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「少子化の是非」2024年度 4/25CA

みなさんこんにちは。今回のCAでは「少子化の是非」について議論しました。以下では議論の概要と流れを紹介します。

議論の概説

さまざまな議論において問題とされる少子化。一方で、先週のCA「子供・子育て支援金の是非」について触れた記事では、少子化に対して必ずしも否定的ではない意見が散見された。果たして少子化は「悪」なのか?今回は高齢化問題も絡めつつ議論を行う。

議論の流れ・論点

議論では以下のような点がよく議論された。

・少子化政策を中止することで得られるメリット
・現役世代に対する影響や現実性
・テクノロジーがもたらす恩恵

以下では立論者が提示した論点とそれに関する議論を列挙する。

1.成長社会から成熟社会へ
→広井(2020)によると少子化は成熟社会における世界的なトレンドである。加えて、日本の高度経済成長期を基準にした際少子化や人口減少が進んでいるといえるが、それ以前は横ばいの成長を続けていたことを指摘している。また、他の先進国と比較した場合もイギリス・フランス・イタリアはいずれも人口6,000万人程度で日本が1億人もの人口を保有しなければいけない理由は見当たらない。
また、アディールターナーによると出生率の低下は女性の地位向上や教育の向上が要因の一つとされ出生率の低下は子供一人当たりの養育費の向上につながり質の高い教育を受けることにつながる。
Q成熟社会のメリットとは?GDPには消費が前提にある。消費の担い手がいなくなれば、経済が伸び悩む
A一人当たりのGDPは相対的に見たら増加するのでは?

2.技術開発の促進・セカンドライフ期間の増加
→少子化が進んだ場合、労働力不足改善のため技術革新が進む可能性がある。AIやロボット技術に加え、医療面での技術革新が進めば高齢者や障害者の社会参加の促進にもつながる。それに伴う平均寿命の向上は健康的で活動的な人生をより長く楽しめることを意味している。そのため退職年齢引き上げ等の現役世代を長期化させ人生をより充実したものにするための政策が取られるべきである。
Q技術革新に必要な人材が少なくなるのではないか。技術革新を担うのは若者である。
A質の高い教育が受けられるようになるのでは?
Q団塊世代が高齢になって第二次ベビーブームが高齢になる、このような人々はセカンドを充実させるというよりは制度を利用する立場である。世代が入れ替わらないと難しい
A環境負荷は長期的に見れば軽減する
Q団塊世代が高齢になって第二次ベビーブームが高齢になる、このような人々はセカンドを充実させるというよりは制度を利用する立場である。世代が入れ替わらないと難しい

3.環境負荷の軽減
→人口が減少することにより消費エネルギーや資源の使用量が減少することで環境負荷が軽減されると考えられる。また、大都市部等において住宅・土地問題や交通交雑等過密に伴う諸問題の改善などゆとりある生活環境の形成が実現される。
Q上の世代はまだまだ生きる。軽減しないのでは?また、技術革新にともなって電力が増加するのでは?
A長期的に見れば削減すると考えることもできる

国力の減少
生産年齢人口の減少と、短時間勤務を希望することの多い高齢者の割合の増加により、労働力供給の減少をもたらすおそれがあることに加え、高齢化の進展により、年金等社会保障の分野において、現役世代の負担が増大する可能性がある。労働力が減少した場合、国内の経済活動が鈍化し、GDPの減少かつ国力の低下につながり国際関係にマイナスの影響が出ることが考えられる。
→水野(2016)によると少子化による経済成長への影響は短期的にはほとんどないことが明らかになっている。また、長期的には影響が出てくるものの、技術開発により労働力不足の確保は可能である。加えて、労働力不足は少子化対策ではなく、高齢化対策としての退職年齢引き上げによって改善が可能である。また、アメリカやイギリスなどの諸外国では定年制を禁止している国も多く、定年制を撤廃及び改善することにより経済活動の低下は避けられると考えられる。今後技術開発が発展する中で、セカンドライフの活用を促進させ現役世代の獲得を図るべきである。

Q技術開発を前提にした立論であるが、例出されていたフランスやイギリスは少子化状況にないため、比較対象として適切でないのでは。日本の少子化の特異性を鑑みるべきである。
A少子化への対策費を技術革新のために投資できるため、有効である。さらに、技術開発への投資は少子化政策と異なり即効性がある。

Q社会保障制度は維持できるのか。現在の年金制度等は若者の納税を前提としている。
A退職年齢の引き上げで対処できるのではないか。労働に対して前向きな人は6割以上がいる、賄えるのでは。

Q年金に頼りつつ生活する人が多い。働ける≠生活できる
A3.6兆円を再投資する。

2.過疎化の加速
過疎化がさらに進行し、現行の地方行政の体制のままでは、市町村によっては住民に対する基礎的なサービスの提供が困難になると懸念される。
→1960年代から"集団就職"という形で東京一極集中及び地方の過疎化が進んでともにきた状態であるが、コロナ禍を経た現代社会では地方移転を望む若者も増加傾向にある。実際、2020年のデータによると地方移住は5年で約4倍に増えており若者の価値観の変化が見て取れる。これを活用し政策に落とし込むことで過疎化の改善は可能であると考えられる。
Q長い目で見た時、子供の数が減ると、地域の担い手がいなくなり過疎化が進むのではないか。
A住み続ける意味はなくなるのではないか?合併を繰り返して過疎地域は切り捨てるという選択肢もある。

Q(データの整合性)このデータはあくまで「移住したい」人である。実状では東京の一極集中は改善されていない。
A移住したい需要があるという点で政策の余地はある。過疎化は最重要課題ではないので、過密が解消されるのであれば問題はない。

Q少子化対策は功利のみでは測れない。個人の自由を保障するための少子化対策と考えることもできる。
A特になし

上久保教授からのコメント


国家観に関わる議論である。何をもって国家の繁栄とするか。人口が多いことが成長であり、人口がいないと成長できないという原則が、技術の革新によって変わってしまった。人口の多さという 開発途上国のアドバンテージがディスアドバンテージになりえる。国家の成長のために人が必要ないということになった時に、問題は顕在化する。一方で、新しい世代が生まれないというものは問題として考えることができる。

ミクロな視点であると、対策込みで、人権保障の観点がある。また、民主主義の発展も背景にあるのではないか。少子化を悪く言う議論が多い中で、少子化の是非について議論したことに意義があったと言える。




 


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