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vol.5 再現性の塊、ラーメン屋ビジネスでお金と時間の自由を手に入れる『ラーメン屋開業入門』

支那そば軍曹 サウザーの白熱教室
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※試聴版。オリジナル版(43:22)は購入後に視聴可能。

第五話(最終話)

「時間とお金の自由を目指すなら、ラーメン屋が最短ルート」この新説から、本作は生まれた。

勤め人卒業は、乾坤一擲の博打ではない。まずは副業をして給与以外の収入を得る「勤め人+α」となり、自分の商品を作ってビジネスモデルを組み、育てながらステップアップしていく。この手法が、定石とされていた。ただ、この方法だとどうしても「勤め人」の状態が長く続くことは避けられない。しかし安全性を考慮すると致し方ないというのが定説であった。

これに対して軍曹殿は「これでは時間がかかりすぎる」と考えた。そこで編み出されたのが「まず勤め人をやめて、自営業者にクラスチェンジ。事業家となって資本蓄積し、時間とお金の自由を目指す」という方式である。

資本主義経済は、商品の交換で成り立っている。マーケットに対し、特に売り物がない人は「労働力」を売るほかない。こうして勤め人が生まれる。ラーメン屋になるということは「俺のラーメン」という商品を、マーケットに売り出す人になるということだ。

労働力ではなく、ラーメンという商品を売る。

勤め人と大きく異なる点は、技術介入ができる余地が大きい、という点だ。勤め人は、実質的に時給で雇われる。この時給は「労働力再生産のための経費」でり、ご主人様に決められた額である。いくら効率化しても成果を上げても、大きく増えることはない。代わりに大きく減ることも少ない、というのが特徴だ。

対してラーメン屋の経営は、積極的な介入によって、成果が増えていく。その代わり、失敗のリスクも背負うという生き方になる。本作では、その失敗の正体と要素を細かく解説していただき、回避する術も授けていただいた。

ここまでで「ラーメン屋」という事業の形態は、凡そご理解いただけたと思う。「職業:ラーメン屋」の輪郭が、本作を聴く前よりもはっきりしてきたはずだ。しかし同じラーメン屋でも、支那そば軍曹殿と、チキンジョージ先生のスタイルが違うことに気がつく。

チキンジョージ先生はソロでできる生涯の職業として「ラーメン屋」を選んだ。一人でできる規模のお店にして、従業員は雇わない。人間関係に悩むことない気楽さ、美味しいラーメンを作るという仕事自体を楽しみ、常連さんが喜んでくれる、そして生計が立てられること。これらを目指したチキンジョージ先生は、その理想を叶えた。勤め人たちは日々、社内の人間関係に悩み、成果を詰められ、消耗している。チキンジョージ先生のような働き方を羨ましく感じる人も多いのではないだろうか。

一方で支那そば軍曹殿は「時間とお金の自由」を達成したかった。そのためには、自分がお店で作業する時間を減らすことが必須であった。つまり、人を雇用してお店の自動化に取り組む必要があった。スタッフを雇い、教育して、時にはプライベートの面倒も見る。社長として、親や兄貴のように面倒を見ながら、後続を指導するマネージャーを育てる。そうして自分の手が離れてもお店が問題なく稼働する状態を作れたら、2店舗目を作っていく。さらに組織を拡大し、会社としての規模と強度を上げていくことで軍曹殿は「時間とお金の自由」を手に入れた。

ソロプレイを究めて一人で気楽に仕事がしたいのか、はたまた大勢の人を率いて辛苦を共にしながらも時間とお金の自由に挑むのか。お二方のスタイルには明確な正解はない。ただ自分はどちらのスタイルの方が性に合うだろうか?と考えて参考にしてほしい。

最後に、長続きするビジネスについて考える。私たちが思わずリピートして買ってしまう商品や、常連になってしまうお店のメカニズムとは、何なのだろうか。もちろん自分の好みに合致しているというのもある。しかしながら「確かに美味しいけど、もういいかな」というお店もあるはずだ。この違いは何なのだろうか?

これはただひとえに、お客さんが「得をしているか」どうかである。支払ったお金に対して、受けた効用の方が大きかったとき、私たちは得をしたと感じる。喜びの感情が脳に刻み込まれる。それは大きければ大きいほどよい。その「快」の記憶が私たちの足を、無意識のうちに、そして繰り返しその店に向かわせるからだ。

このことはラーメン屋だけでなく、パン屋でも、焼肉屋でも、美容室でもサウナでも同じだ。お金と商品の交換効率、つまりコストパフォーマンスが高く顧客側が「こりゃあ値段以上だな、得した!」と真に感じる場合のみ、私たちは常連になる。いや、「なってしまう」のだ。

ラーメン屋のことに話を戻すと、いかに立地が良くても、駐車場があっても、世界観が面白かったとしてもーーー肝心カナメの「ラーメン」の質が高くなければ常連は生まれない。安定的な経営はできないのだ。

「ラーメン」という商品を通じて、お客さんに得をしてもらうこと。それがラーメン屋に求められる第一義である。本作ではラーメン以外にも様々なノウハウ・テクニックが披露されたが、それらはこの「うまいラーメン」という中心軸があって、初めて成り立つ。

ただ真っ直ぐに、愚直に「俺のラーメン」という商品の価値を高める。お店の魅力を磨いていく。広告や物珍しさだけで勝負するのではなく、実力で勝負する。まさに飾り気がなく、たくましい姿勢ーーー質実剛健という言葉がふさわしいのが、ラーメン屋という生き方なのだ。

資本主義攻略の奥義である「自分の商品を作る」。その最もわかりやすい形のひとつがラーメン屋だと、本作では結論づけた。

ただし万人が独立開業すれば良いわけでもないと、軍曹殿は最後に釘を刺す。独立が向いているかどうか、苦にならないかは、つまるところ気質の問題だ。ヒトに指示されることがイヤだと感じる者は、独立自営が幸せだ。しかし逆に、ヒトからの指示があった方が安心する者は、無理に独立せず勤め人をする方が安息な生涯となろう。

多くを望まずに勤め人さえしていれば死なない現代日本。安価な食料と娯楽に満ちた、飽食の時代。この潮流に、わざわざ逆らって泳ごうとするのはなぜなのか?その「なぜ」をなんとなく感じてはいても、なお、覚悟が伴わないかもしれない。

だから今一度、自分自身の心に向けて問いかけてほしい。軍曹殿も問いかけてくる。

「自分はヒトに言われたことをやっていく方がラクなのか?

ヒトに言われたことをやるのが死んでもイヤなのか?」

そして自らの意思によって自営の道を選び歩むなら。流されるわけではなく、自分で選んだ道ならば。その自覚こそが自分に鋼の意志を与えてくれるだろう。以後の厳しい日々を内側から支えてくれるのは「これは自ら選んだ生き方なのだ」という気高き自負の念。

自分の生き方を自分で選び取ったのだという覚悟が、自律と克己の礎となる。

をはり。

著・ヤコバシ

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