残されるもの
ある日この世界から
突然いなくなってしまった彼女
不思議なくらいに
冷静で
あの時も
今も
涙が出ないの
携帯には
あなたの存在が確かに残っている
今年もカレンダーはあなたの
誕生日を教えてくれるし
何気ないやり取りは文字として残されている
本当にもうこの世界にはいないのだろうか
もういないのだ
それなのにどうして
涙が出ないのだろう
いつもみたいにフラッとやってきて
メガネを少し持ち上げ
淡々と話す彼女の残像が
私の脳で
今も生きていると錯覚させる
泣けなくてもいいや
もし真実を真正面から捉えてしまったら
そのことに気づいてしまったら
当分立ち直れないから
今は知らないふりをして
心の準備ができるまで
気づかないふりをしてしまおう
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