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サコフェスの暴行行為で今話題、地下アイドルの「最前管理」とは何か?必要悪?全アイドル運営と持ちつ持たれつな理由、今後解決されることはない地下アイドルの闇…?

 地下アイドル界隈に少しでも関われば避けて通ることの出来ない存在「最前管理」だが、界隈に全く関わりが無い人にとっては??となるワードであると思う。

この知られざる存在、地下アイドルの最前管理について解説していこう。


なぜ今地下アイドルの「最前管理」が話題なのか?

 
 なぜ今地下アイドルの「最前管理」が話題なのか?と言うと、香港出身のれいもん氏が2024/04/21に行われたアイドルフェス「サコフェス」にて最前管理から暴行を受けたと訴えているからである。


れいもん氏は、フェスの最上位チケットSチケットの整理番号1番を抽選でゲットしていた。

フェスは基本的に整理番号順に整列した上で、番号順に入場となるため、順当にいけばれいもん氏は「どこでも好きな場所」でライブを見ることが可能となる、はずだった。
最前列のドセンターだろうが、端っこだろうが、どこで見ても良い。
最上位チケットの整理番号1番というのはそのようなゴールデンチケットなのである。

ところがれいもん氏は、後ろから入ってきた数人に暴行され、そこにたどり着くことを許されなかった(と主張している)。

このれいもん氏を暴行したとされる数人が、おそらく「最前管理」だと推測されているのである。

「最前管理」とは何か?


 では「最前管理」とは何か?

地下アイドル界隈に疎い方には全く馴染みのない言葉であると思う。
ロックフェスが好きな友人にそのような存在がそちらの界隈にも存在するのか聞いたところ、見たことも聞いたこともないと言う。

ただし中小規模のロックバンドには存在するとされるし、声優界隈など他方面でもその存在を耳にするため、最前管理という名称で無くとも似た存在は各方面に存在すると思う。

いわゆる「地上アイドル」にも似た存在がある。
(ただし地上アイドルは完全座席指定の会場でライブをすることが多いので、最前管理が影響力を行使できる場面が少ないというのはある。)

それが顕著なのが地下アイドル界隈である、というだけである。

最前管理とは、その名の通り、各ライブの「最前列を管理するファンたち」のことである。

もう少し詳しく解説する。

まず地下アイドルのライブは、そのほとんどがオールスタンディング(立ち見)、整理番号順入場の形式で行われる。
座席指定などはない(ほとんどの会場で座席自体がない)ため、どこで見るかは番号順でほぼ決まる。

通常ライブ会場の最前列にはさくが存在し、ステージとの境界となっている。  
柵が存在するから、ここは場所取りがしやすい。

そこで、整理番号で良番を引いた者達は、開場後この最前列柵前のスペースをまず確保する。

そこはその者の場所として、その後自由に使うことが出来る。
ライブ中ずっとその場所に居座り、全てのアイドルグループを最前列で見ても良いし、他の人に一時的に譲っても良いのだ。

ロックフェスのように定期的に最前列を入れ替えさせるような仕組みも存在しない。
各アイドルフェスは動員が命のため、一組でも多くのアイドルグループをタイムテーブルに組み込む。
そのため時間はキツキツなのだ。
最前列を入れ替える時間的な余地など存在しないほどに。

管理されているスペースに他人が無理やり入るというようなことは、ロックフェスなど異なる文化圏ではあるらしいが、地下アイドル界隈ではそのようなことはない。

こうして最前列を確保してしまえば、そこが自由に使えるスペースとなるため、そこを管理する者達=「最前管理」がファンの間で発生する。

例えば私がとあるライブで最前列の「下3」を確保したとしよう。
これは最前列ドセンターを「0番」としたときに、そこから下手側に3人目の場所、という意味である。

私のお目当てのグループはAというグループで、タイムテーブル的にはかなり後の方だったとする。
その時間まで最前列に居座ってライブを見ても良いが、興味のないアイドルグループのライブを見続けるのはよほどのアイドル好きでもシンドい。
トイレにも、飲み物を買いにも行けない。

