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Father 第1話 過去は突然やってくる

突然、過去と再会したことがありますか?
忘れ去っていた遠い昔の思い出に。
いや、それは心の奥底に仕舞い込んだ苦い記憶かもしれません。
そんな古傷と対峙したとき、私たちは何を感じるのでしょうか?

この話はある日、僕に起こった出来事です。なかなか気持ちの整理がつかず、また誰かに話す勇気がなくてずっと心の抽斗の中にしまっていました。でも先日、ある人たちから勇気をもらい、僕の話をとてもきいてもらたい気持ちなりました。ぜひ、読んでください。

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爽やかに晴れた11月下旬の早朝。僕は御堂筋沿いのスターバックスでコーヒーを飲んでいた。その日は休日で交通量や人の流れが少なく街も道路も店も空いていた。朝の空気は澄んでいて、排気ガスまみれの街も少しは綺麗に見える。イチョウの葉が黄色くなって、青空とのコントラストが美しく映える。大阪の秋だ。そんな風景が見たくて僕はここへ来た。仕事が繁忙期でタスクやトラブルが多く、身も心も文字通り疲れ切っていた僕は少し仕事を忘れる時間を必要としていた。

僕は店の入り口近く、外がよく見える窓際の席に座り、熱くて美味しいコーヒーを飲みながらヘミングウェイの短編集『勝者には何もやるな』を読んでいた。長い文書を読むのが億劫な時に、簡潔で切り詰めたな文体のヘミングウェイは重宝する。すると・・・

Excuse me?

急に話しかけられたのと、それが英語だったので二重に驚いて顔を上げると、1人の女性がそこにいた。彼女は黒いスーツに身を包み、黒いプラダのショルダーバッグを持ち、黒いピンヒールを履いていた。真っ黒なストレートヘアーと褐色の肌に白いマスクだけが異様に目立っていた。彼女のギョロッとした大きな2つの目が僕を見つめていた。

「ひょっとして、コウイチ?」
「???」
「私よ、憶えてる?」
「ひょっとして・・・?」
「Oh my gosy!こんな偶然ってあるのね!!」

僕は唖然として、こんな偶然にただただびっくりしていた。

〈第2話に続く〉

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