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【美少女ゲームレビュー】それは舞い散る桜のように

今回紹介する作品は2002年にBasiLから発売された「それは舞い散る桜のように」です。
今作は正直手放しに褒めることの出来ない非常に難しい作品なのですが、素晴らしい作品に違いはありません。最後まで読んでいただければ幸いです。

~あらすじ~

『幼いころ、親の都合で住み慣れた街から遠く離れた北の国へ移り住んだ主人公。しかし数年後、彼は進学に際して生まれ故郷にある学園を選んだ。
ただ、なんとなく。その理由を聞かれたとき、彼はそう答えた。
満開の染井吉野が起伏に富んだ街並をいろどる街、桜坂。
幼いころの記憶はほとんど残っておらず、あらゆるものが真新しい景観。その中でただひとつ、懐かしさを覚える場所があった。
二本の桜が寄りそうように並んだ小高い丘。
しかし、そのひどく漠然とした懐かしさの中に混じる不安、焦燥、畏怖……。
彼はその場になにか因縁めいたものを感じながらも、記憶の扉を開けることができなかった。
だた、なんとなく。
そうではなかった。主人公にはこの街に帰ってきた確固たる理由があった。それが無意識のうちに彼を桜坂に呼びもどしたのだ。
その事実から目を背けるように、平凡な日常を過ごす主人公。はたして彼は、自身の奥深くに埋められたその記憶を取り戻すことができるのか』

ゲームはその一年後、主人公が桜坂学園の二学年に進級したところから始まります。
学園一の美少女と名高い星崎希望、主人公を追ってきた雪村小町、気のあう女友達の八重樫つばさ、読書好きの先輩・里見こだま、妹のような隣人・森青葉。
これら主人公をとりまく五人のヒロインと友好を深め、やがて恋に落ちてゆく過程で、彼は自らの過去を知る鍵を握ってゆくことになります。
そしてその事実が二人に忍びよるとき、彼は育んできた愛を貫くことができるのか。
この物語は、主人公の精神的な成長を通して「恋愛」という人間関係がもたらす暖かさ、そしてその先に潜む冷たさとを問うラブストーリーです。

それは舞い散る桜のように Re:BIRTH公式HPより引用

~良かった点~


①ヒロインが魅力的
ヒロイン陣はかなり選り取り見取りです。萌えキャラクター的な魅力も当然あるんですが、人間らしさを感じるような場面で妙なリアリティがあるんですよね。ただ可愛いだけじゃなく「こういうとこ良くないな」「こういうところは人として尊敬できるな」とか考えながらヒロイン達と関わるうちに本当に彼女に恋することができ、愛することができます。私は八重樫つばさが最も好きですが、正直全ルート個別記事書けるくらい大好きになりました。みんな好きです。八重樫つばさが大好き過ぎたのです……。

②サブキャラが魅力的
本作は攻略対象外のサブキャラが男女問わず結構な人数登場しますが、全員好きになれます。みんな個性的で、みんな良い人です。基本上記の方々はアホアホ会話繰り広げてるだけなのですが、その分シリアスなシーンでのギャップがたまりません。あとあまり大きな声では言えませんが、男性キャラの声優陣がめちゃくちゃ豪華です。どのように豪華かどうかはぜひゲームをプレイして聞いてみましょう!

③主人公が魅力的
今までプレイした美少女ゲーの主人公の中でコイツが一番変です。主人公が一番ボケ倒してるエロゲって意味がわかりません。
学校のプールサイドでトロピカルジュース飲んじゃったりして担任から目をつけられています(そりゃそう)。
しかしそんな普段からボケまくりも孤独の裏返しと思えるほど人との間に壁を作りがちな人物でもあります。実際の性格は普段の尊大な態度とは裏腹に臆病なのもかなり好感が持てて共感しやすかったです。
また、随所からヘタレ童貞みを感じられます。童貞(キャラクター属性としての童貞)好きの私にはとても有難かった。いやぁ有難い。

④テキストが秀逸
ギャグはキレッキレ。シリアスパートはストレートに心を揺さぶられます。日常パートとシリアスパートの高低差かなり激しいです。
どのルートも終盤に差し掛かるとヒロイン達が自分の恋心について語ってくれることも多々あるんですが、どれもその子だから出る言葉ばかりで綺麗で愛おしいものばかりです。特にOPムービーのキャラ紹介でも使われてるセリフなんかは単体で見てもポエム的な良さがあります。
 
星崎希望「このぎゅーってされたい気持ちが恋ってこと?」
雪村小町「やっぱり恋なんてするもんじゃないですね、どうしてくれるんですか」
森青葉「お兄ちゃんを待ってるこの灯りが、きっと恋のしるしなんだね」
里見こだま「恋をするとね、何気ない一言が宝石みたいに輝くんだよ」
八重樫つばさ「最初はみんなそう言うよ、それが恋ってやつの怖さだけど」

良すぎる‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️
いいんですかこんなに良くて。1つでもピンとくるセリフがあったらやりましょう!それ散る!