そこで、後から来た、先に出番のあるグループBやグループCのファンに対して場所を「貸す」ことも出来る。

グループBからグループEまではあなたがここに居て下さい、私はグループAの出番になる何時に戻ってきますので、などと「交渉」するのである。

この場合は「下3」を私が「管理」していることになる。

そして各アイドルグループには、あらゆるライブで最前列を管理する者達=「最前管理」グループが存在する。
(ただし弱小なアイドルグループには最前管理が存在しないこともある)

「最前管理」グループとは?驚異的なライブ参戦数をこなす地下アイドルとその最前管理達


 最前列を管理していればそれはもう最前管理なのだが、通常は各アイドルグループごとに最前管理をする集団が現れるので、継続的に最前管理をしている彼らのことをそのグループの最前管理と呼ぶ。

今地下アイドル界において2大巨頭となっているのがFRUITS ZIPPER(フルーツジッパー)iLife(アイライフ)なのだが、「FRUITS ZIPPERの最前管理」とか「iLifeの最前管理」といった具合だ。
(もう少し複雑な事情としては、アイドルの運営会社ごとに、大きな繋がりとしての最前管理が存在していたりもするが、これはちょっと複雑過ぎるので今回は省く)

この最前管理グループの構成員にならないと、たとえ最前管理めいた行為を行っていても、「最前管理」とは基本的には呼ばれない。

彼らは基本的にはそのアイドルグループが出演する全てのライブに現れる熱心なファンである。
もちろん構成員によっては全てのライブには参加出来ないが、おおよそ7割以上の参加率が無いと最前管理グループには入れないと思う(各構成員には各々役割分担があるので、厳密ではないが)。

「今日は最前管理が居ない」ということは、ほぼ無いのだ。
これはいわゆる地下アイドル(=ライブアイドル)のライブ数を考えると驚異的なことである。

地下アイドルは多いところだと月平均15回などのライブを平気でこなす。
2日に1回のペースでライブがあるのはそう珍しいことではないし、平気で4、5日連続ライブをしたり、1日3回別のアイドルフェスに参戦したりする。

そして、その全てのライブに最前管理グループは現れるのだ。

基本的にはアイドルグループの規模が大きくなるにつれ最前管理グループが付くし、またその「厄介度(悪質性)」も上がっていく。
また大きなフェスになればなるほど、関係する最前管理グループが増え、彼らが暗躍する場面も増える。

アイドルオタクの中には、「このグループの最前管理は悪質だから、好きだけど現場から離れる」みたいなことになる人すら居るのだ。

最前管理グループが存在出来る仕組み、地下アイドル運営が彼らを頼りにする理由

 
 そんな最前管理グループが存在出来る理由について解説していく。

まず何故そんなにライブに参戦出来るのか?働いてないの?資金源は?という疑問から。

これは中心メンバーについては、ほぼまともに働いていない。
親が資産家、自身が資産家(投資、経営者)などのパターンもあるし、転売ヤーというケースも多い。
前述の通り、ひたすらライブ数をこなす地下アイドルだから、ほぼ全現場参戦となるとまともに働いていたら不可能なのだ。
首都圏のアイドルグループでも頻繁に地方遠征をしたり、グループによっては突然数日後にライブが入ることも珍しくはない。

またアイドルフェスというのは、前述のとおり動員確保のためにギリギリのギリギリまで、一組でも多くのアイドルグループをねじ込みたい。
参戦グループの確定はもちろん、当日のライブスケジュールも確定するのは一週間前などが普通。 
平日の朝出るのか夜出るのかすらも直前まで分からない、こんなものにまともな社会人が参加できるわけもない。

