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vol.4 タケゾウ流木造ボロ戸建てリフォーム漫談会

タケゾウ 聖丁倶楽部
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※試聴版。オリジナル版(59:43)は購入後に視聴可能。

第四話(最終話)

ボロ物件のDIYセルフリフォームを身に付けたなら、それを本業として独立自営ができるようになる。それは勤め人卒業の道を半ば達成したことになるのだが、その過程について、最後に詳しく説明しておきたい。

まずメタな話をすると、この業界もだいぶ時間が経過しており、新たなステージに入っている。10年前には、不動産業界においては傍流も傍流、少数派の手法だったボロ戸建投資、そしてDIYリフォーム。今やひとつのカテゴリーとなった。いや正確には、純然たる不動産「投資」の人々と同列に扱うべきではないのかもしれないが、とはいえ20年前から考えれば新たな勢力として、業界で認知されるまでになったことは間違いない。それに伴ってライバルは日々、増え続けている。コンビニに並んでいる大衆週刊誌で特集されたり、本屋にはお歴々の著書が並び、ネットで少し検索すれば某サイトのコラムやブログやyoutubeチャンネルがヒットする。もっと言えば、このようなオーディオブックが、著名な発信者(聖丁)から手に取りやすい価格でリリースされてもいる。この環境である。スマホの出現で、これらの発信活動の速度は変わったし、プレーヤーも明らかに増えたことは疑いようがない。

結果、従来は有効とされていた手法が今では通用しなくなったり、金融機関にも対策を取られたりしている。10年前の書籍の手法は、残念ながら今では現実的ではなくなってしまっているのだ。「かぼちゃの馬車」「スルガショック」という出来事もあった。時代は確実に前進している。

その中にあって、ライバルを出し抜き、生き残る方法が必要だ。

地域のライバル大家達と戦って、入居者を勝ち取り続けていくためには、武器がいる。そしてその武器は、なるべくならば入手がしにくいものでなくては、ライバルに対して優位を取れない。

もうお分かりかと思うが、それが今回のメインテーマであるDIYセルフリフォームの手技と知識である。一般の投資家が物件を買おうとした時、風呂が汚すぎたとする。「これは業者入れてユニットバスに直さなきゃな」と思い、業者に見積もりを出させたら何百万円もの見積もりが出てきて「採算が合わないな」と放流する物件を「DIYなら数十万円で直せる!」と判断して買えるようになったりする。これが大きい。

多大なる時間と労力を投入して身に付けた手技と知識経験によって、凡眼では捉えられない活路を、心眼で見出すことができるようになる。この修練こそが、今後の厳しいボロ戸建界隈で生き残っていくための一本槍になる。

そして物件の流通経路もまた、時の流れと共に変化してきているように思う。

以前はインターネット上にもボロ戸建(もしくは土地の古家付き)が公開されていたが、今やその件数は減っている。というのも、そういった激安で、トラブルが多いこの手の物件を、不動車業者さんも積極的に売りたいと思わなくなってきているからだ。不動産業者さんも、忙しい。同じような手間がかかるなら、数十万円のボロ物件の売買よりも、数千万円の物件の手数料をもらった方が間違いなく効率は良い。とはいえ、ボロ物件の案件は向こうから来てしまうので(相続など)、それをなんとか処理しなくてはならない。その時に、特に文句を言わず、現金でサッと買ってくれる顔見知りの顧客がいる。見事に再生して、賃貸物件化した、あの人がいたな。またサッと買ってもらえないかな、と、こうしてネットに載る前に、実績のある先輩大家に物件は流れていく。このような業界のリアルを、ネットでは「不動産流しそうめん」と揶揄するが、これはなかなか的を射ている。流しそうめんは、上流の人がスルーしなければ下流の人のところに流れてこない。初心者は、ネットという最も下流の情報からアクセスするから、そもそもそうめんが流れてこないこともあり得る。これは、この10年間で形成された新たな商流であろう。

しかし諦めるのはまだ早い。そういう商流だと理解した上で、次に取るべきはその流しそうめんの上流に陣取っている人からの紹介を得る方法である。そう、その先輩プレイヤーは今や、地元の不動産業者のハブとなっているのだ。既に宅建免許を取得して、自身も業者となっている人もいる。ボロ物件のハブとなっている人が、今や全国津々浦々に点在しているのだ。

そしてこの人たちも今や豊かになって、今更、こういったボロ物件を増やしても仕方がないというフェイズにいたりする。他の人にパスしても良いが、とはいえ業者との信頼関係に傷を入れるわけにもいかないーー

そう、つまりはこのハブになっている人に弟子入りして、その実力と熱意を認められて紹介をもらうという新たなフェーズに入ったのがこの令和の世ではないだろうか。

ボロ物件の専門家が全国にいて、その人たちが中心となってボロ物件を処理していく。不動産は地場産業だから、大手が出現する可能性も低く、群雄割拠スタイルになる。その群雄のうち一派に入門し、姿勢と技術を認められることで、紹介をもらうという、なんだか一昔前の丁稚奉公と暖簾分けのような体制に突入しつつあるのではないだろうか。

本作で登場するネイビー氏もそのひとりで、彼の場合はタケゾウ師匠から色々と紹介を受けている。それはネイビー氏が、本気で取り組んで、その根性と技術の向上をタケゾウ師匠に認められたからこその物件情報の紹介があった。

「優れたメンターを探し、師事する」という方式での物件情報パスは、再現性のある手法ではないだろうか。

ただしもちろん、誰を師匠とするかの見極めも大切だ。中には、物件を斡旋する際に手数料を抜いたり、高値で買わせて業者からキックバックをもらう等、弟子(?)たちを食い物にする者もいる業界だ。その見分け方も、本編で語られたが、時代は確実に進んでいる。

本作、DIY編では壁クロスや塗装、床板の入れ替えなど内装に関するリフォーム技術から始まり、続いて外構部の改修による駐車場の創造、風呂場やトイレ、キッチン、洗面台といった水回りのリニューアル、最後にふすま、網戸、障子といった内装仕上げまで、かなり具体的に語られる。具体的、とは使用する道具や、そのメーカー、道具選びの注意点や実際に使った感想など、役に立つ生の情報ばかりだ。こうして、薄く広く、スキルパネルを開いていって多能工の職人になることにより、バットを延ばしていく。

そうして他者では手が出ないボール球物件に、フルスイングしていくのだ。

をはり

著・ヤコバシ

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