ヒミコ・ホタルナ・エメラルダス!
水上バスはお好きですか?
今日はお気に入りの隅田川クルーズのはなし
私は昔から水辺に強い憧れがあり、川や海や湖に行くと船に乗りたくなる。近場でいうと横浜のシーバスや隅田川の水上バスが好きだ。
隅田川の水上バスは、大昔に両親が東京に遊びに来た時に母親のリクエストで初めて乗ってから何度か乗っているお気に入りだ。
母親が「ヒミコ」に乗りたいと言って、浜松町の日の出桟橋から乗ったのが初めての隅田川クルーズだったと思う。
「ヒミコ」は『銀河鉄道999』の松本零士氏がデザインした近未来を思わせる船体で、めちゃくちゃかっこよかった。船内放送も『銀河鉄道999』のキャラクターが担当していて面白い。
私は『銀河鉄道999』を観たことがない。でもキャラクターは知っている。メーテルでしょ?鉄郎でしょ?鉄郎は孫悟空なんでしょう?その程度だ。
ただ、作品を知らなくても、かっこいい船体に観光地の水上バスのイメージを覆されてすぐにお気に入りになった。
船内放送で船が下を通る橋や、船から見える景色や地域の話を説明してくれるのが良い。それに、電車や地下鉄なら10分程度の距離を1時間弱かけてゆっくり移動するのもお気に入りのポイントだ。
何年かして「ヒミコ」の後継となる「ホタルナ」が就航する。こちらも松本零士氏のデザインで、見た目は「ヒミコ」によく似ているが、船内が更におしゃれになった。船内放送は引き続き『銀河鉄道999』のキャラクターが担当している。「ホタルナ」にも母親と一緒に乗った。その後も何度か乗っているのでこのシリーズでは「ホタルナ」に一番乗っている。
2018年に第3弾となる「エメラルダス」が就航する。
「エメラルダス」が就航していたことはしばらく知らなかった。
コロナ期間中、どこにも行けない閉塞感から開放されたくて、都内のホテルに泊まってホテルの部屋を満喫するステイケーションが新しい趣味になった。海外からの観光客も日本国内でさえ移動に制限があった時期だから、ホテルの価格が今思えはどこも破格だった。今ではあの値段では泊まれないところばかりで、あの時期にもっと色々行っておけばよかったと思う。
そのステイケーションで隅田川沿いのホテルに泊まる際、周辺の情報を集めていて「エメラルダス」が就航していることを知った。
特設サイトを見てみると、外観は「ヒミコ」「ホタルナ」の姉妹船らしく大きな変化はなかったが、船内がちょっと大人な雰囲気になっていた。
座席数が少し抑えられているようで、オプションで予約できる区切られたコンパートメントもある。
「ヒミコ」「ホタルナ」と乗ってきたのだから、「エメラルダス」にも乗らなければならない。
コロナ期間中は水上バスの運行も厳しかったようだ。観光船である水上バスに乗る観光客がいないのだからどうしようもない。ホテル滞在中にタイミングがあれば乗りたいと思っていたが、私が調べた時には「エメラルダス」は限られた日しか運行しておらず、結局乗ることは出来なかった。
滞在中、部屋の窓から隅田川をぼーっと眺めていたら、ちょうど「エメラルダス」が浅草方面に向かって進んでいくのが見えた。いつか必ず乗るから待ってろエメラルダス!と思いながら見えなくなるまで船を見送った。
先日、有給休暇を取った。10月に体調を崩した時に数日休んだが、元気な状態で平日に休んでいないと思い、最近疲れていたので休むことにした。
予定は特になかったが朝起きたらとても天気が良かった。やりたかったけどやっていなかったことを考えて、「エメラルダス」に乗るのは今日だ!と思い立った。
久しぶりの浅草は外国人観光客で大変混み合っていた。亀十の店先にも長い行列ができていて、どら焼きは諦めた。
「エメラルダス」の予約は夕方だった。浅草で何か食べてぶらぶら散歩をしながら時間を潰すつもりで来たのだが、結局色々あって上野の本屋で甥っ子のクリスマスプレゼントを買った。
それから、地下鉄に乗って浅草に戻ったら乗船時間までちょうどよい時間になった。亀十のどら焼きに未練があり、もう一度店の前まで行ってみたが、相変わらず行列だったので代わりにすぐ側にある「ふなわかふぇ」で芋ようかんを買った。舟和の芋ようかんも好きだからこれはこれでよい。
「エメラルダス」は最大乗客人数が100名ほどなのだが、夕方の時間帯だからか、行き先がお台場海浜公園だからか、その日の乗客は30人もいなかった。見渡した感じ、日本人は私以外に夫婦1組だけで、ほとんどが外国人観光客だった。
「ホタルナ」よりも「エメラルダス」は座席の数が抑えられているからか、乗客人数は少ないはずなのに、みんな窓際に集まるので私も周りを囲まれた状態で一人座っていた。
浅草を出発してすぐ、船内放送が始まった。「エメラルダス」もやはり『銀河鉄道999』のキャラクターが担当している。今回はメーテルと鉄郎、それからエメラルダスが登場した。エメラルダスがキャラクターの名前だったということをそこで初めて知った。
いつも、日の出桟橋と浅草間の水上バスに乗っていたので、お台場海浜公園行きは初めてだった。まだ明るさの残る夕方から夜になる東京の景色を船から眺めるのはやっぱりすごく贅沢な時間だと感じた。
「エメラルダス」にも屋上デッキがあり、外に出ることが出来るのだが、船が出発してすぐの船長のアナウンスで、一番低い永代橋を通った後で屋上デッキが開放されると説明があった。
橋を通るタイミングでエメラルダスとメーテルと鉄郎が色々説明をしてくれるのだが、すべて日本語なので外国人観光客は当然聞いていない。みんなスマホで写真や動画を撮ったり景色を見ながら話をして盛り上がっている。
船内で3人の説明をちゃんと聞いていたのはたぶん私だけだった。
永代橋を過ぎて、屋上デッキが開放されたことが英語でアナウンスされると周りにいた乗客はみんな屋上デッキに移動してしまった。さっきまで欧米系の観光客に右と左で挟まれていたのに、みんないなくなってしまった。
外に出ても見える景色はそんなに変わらないし、なにより絶対に寒い。誰もいなくなった船内を独り占めしたい気持ちが強く、船内に残ることにした私は、ここぞとばかりに写真を撮ったり反対側に移動したりして貸切状態を満喫した。
進行方向右側に東京タワーが見えて、高層ビルの明かりも濃くなってきた。流れる景色を動画に撮りながら、美しい東京の夜景を自分の目にも焼き付けた。10分から15分くらいは貸切状態だったが、お台場が近づいてきてようやくみんなが船内に戻ってきた。
お台場に到着した時には外はすっかり暗くなっていて、夏ならまだ明るい時間だから、あの夜景も冬だからこそ見られた景色ということだ。
ついに「エメラルダス」に乗り、完全制覇した私は達成感に満ちあふれていた。
残念ながら松本零士氏はもうこの世にはいない。たぶん、松本零士デザインの水上バスは「エメラルダス」が最後なのだと思う。
この先も水上バスに乗りたくなる時がくるだろう。その時にはやっぱり、「ヒミコ」か「ホタルナ」か「エメラルダス」を選ぶと思う。
あの近未来的でスタイリッシュな船に乗り込む瞬間に、私を非日常に連れて行ってくれるから。
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