ただし最前管理には夜勤などをこなすことで資金と時間を確保する者もいる。
全員がまともに働いていないわけではない。

次にチケット良番をどうやって確保しているのか?という疑問。

これは抽選であれば、とにかくめちゃくちゃ頭数がいるから有利であるし、先着であれば最前管理グループにはほぼ必ずBOTを使える者がいるので、良番の確保は難しくない。

彼らはとにかくチケット枚数を買う。
買いまくる。

ライブによっては前方スペースに入れるSチケットの7〜8割を彼らが買い占めていたりする。
必然的に彼らに高確率で良番が渡るのである。

基本的にSチケットは高額であるから(6000円〜1万円くらい、2万円以上のより高額なものも存在する)、それらを安定的に大量購入してくれる最前管理グループはフェス主催者や地下アイドル運営にとっては「上客」なのは間違いない。

そして最前管理グループは、整理番号一桁などの良番を確保したら残りは他のファン達にチケットを転売する。

基本的に地下アイドルのライブチケットは定価以上のプレミア価格で取引されることは少なく、これ自体は違法でもない。
チケットの券面にも利益目的の転売禁止とされているだけだし、名義確認なども無い。

現在地下アイドルのライブチケットの主流はスマホによる電子チケットだが、これはDMで簡単に譲渡可能である。

貴方が突然とあるアイドルフェスに行きたくなって、既にチケットの販売が終了していても、ツイッター(X)でそのアイドルフェスを検索すれば、誰かがそのチケットを売りに出している。

そしてその売り主は、高確率でどこかの最前管理グループである。

彼らも彼らなりにライブ当日のギリギリのギリギリまでチケットの在庫を抱えており、フェス主催者にとっては「非公式の代理店」のような存在なのだ。

地下アイドルが多数参戦するフェスの主催者は、地下アイドルグループを運営している運営会社であることも多い。

フェスを主催出来ないような中小地下アイドルグループ運営にとっても、最前管理はメリットのある存在だ。
何故ならファンを呼べる=動員の多いアイドルグループは好待遇でアイドルフェスに招かれるのに対し、ファンを呼べない=動員の少ないアイドルグループはフェスから「干される」からだ。

アイライフなどはそのフェスの目玉としてトリを飾ることが多い一方で、出るには出れたものの朝の7時台にライブをぶちこまれて、一体誰が来れるの!?みたいな境遇にされるグループもある。
出れないよりはマシだが…ほとんど動員は無く特典会にも人が来ないため、ほぼ顔見せ、実績作りのような形にはなってしまうだろう。

地下アイドルグループは、48グループのように常設・自前のライブ会場を持つなど不可能だし、中小は自分達だけでライブ会場を貸し切るワンマンライブなどもそう簡単には開けない。

そうなると、他所のアイドルフェスに招かれ続ける必要性がある。

地下アイドルの売上のほとんどは、ライブ後に行われる「特典会」におけるチェキ撮影である。
このチェキ撮影は1000円〜3000円(1500円から2000円のレンジが一般的)で、アイドルグループのランクや運営方針によって価格が決定される。

一般的なファンはこのチェキ撮影で、アイドルとの会話を楽しむのだ。
ライブを見て、感動や興奮状態にあると、ついつい財布の紐は緩む。
地下アイドルにとってライブは、この特典会を開くためにあると言っても過言ではない。

最前管理グループはこの特典会にはあまり参加しないことが多いが(最前列の管理に忙しいから)、地下アイドル運営にとっては「ライブに参加して、特典会を開かないと売上にならない」のであるから、全ライブに参加して動員数を確保、底上げしてくれる最前管理は有り難い存在になる。

最前管理の悪質性、一般ファンは良い位置でライブを観ることは不可能!?


  ここまで解説してきた最前管理グループは、「熱心なファン達」という側面が強いが、彼らの多くは非最前管理のファン達にとってはあまり気持ちの良い存在ではない。

何故なら、最前管理が常に最前列を独占しているため、良い場所でライブを見ることは一般ファンにはほぼ不可能になるからである。

例え奇跡的に抽選で良い番号を引いたとしても、である。

例えば6番や7番など一桁後半の良番を引いたとする。
これは最前列に入れる人数を考えれば、よほど横に狭い会場でなければ、最前列の良いとこで見れるんじゃないの?と期待すると思う。

