シーズン7 #2(#94)『死者との約束』

  • 原題:mr. MONK and The Genius

  • 放送日:

  • 2008年7月25日

  • 2009年4月13日

  • スタッフ:

  • 脚本 ジョー・トプリン

  • 監督 マイケル・W・ワトキンス

ゲストスター:
デヴィッド・ストラザーン(パトリック・クロスター役)
エヴァン・ピーターズ(エリック・タヴェラ役)
ローレンス・オドネル(ローレンス・バー判事)
エレナ・エヴァンジェロ(リンダ・クロスター役)

<ストーリー>
 IQ180といわれるチェスの世界チャンピオン、パトリック・クロスターの妻リンダがモンクの元を訪れる。その依頼は「夫に完全犯罪で殺すと宣言されている。防ぐのは無理なので殺害されたら必ず捕まえてほしい」という驚くべきものだった。
 やがてリンダが自宅で死亡。不審な点はなく、警察は死因を心臓発作と結論する。モンクは毒殺を疑い検査を行おうとするが、遺体はすでに火葬されてしまっていた。“相手の動きを読み先手を打つ天才”に、かつてない劣勢を強いられるモンク。リンダの告発に応え、クロスターを追いつめることはできるのだろうか――。

<解説>
 モンク vs 超天才犯人という王道テーマについに挑んだ一作。圧倒的な存在であることを強調すべく犯行をまったく描かない冒頭や、“相手の動きを読んで先手を打つ”チェス・モチーフに重きを置いたプロット等により――完全犯罪のトリックも登場するものの――、『刑事コロンボ』的な対決感より、ホームズ対モリアーティ風な古典的ムードが感じられるのがユニークである。追いつめられたモンクが切羽詰まって犯人の自宅に不法侵入する件りも、ホームズ物の一篇「犯人は二人」を想起させ、これはやはり意図的な描き方なのだろう。さらに、常軌を逸したモンクのその行為に、被害者の存在を愛妻トゥルーディとの最期の瞬間に重ねて“死者との約束”に説得力を持たせる重くシリアスなデリケートさ、そして犯人を何とか“チェックメイト”に持ち込む〈詰め手〉のいつにない泥臭さも本作ならではのもので、これはかなりの異色作ともいえるだろう。そしてラスト、ナタリーのトリックが炸裂する現実的で明るいエピローグが、絶妙なバランス役となっていて見事である。

<MEMO>
*パトリック・クロスター役のデヴィッド・ストラザーンは、本作の3年前、ジョージ・クルーニー監督の『グッドナイト&グッドラック』(05  傑作!)でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた名優。『ボーン・アルティメイタム』(07)のCIA高官ノア・ヴォーゼン役も印象的である。

*1954~55年にアメリカで放映されたシャーロック・ホームズ物TVシリーズの一篇「The Case of the Perfect Husband」は、〝美術品コレクターの夫に「自分は過去に6人の妻を殺害しており、結婚記念日の9時に君も殺す」と宣言された女性の命をホームズが守る〟プロットだったとのことで、脚本チームはそれをベースに本作のアイデアを発展させたのかもしれない(もしそうであれば、犯人の名〝パトリック〟は同作の夫の姓〝パートリッジ〟を意識したものだろうか)。

*犯人が飛行場で引用する一節は、シェークスピアの戯曲《ロミオとジュリエット》第5幕第3場、ロミオが薬で眠るジュリエットの姿を見てその死を嘆く場面での台詞である。

*家政婦役のスーザン・シャルーブ・ラーキンは、トニー・シャルーブの実妹とのこと。

*(以下、準備中)


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