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vol.3 タケゾウ流木造ボロ戸建てリフォーム漫談会

タケゾウ 聖丁倶楽部
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※試聴版。オリジナル版(56:57)は購入後に視聴可能。

第三話(全四話)

聖丁の発信を聴き続けているリスナーの中には、何度か、聖丁が自身のボロ戸建再生手法について言及した場面を記憶している人もいるかと思う。それはラジオだったり白熱教室だったりセミナーだったりするのだが、そこで聖丁はいつも「頑丈なリフォームをしている」と語ってきた。これは、ボロ戸建の残地物を捨てて、一通り掃除をしてすぐに貸す不動産投資家や、もはや残置物処理や掃除もせず、買ってそのまま貸すクレイジーマインドな大家さんの話などの時に、「僕は壁とか床とか、結構頑丈に直しちゃうんですけどね」と、こう、ポツリと出る言葉であったと記憶している。

今回のDIYリフォーム編では、このことがかなり具体的に語られる。「頑丈なリフォーム」とは何なのか?ようやくその一端が明らかにされる。

「頑丈なリフォーム」とは、ボロ戸建が持っている弱点を克服する、改修工事である。ボロ戸建は、安価に入手できるところが最大のメリットであるが、それは裏を返せば安くないと買い手がつかないような難点を抱えている、ということでもある。例えば、車が必須な立地なのに駐車場がないとか、長い年月によって床材が傷んできて、歩くと「ふかふか」してしまっていたり、現代人があまり使いたくない旧式の設備(ボットン便所など)しかない、といったちょっと大きめの「弱点」が顕在化している。そのため多くの競合が「これは商売にならないな」と直感して見送る物件なのだ。野球で言えば明らかに「ボール球」の物件だ。しかしそれは既に軌道に乗っている人にとって、である。これから始める初心者や、駆け出しのプレーヤーであれば、この明らかなボール球に対して、精一杯のストレッチをしてバットをフルスイングしていく姿勢が必要なのだ。

このストレッチ、そしてバットを延ばす行為が「DIYによるセルフリフォーム技術を磨くこと」である。

自分自身で対処できることを増やすことで、バットが延びて、他の人が触れないボールにバットを届かせることができるようになる。このDIY編は、タケゾウ師匠や聖丁がどうやってバットを延ばしてきたのか、そしてバットが延びるとどうなるのかを聞いて、血肉にしていこう。一般人が「無理だ」と見送るところを、見逃さなくなる。選択肢を増やすことができる。

頑丈なリフォームの話に戻ろう。大きめの弱点がある物件は、そのままでは「安く貸す」というやり方しかなくなる。「いろいろ不満はあるだろうけれど、この家賃にするから、いいでしょ?他にこんなに安い家賃の物件ないよ」というある種、最強の手段でもって入居者に迫っていくことができる。

とはいえ、この方式では家賃は2万円台になったりするから、利回りのパーセンテージはともかく、絶対的な金額が小さくなる。家賃3万円ならば年間で36万円にしかならない。もちろんこれを積み重ねていくスタイルもあるが、とはいえ管理にかかる手間や、税金関係など、物件数が増えれば触れるほど、作業は増えやすくなる。不意に訪れる建屋・設備の故障件数も、比例して増えてしまうだろう。また賃貸が低い家の場合、入居者がそれなりの人であるから、トラブルが起きる可能性も高めである。そのため、なるべくならば1軒あたりの家賃を高くして効率的に収入を増やしていきたいところであるが、ボロ物件のままでは、それも難しい。しかしながら、自己資金的にボロ物件しか買えそうにない。一見、詰んだように見える局面だが、これを打破できるのがDIYセルフリフォームなのである。

ボロ戸建が持つ「大きめの弱点」をひとつずつ解消できたなら、家賃は少しずつ上げられる。例えば、駐車場がないなら、作れないか考えてみる。小さな庭に大きな柿の木が植わっていて、それを守るようにブロック塀がぐるりと取り囲んでいたとしたら?そう、ブロック塀を叩き壊して、柿の木を切り倒して抜根すれば、駐車場スペースを創出できるかもしれない。

床が「ふかふか」している物件は、床材が古くて傷んでいるからだ。これを一度すべて引き剥がして、新たな木材に入れ替える。そして12ミリ厚の構造用合板を全面に張れば、頑丈な床の出来上がりだ。

風呂場が古いタイル張りで、目地が汚くなっていたら?床タイルを破砕して剥がして、コンクリートを流し込んで整えて、新たに専用の風呂場用シートを敷設する。古めかしい蛇口ーーお湯と水の2つのひねるところがあるものは、シングルレバー水栓に交換しスタイリッシュに。和式便器も取り壊して洋式トイレに換装する。

昔ながらの砂壁は、とにかく見た目がイケてない。これを石膏ボードで埋めてしまって、新しく壁紙クロスを貼ってしまう。漆喰で塗り込めるのもアリだ。タタミも今や好き好む人は少ないから、引き剥がして床はフロアタイルやクッションフロアに替えてしまおう。

網戸も見逃せない。古い物件は網戸をスライドするために下部についている「戸車(とぐるま)」が固まってしまっていたり、すり減っていたりして機能不全に陥っている。これはすぐに入居者からのクレームになるから、戸車を交換して、網を張り替えておく。

こうして要所要所を押さえたリフォームーーいや、「改修工事」と呼んだ方がしっくりくるーーを実施して、物件の弱点を無くし、むしろ同レベルのライバル物件との差別化にしていくのだ。これは言い方を変えれば、物件の価値を上げていく行為である。付加価値を高めていくということだ。なぜそれが必要かと言えば、ただひとえに家賃水準を上げるためである。そして後ほど発生する可能性のあるクレームの芽を、未然に摘んでおくという攻防一体の施策でもある。

というのも、地方の物件で家賃6~8万円を支払える能力のある人は、それなりに物件に対して求める水準があるからだ。そういう人は、さすがに和式便所ではな…とか、家族がいるから駐車場が1台分ではな…とか、古めかしいお風呂は嫌だな…とか、現代人としてある種、当然とも言える価値観の社会階層の人々、お客様なのである。こういったお客様の要望に応えるべく、リフォームをしていくのだが、それを業者に外注してしまっては、事業として儲からない。

聖丁の「頑丈なリフォーム」の一端を感じてもらえたかと思う。

つづく

著・ヤコバシ

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