しかし、最前管理は1桁前半の番号だけで横にかなりのスペースを確保してしまう。
少人数でも、両手を目一杯広げて人を入れなくする。
さもそこに人が居るようにカバンなど荷物を置くなど、ありとあらゆる手で最前列をスペースを埋めてしまう。

そこに、後から来た仲間たちを入れるのである。

6番や7番を引けたのに、最前列の本当に端っこにしか行けなかった…などはあながちあり得ない話でもない。

もし仮に貴方が1番2番など一桁前半の良番を引けても、ほぼ必ず入場前に最前管理グループが「交渉」にやってくる。

「その番号譲ってくれませんか?」というものだ。
もちろんこれにはメリットもある。
ただただ1番に対して2番と交換してくれという厚顔無恥な何のメリットもない交渉もあるが(それは果たして「交渉」と言うのだろうか?「強請りゆすり」ではないか?)、基本的には何らかのメリットが提供される。

他のアイドルフェスで最前列の良い所を確保して貴方に提供します、のようなものから、「安全に見れますよ」というものまで…。
また普通に最前列をキープし続けるのは大変なので、お目当てのグループまで自分達が管理しますよ、という至って平和的な交渉も多い。

勘違いしてほしくないのだが、ここで最前管理グループからの交渉を断ったとしても、100%何らかの手段で最前列中央の良い場所を奪われるわけではない。
ましてや冒頭のれいもん氏のような暴行を受けるケースなどは前代未聞で、ほとんど起こらない。
走って抜かされるケースなども有るらしいが、1番や2番を引き、迅速に行動すれば、最前列ドセンターに居座ることも可能なのである。

ただ開場前の交渉に始まり、開場後にも交渉を持ちかけられ、周囲は次々と最前管理グループに囲まれていく中で、そこに居続けるのはなかなかにハートの強さが要る。

例えるなら、不良グループの中に一人部外者が放り込まれるようなものだろうか。

そのため、せっかく1番を引いたのにそそくさと最前列の端っこに自ら「逃げて」行ってしまう人もいるくらいだ。

ただそれも賢明なのかもしれない。

最前管理グループはライブ中も動きが激しく、周りに遠慮、配慮などもないため、ライブ中に彼らのそばにいても気持ち良く観ることは出来ないかもしれない。
マサイと呼ばれるジャンプや、コールなどはもちろん、もはや奇声をあげたり、仲間内で喋っていたりと観戦マナーは決して良くはない。

ただし、「最前管理」と言っても、最前列の全てを最前管理グループが独占するわけではない。

彼らがこだわるのは最前列の中央スペース、大体7人からせいぜい10人程度の位置なので、それより外、最前列の隅っこなどは彼らの「管理外」となり、最前管理グループでなくとも入ることが可能になる。

それらの場所では、一般ファンたちによる「平和な最前管理」が行われていることも多い。
「お目当てはどこですか?」「Aです」「そうしたらすみません、Bというグループの時だけここ使わせてもらえませんか?」など。
私は「トイレ行きたいから、お目当てならここ使ってください」と最前列の方のほうから譲ってもらったこともある。

端っことはいえ最前列は最前列なので、すぐ間近にアイドルを見ることが可能で、それは2列目以降とは全く違う景色となっている。
何よりも観戦マナーが悪いことが多い最前管理に前を遮られることなく観戦出来るのが最大のメリットかもしれない。

実は2列目以降というのは、柵が存在しないため決まった位置を確保しつづけるのが難しい。

最前管理は推している、観たいグループによって頻繁に交代するのだが、その際に最前列を退いた者は即座に居なくなるのがマナーになる。
しかしマナーの悪い最前管理は、仲間に最前列を譲った後でそのままその後ろに残り、元から2列目にいた者を弾き出してしまったりもする。

最前管理のすぐ後ろ(最前列センター付近)というのはマサイというジャンプ行為や、わざわざ後ろに下がって行う指差しなどとにかく治安が悪いし、あまりオススメ出来る観戦スペースではない。

そんなわけで、最前管理の存在は、良い場所、良い環境でライブを見ることを一般ファンにはほぼ不可能にしているので、決して快く思われてはいないのである。

今回のれいもん氏の事件を受けてツイッター上では最前管理へのヘイトが爆発しているほどだ。
試しにツイッターで「最前管理」と検索してほしいが、最前管理の身内以外、好意的なものはほぼ無いに等しい。

最前管理って何が目的なの?


