なるアンパンマン達は10年ほど戦って、ようやく気が付く。
その両手に何も残っていないことに。
青春時代の全てを投げ打ち勉学に打ち込んだ。夏の海も、冬の雪山もーーー恋も。たくさん、たくさんのものをその両手から取りこぼしながらも、ようやく掴んだ医師免許。それさえ掴めば、医師にさえなれれば、という想いで登り続けて―――彼らはとうとうアンパンマンになった。
それなのに。
努力して我慢したアンパンマンたちを待っているのは―――
累進課税のマックス税率と、24時間365日の精神の拘束。
人によっては妻にATM扱いされたり、三為業者がタワマン投資でカタにはめようとしてくる。
無垢なるアンパンマンは、四方八方から、その顔を毟り取られていく。
国に、病院に、妻に、業者に。
鳥葬の如く群がられ、ついばまれていく。
それでも「医は仁術」だからーーーアンパンマンは、怒らない。
いや、”怒ってはいけない”と思い込まされているのだ。
しかし、違う。
お医者さんたちは、センセイたちは、アンパンマンじゃない。
センセイである前に、ひとりの”ヒト”なのだ。
だからーーーセンセイたちは、怒(いか)らなくてはならない。自分の金や時間を毟り取ろうとしてくる輩には、激怒しなくてはならないのだ。
抵抗する、なんて生やさしい言葉じゃない。
「激怒」しなくてはいけないのだ。
その激怒の、憤怒の力でもって、自分の”持ち物”を守らなくてはならない。
なぜここまで書くのかといえばーーーセンセイたちは、この国で最も優しくて、最も善なる人たちだからである。自分の時間も、力も、世のため人のために使い尽くそうと一度でも誓った彼らが、そんな仁慈の心を持つ彼らが、自分の”持ち物”を守ろうとするならば、それはもう”激怒”の感情によってしか、為されることはない。
本作では、いかにセンセイが搾取されているか、報われていないかを、一世代前に体験した二人のセンセイが語ってくれる。その先に出口があると信じ邁進した二人が、その先に何を見つけたのか。そのことを、二人の先輩は語ってくれる。だからもし、現状に悩む若きセンセイがこれを読んでいるのなら、ぜひ聞いてほしい。
間違いなくセンセイの10年後を、変えるはずだから。
しかしながら、本作は決して「医師を辞めろ」とは語らない。
なぜなら博士もフランケンも、医師という存在の大切さ、尊さを知っているからだ。だが一方的に毟り取られるのはあまりにも不憫に過ぎるので、後進に自らと同じ轍を踏ませぬよう、提案をしているのだ。
全てを譲り渡すのではなく、自分の取り分を確保せよ。守り抜け。
取り分とは具体的には「時間」である。グランドタイトルの「自由」とは、つまるところ「時間」を意味している。自分の随意によって使える時間。カネも名誉もあっても、唯一この「時間」がないばっかりに、センセイたちは人生に光明を見出せずにいる。
これから先の未来、人口減により医療財源が枯渇し医師が余っていく中で、年収の低下は避けられそうにない。もはや逃げ切りは不可能な局面で、どう進めば良いのか。その”処方”を、二人の先輩は示してくれる。
先ほど、医師は激怒しなければならないと述べた。自分の時間を、自由を、金を奪おうとしてくる勢力を見逃してはならない。食い物にしようとしてくる者達から、自分の資源を守り通さなくてはならない。そうして守り抜いた資源を使ってーーーやはりセンセイ達は、仁の道を歩んでいくのだ。
いかに怒れと、激怒せよと言われても。
やっぱりセンセイたちは、どこまでいっても善人で、仁慈の心を持つアンパンマンなのだ。自分勝手に、風に吹かれて歩く生き方は、努めたってできはしない。その根幹は、いかな憤怒の感情に一時とらわれても、変わることはない。
ただ、従来とはアプローチの仕方を変えるという話なのだ。
現行の、医療財源をアテにした方式ではもう無理だ。
そうではなく、真に自分が施したい医療サービスを、然るべき方法によって提供したい。
何としても達成したい。現況に歯痒い思いをしているセンセイほど、その想いは強くなる。
なぜならセンセイたちは、紛うことなき、真の士大夫なのだから。
時間を手にした憂国の士大夫たちは、再び立ち上がる。
それは賢き頭脳を生まれ持ち、その上、強く自分を律し、自らを磨き上げた者だけに課される、辛く険しい責務の道なのかもしれぬ。ゆえにセンセイたちが次のステージに進むことは、いわば必然であったとさえ言えよう。
本作は、博士とフランケンという二人のセンセイの、次世代に託す祈りの結晶。
自らの身の可愛さなど超越し、次世代のセンセイ達、さらには国家の医療体制にまで想いを致す。その姿勢にはやはりーーー”士大夫”を感じずにはいられない。
「医は仁術なり」
その本質は、センセイたちの奴隷的労働や、犠牲の上に成り立つものではない。
うまくいかない現状を真に「なんとかしよう」と思いやる真心から、始まっていくのだ。
「自由」には、フリーダムとリバティという英訳がある。
与えられる自由、受動的なフリーダムに対し、
自分で選択する能動的な自由、リバティ。
センセイが手に入れるべきは、享受する自由ではなく、自ら選び取る自由ーーーリバティなのだ。
センセイ、自由は欲しくないですか?
をはり。
著・ヤコバシ
【オーディオブックの正しい使い方を伝授する】
1.集中して聴かない。オーディオを聴くための時間をわざわざ取らない。スキマ時間や作業時間に『ながら』で聴くのが正しい使い方である。
2.ぼけーっと繰り返し聴く。聴き返すたびに毎回聴こえ方が違うぞ、とか、刺さる言葉が違うぞ、と思ったならそれは良い聴き方。一回で全部吸収してやろう、と言うのは悪い聴き方。
3.PCのnote.muサイトからMP3ファイルをダウンロードする。itunesその他で、スマホに同期する。電車や車での移動中、家事の最中に聴くのが良いと思う。ストリーミング再生で聴くのはあんまりおすすめしないかな。
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