~気になった点~

未完成を疑うほど伏線が投げっぱなしの部分があります。途中読み損ねたかな?と思うほど間がバスンと抜けているような印象を受けます。あえてこうした可能性も大いにあるのですが、それにしてもかなり説明不足で不親切ではあります。最初にエンディング到達した時は正直カタルシスよりも「えぇ?」みたいな気持ちの方が強かったです。こちらのメーカー、開発スタッフと偉い人の間でゴタゴタがあったそうで、本当にやむを得ない事情で未完成のまま発売されたのでは?と疑うユーザーが大半でしたがスタッフインタビューでの証言からして普通に作ったらこうなった説が濃厚です。でも途中までが面白すぎて許せてしまう、そんな魅力を持った作品です。

~完全版とRe:BIRTH(リメイク版)について~

今作発売後に「それは舞い散る桜のように 完全版」「それは舞い散る桜のように Re:BIRTH」発売されています。

まず完全版の方から解説していきます。
オリジナル版を発売したのに主な制作スタッフ(シナリオライター、原画家等)がごっそりBasiLを退所します。後にそのメンバーはNavelというブランドを立ち上げ「SHUFFLE」「俺たちに翼はない」等のアニメ化コンシューマ化するほどのヒット作を続々と排出する人気ブランドとなりました。 
そんなそれ散るスタッフのごっそり抜けたBasiLから発売された作品がそれ散る完全版なのです。当然当時のスタッフは一切関わっておらず、主な変更点としてはサブヒロインのヒロイン昇格(新規シナリオ)、主人公含めたフルボイス化&キャスト変更、立ち絵の新規追加、説明不足だった箇所の加筆修正。何度も言いますが当時のスタッフは一切関わっていません。西又葵女史の絵とは似ても似つかない原画、違う声で喋るキャラクター、より矛盾したシナリオ。と散々な出来でファンの間では「不完全版」と揶揄される結果となりました。
厄介なのが、現在DLsiteやFANZAで配信されているそれ散るは”完全版のみ”となっています。つまりオリジナルのそれ散るをプレイするには中古で購入するしかないのです……。

続いてリメイク版について解説します。

そんなこんなでBasiLは解散。とはいえBasiLから発売された完全版のDL販売は続いていることや、Navel側からの音沙汰がないことからリメイクや再販売は絶望的と思われていました……。

しかし!!!!


2022年4月16日、オリジナルスタッフが所属するNavelが、ブランド設立20周年を記念する形でリメイク作『それは舞い散る桜のように-Re:BIRTH-』を制作、2022年内に発売することが発表されました。

なんとNavelは様々な奇跡が重なり20年越しに「それは舞い散る桜のように」の権利を獲得することに成功したのです!

スゴすぎる!!!!!
さらにさらにBasiL時代企画されていたものの、それ散るスタッフ退所に伴い闇の中に消えた続編「けれど輝く夜空のような」の制作&クラウドファンディングも発表されました。
けれ夜クラウドファンディングは大成功し、目標金額1000万のところ、3890万を達成しました。あまりの反響にクラウドファンディングの二次募集というもはや訳の分からないものを開始し、それも難なく達成!もちろん私も支援しました。

という訳ですので、


原点からプレイしたい!というこだわりがなければ、普通に2023年9月にNavelから発売されたリメイク版をプレイするのが無難かと思われます。秋葉原ソフマップの新作コーナーに行けばまだパッケージ版が残っています。FANZA様にてDL販売も行っております。さらに今作はブラウザに対応しているので、PCを持っていない大きなお友達でも遊ぶことが出来ます。やったね!

~最後に~

「それは舞い散る桜のように」は質の高いギャグ、奇人変人が登場するドタバタコメディなキャラゲーをお探しの方にオススメです。
シリアスパートはかなりプレイヤー側が想像で補わなければならない部分が大きいので、難解な考察を好きな方はもしかしたら楽しめるかもしれません。
基本はライターの王雀孫氏のキレキレギャグを浴びて浴びて浴びまくるのが良い楽しみ方ではないでしょうか。

最後までご覧いただきありがとうございました。最後の最後に、この作品のキャッチコピーで締めたいと思います。


また会おう、桜舞うこの丘で──


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