 ここまで読んでくれた方は「この最前管理っていう連中は何が目的なの?」と思うかもしれない。

その目的は様々だ。

一つは、アイドル本人と繋がりたいというもの。

地下アイドルが解雇、脱退処分になる理由の多くを占めるのがファンとの「繋がり」である。
そして、その相手のほとんどは最前管理グループの構成メンバーである。

繋がりには、男女関係としての繋がりもあるが、個人的に連絡を取り合うというケースが最も多い。
付き合うまでいかなくても何らかの見返りにデートすることなどもあるが、「明日のライブ来れる?」など、本当に些細なDMのやり取りなども多い。

ただそれでも相手はアイドル。
地下アイドルとはいえ、そのアイドルを推している者は他に少なからずいるわけだから、その優越感たるや半端ないのだ。

アイドル側は、何故オタクと繋がるのか?
その理由は様々だが、純接触効果と言うか、単純に会う回数が半端ないわけで、自然と仲良くなってしまうこともあるだろう。 
何よりも、一体何千人アイドルが存在するのだ?というくらい、人数が増えに増えてしまった地下アイドル戦国時代の今、「必ずライブに来てくれる」最前管理を無碍に出来る余裕などアイドル側には無いのだ。

地下アイドルの境遇というのは不安定そのもので、彼女達は常に病んでいると言っても過言ではない。
常にライブに居てくれる最前管理を頼もしく思っても何ら不思議は無い。

非管理の一般ファンからしたら数々の悪質行為を見ているだけに「あんなやつらが!」と思うかもしれないが、ライブが始まればその行為はほとんどアイドル側には見えない。
アイドルからすれば、「いつも熱心に応援してくれる人」になってしまうのだ。

可能性は高いとはもちろん言えないのだが、もしアイドルが好きで好きでたまらず、何が何でも繋がりたいと考えるなら、その子の最前管理になるのが一番可能性は高いかもしれない。

半ば最前管理の悪質な行為に気付いているメンバーも、その全てを見ているわけではない。

何なら運営スタッフやチェキを撮るスタッフ(通称チェキスタ)も最前管理メンバーとは仲良しだ。
これも単純に会う回数が半端ないため、自然と仲良くなってしまう。

もちろん彼らは最前管理の悪質な行為をアイドルよりも認識しているのだが、それでも「常連中の常連」には違いない。
たまにしか来ない遠い一般ファンよりも、常にすぐ近くにいる最前管理の方が親近感が湧くのだろう。

これが、何か問題が起こった時対処しづらい原因にもなる。
ライブの監視スタッフなどはこのチェキスタッフが兼ねていることも多いから、少々のことは見逃してしまったりするのだ。

「あまり派手にはやらないでね」などと…。

アイドルとの繋がりほどではないが、「女オタク目当て」の場合もあるにはある。

最前管理は様々なメリットを提供出来る。
チケットはもちろん、最前列で見ることも。

これを利用して、女オタクに無料または格安でライブを見せたり、最前列に呼んだりして、何らかの見返りを受ける。
まあ言ってしまえば身体の関係だったり、単純に「仲良くする」だけであったりと様々だが。

最前管理にはこのような「福利厚生」もあるが、単純に「いつも最前に居ること」が存在意義、アイデンティティ、ステータスになってしまっているというのが実態だと思う。
(そもそもこの福利厚生にありつけるのは最前管理でもごくわずかな者達だけだ)

最前列に勝る観戦環境は無く、アイドル側も彼らを無碍には出来ないから、頻繁にレスポンス(レス)も飛んでくる。

またアイドルに直接見える形で何らかの応援をすることが可能であり(ピョンピョン飛ぶマサイ+指差しスタイルが最も多い)、何なら他のオタクに見せつけるために飛んでいる者さえいる。

