よるのあと
元々「あなたが嘘をつかなくても生きていけますように」という歌詞をずっと持っていて私自身が歌うには美しすぎる言葉だなぁ。と大切にしまっておいた言葉です。
最初は祖母に対して思って事がはじまりで痴呆を患いはじめた頃にきっと今迄通りに頭を使えなくなってしまった祖母は小さい嘘をつくようになって。
あぁ、きっとおばあちゃんも辛いよなぁ。って今迄わかってた事がわからなくなって大切な人の事も今まで生きてきた軌道の中にあった思い出も特別な名前も思い出せなくなる最中は怖いよなぁ。と思った時にあなたが嘘をつかなくてもいい世界線があればいいのに。
と。
何年も経った後で私はすごく好きな人が出来てこれ程人を好きになる事があるのか。と驚きながらも流れていく時間の中であぁもう一緒にいられないんだなぁ。と思いました。
悲しいだとか、辛いだとか、怒りだとかそんな事よりも「この人が嘘をつかなくてもいい世界があるなら私といなくたってその世界の方がずっと美しいよな」とこの言葉を思い出しました。
本当に心から大切な人を思う時に浮かぶ言葉なんだろうなぁ。と思った事を覚えています。
「あなたが嘘をつかなくても生きていけますように。」
その嘘ですらも頼りだったんだなと。
嘘の中から少しの本当を探り当てたくてしかたなかったんだろうなわたしは。と。
平温で抱きしめられる寂しさだけじゃ生きていけないけど、我々には愛を込めてさようならと言える勇ましさがある。
それが人間の美しいところだと思います。
adieuに歌っていただく事でこの思いがずっと美しく豊満なうたとして出来上がった事を心から嬉しく思いました。
adieuの歌声や息遣いは煌めきに満ちています。ギラギラしているんではなくて、空気に寄り添う勇ましさです。
私には全くないものを持っています。
時間を止める歌声と評されていましたが、時間を美しくする力もあるんじゃないかな。と勝手に思っております。
adieuのファンの皆さんに沢山聴いていただけて、これからもきっとよるのあとは生きて変幻していくんだろうな。と思うと嬉しい気持ちでいっぱいです。
音楽を作ることはやはりわたしは大好きです。自分が歌わずとも歌って叶えてくれる人がいる事、はじめての経験を与えていただきありがとうございました。