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「本当の自分」なんて


 「──私たちの生活には、一なる「個人」として扱われる局面が依然として存在している。そして、自我だとか、「本当の自分」といった固定観念も染みついている。そこで、日常生きている複数の人格とは別に、どこかに中心となる「自我」が存在しているかのように考える。あるいは、結局、それらの複数の人格は表面的な「キャラ」や「仮面」に過ぎず、「本当の自分」は、その奥に存在しているのだと理解しようとする。
 この矛盾のために、私たちは思い悩み、苦しんできた。」

平野啓一郎『私とは何か 「個人」から「分人」へ』,講談社,p67

「だから、どこかに“本当の自分”あるとか、いやいや、いろいろ変態しているけど、裏には“本当の顔”があるはずだっていうんじゃなくて、その都度「仮の自分の姿」っていうのにハマってる。で、また、別の「仮の姿」にハマり直すっていうこと。そういう(人格やキャラクターの)スイッチングみたいなことを、毎日カチャカチャカチャカチャやっているんじゃないのかって思うんですね。」

監修⚫︎千葉雅也 NHK『哲子の部屋』制作班『哲子の部屋Ⅲ “本当の自分“って何?』,河出書房新社,p49

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