「オタクの行動原理は全てがマウンティングである」という格言がある。

俺のほうがそのアイドルに好かれている(推されている)、というフワッと抽象的なものは、なかなか他者には認識されづらい。
アイドルも馬鹿ではないから、わざわざハッキリと他者から認識されるような方法で誰かを贔屓していることを明らかにはしないからだ(嬉しくて、してしまうアホな子も結構いるのだが…)。

ひたすらにチェキを撮りまくり、それをツイッターに上げるという方法もあるが、それはある意味で「課金しているだけじゃん」とも言えてしまう。

一番わかり易いのはやはり、「最前列にいつも居る」なのである。

最前列は、よほど強がりなオタクで無い限りは、出来ればそこで観たいと思う場所、環境だから。
そこに優越感や、自らの存在意義を見出すのだ。

そして「最前列にいつも居る」ことがアイデンティティになると、そこを他者に奪われることはすなわちアイデンティティの喪失となる。

「恥」のように認識する者も少なくない。
最前列だけでは飽き足らず、毎回最前列のドセンターでないと嫌だという者まで居る始末だ。

普通に考えると、全てのライブで最前列に居る必要性などあるわけがない。

だが、彼らはそれが許せないのである。

だから時に度を超えたやり方で最前列を奪う行動に出てしまう。

最悪の結果になったのが、今回のれいもん氏の事件である。

最前管理問題が対策、解決されることはない理由、一縷の望みがあるとすれば…?


 さてこの最前管理問題。

今回のような事件が起こり、何らかの対策、解決がなされることはあるのか?と言えば、それは99%有り得ないであろう。

まず最前管理に自浄作用を求めることは不可能だ。

地下アイドル界隈における最前管理グループはここ数年活性化、より集団化し横の繋がりを深めており、あらゆる行為をエスカレートさせている。

「何をやっても許される」ということそれ自体が、彼らのマウンティングになりつつある。

自浄作用など期待出来ないところまで来ている。

彼らの行動原理は、つまるところマウンティングであり、アイドルを本気で売れさせようみたいな気持ちはほとんど無い。
あったとしても、それはアイドルグループが大きくなることで自分達の自己顕示欲も肥大化させていきたいというものである。

今後も彼らはありとあらゆる手段を使って最前列を支配していくだろう。
少なくともそこを譲ることは有り得ない。

彼らはアイドルグループを純粋に応援するボランティアではない。
そんな心持ちなら最前管理にはならない。

またアイドルグループ運営も最前管理を本気で取り締まることはない。
何故なら最前管理は「非公式の代理店」であり、チケットを捌いてくれる有り難い存在だからだ。
そして確実な動員を見込める、アイドルグループを下支えしてくれる存在でもある。

毎日のように顔を合わすことにより、職場仲間のような親密感すら持っていたりする。

いつの間にか最前管理が居ないと運営がままならないような依存関係になっているところすらあるのだ。

例えば周年ワンマンライブなどは、どこのアイドルグループも見栄を張って身の丈に合わない、大きな会場で開催する傾向がある。
当然ファンの数が足りない。

その時、「招待特典」を付けると、それに応じた動員を最前管理グループが中心となって呼んできてくれる。
彼らの横のつながりは半端ないからだ。

例えば「100人呼んでくれたらメンバーとディズニーデート」などの招待特典をぶちあげれば、余裕で呼んできてしまう。
これは単純にお金を持っているだけではない、最前管理グループの強みだ。

最前管理は一般ファンを遠ざけるという意味では目の上のたんこぶなのだが、それ以上に地下アイドル運営にはメリットが大きい。

もちろんフェスに何人もセキュリティを配置して最前管理が何か不穏な行為をしないか見張るには人件費が掛かる。

今後何かしらトラブルが起こる可能性はあるが本気で取り締まるメリットが運営側にはほとんど無いため、「何も変えない、何もしない」が最適解となってしまう。

運営もボランティアではないし、何よりも「まともな運営をしたいなら地下アイドルグループ運営にはならない」という哀しい現実がある。

地下アイドル運営には通販した商品をまともに送ることすらままならないところが珍しくないのだ。


また「最前管理」というワードは、アイドルにとっていわば「NGワード」のような存在となっており、この言葉がアイドルから発信されることはない。

TikTokの地下アイドル関係の人気コンテンツに「地下アイドルあるある」や、ドキュメンタリーなどがあるが、こんなにも深く界隈で浸透している「最前管理」というワードが出てくることはほとんどない。

せいぜいフォロワー数の少ない、中小のアイドルグループのメンバーや運営が、最前管理が興味のないアイドルのライブ中に談笑していたり、スマホを見ていたりすることにツイッターで苦言を呈するくらいだ。
(これに関しては最前管理を擁護するわけではないのだが、彼らは最前を管理するうえで多数のグループのオタクと連絡を取り合う必要があるので、スマホを見ないわけにはいかないというのはある。)

アイドルにとって最前管理について問題意識を表明するどころか、「最前管理」というワードを口にすること自体が難しい。
そんなアイドルが、未だかつて存在したことが無いというだけで、どれだけ闇が深いかご理解頂けるのではないだろうか?

「最前管理」はアイドルの楽屋、一般オタクのライブ後の食事会、飲み会で最も話題にされている「ネタ」であるにも関わらず…。

一縷の望みがあるとすれば、警察が介入することだが、これも望みが薄い。
警察は基本的には「コスパの良い事件」にこそ動きたがる。
事件は無数に存在するのだから、検挙することで、警察の権威や名声が高まる事件こそ取り扱いたい。
しかし「地下アイドル」や「最前管理」といった界隈、ワードはあまりにも一般社会とかけ離れており、ニュースバリューも低い。

せっかく介入したところでマスコミはまともに取り上げないから、コスパが悪いのだ。

最前管理が嫌なら、出来ることは二つだけ?


 最前管理が嫌なら、一般ファンに出来ることは二つしか無い。

一つは、現場を離れること。
これは何も完全にファンを辞めるというわけではない。
距離を置く、と言ったほうが良いかもしれない。

悲しいことだが、地下アイドルの現場に通う限りは最前管理を目にしないことは不可能だし、嫌な思いをしないこともほぼ不可能だと思う。

そしてこれは最前列に近づく、つまりアイドルに近づけば近づくほどに顕著になっていく。

少なくとも、良い場所で見よう、アイドルからレスを貰おうなどと思わなければ、嫌な思いもまたしなくて済む。

自分が心地よいと感じる距離感は人それぞれだろうが(最前管理などは、最前に居れなくなったら絶望するわけだし)適度な距離感を保てば、何も向こうから殴りかかってくることなどはない。

現に、いつも一般チケットを買って後ろから見ている、月一程度だけライブに来るといった人には最前管理をほとんど知らない人も居る。

もう一つは、最前管理の養分にならないことだ。

最前管理はチケットを一旦抱え込み、自分達の使う良番を確保した上で残りを売り捌こうとする。

ツイッター上で「このフェスのチケット余っています、必要な方はご連絡下さい」とやっているのはほぼ最前管理グループである。

確かに地下アイドルフェスは行こうと思った時にはチケットの発売が開始されており、直前に買うと整理番号は悪くなる。

しかし、整理番号は開場時点でのみ効力を発揮するものだから、開場、フェスのスタート時点から会場にいないと意味がないのだ。

お目当てのグループを見たいだけなら、せいぜい1時間前くらいに会場入りすれば、少しずつ前に行き、それなりの場所で観ることは可能だ。

それならばチケットの番号はほとんど関係がないので「今から買うより良い番号になります」という謳い文句に乗る必要はない。

そして地下アイドルの良さは、年中、いつでもライブをやっていることにある。
目の前のライブに参加出来なくても、すぐまた次のライブ、そして次の次のライブがやってくる。
それこそ最前管理ではないのだから、万全の状態で参加出来る時を待てば良い。


また最前管理グループには、最前管理グループそのものでは無いにしても、取り巻きと言うか二次集団的な仲間が存在する。

これは元々一般ファンだった人達が、あらゆる利益供与の誘惑に耐え切れずに最前管理に取り込まれてしまったケースが多い。

チケット代金を少し安くする(チケット販売サイトに支払う手数料カットなど)ので、最前管理の「チケット顧客」になってしまった人が代表的だ。

チケット顧客の中にはさらに、最前列の一番良い場所ではなくとも、最前列にたまにいれてあげるとか、最前管理の支配するセンター付近に後から入れてあげるなどのメリットがあったりする。

また自分がたまたま良番を引いてしまったとき、最前管理にそれを譲ると、自分のお目当てのグループで良い場所で見れたりする。
場所の確保は最前管理が行なってくれるから、煩わしい管理行為はほとんど不要だ。

そうこうしてるうちに最前管理の飲み会に参加したり、遠征の車に乗せてもらったりなどしてどんどん取り込まれてしまうのである。
気づいた時には、ほぼ最前管理グループの一員(準構成員のようなもの)となっていて、違反行為に加担して出入り禁止になってしまった者もいる。

アイドルを好きになった以上、より近くに行きたいのは、ファンの本能のようなものである。

それ自体が悪いなどは誰も言うことはできないだろう。

しかし、その成れの果てが最前管理であり、その取り巻き達なのだ。

自らが魔王やその配下のモンスターになっていることに気付かず、ただひたすらアイドルの近くへ近くへと彷徨い続けるのは、あまりに哀しいことではないだろうか。

最前管理は「悪」なのか?

  
 今回の問題を受けて、地下アイドル界隈では様々な議論がなされている。

おそらくはこの界隈で最も有名人であるリョウヘイ氏などは最前管理は一概に悪ではないと述べている。

私は最前管理のメンバーと話したことは何度もあるが、基本的に彼ら一人一人の印象はそこまで悪くはない。

少なくとも一対一で接する分には、好青年と呼んでも良いくらいの対応をしてくれる子もいる。
友達になったらさぞかし楽しいだろうという一面を見せてくれる子もいる。

そもそも彼らは非最前管理にチケットを捌かないといけない立場であるから、顧客もしくは顧客候補に対して横柄な態度を取ることはほとんど無い。

自分より番号が良い人にはヘコヘコとしていたりもする。
(ぶっちゃけ自分の仲間と認識したグループ以外のオタクのことを養分と見下しているというのはひしひしと感じるのだが…。)

彼らも進んで揉めたいわけではないと思う。(本当に短気な喧嘩っ早いやつもいるのだが)

ただし、本当にどうしようもない最前管理グループが存在するのは確かである。
後述する「最前管理にやってはいけないこと」であるように、最前列に割り込まれた時の最前管理はその凶暴性をあらわにする。

またライブは一旦入場した後の再入場は、手首にリストバンドを巻くのだが、これをカッターなどで綺麗に切り取り、あるいは接合部分を溶かして他人に譲渡したりする。
また各アイドルグループが個別に発行するスタンプカードの特典偽造に手を染めたりもする。

これらは明確に犯罪行為である。
擁護のしようがない。

ただ最前管理の全てがこのような行為に手を染めているわけでもない。

「最前管理って何が目的なの?」では書かなかったが、彼らの本当の目的というのは、ただ仲間とつるみたい、それだけなのかもしれない。

アイドルのライブ中も、アイドルからレスが来たことについてライブそっちのけで大騒ぎしたりしているし。
何なら、ライブ終わりの飲み会や食事会の方が楽しそうにも見える。

朝早くから集まり、深夜まで行動を共にするには、「最前を管理する」という共通したタスクが必要なのかもしれない。

そこには一種のホモソーシャル(男性間の緊密な結びつきや関係性)的な概念すら感じるほどだ。

通常のオタク仲間などでは味わえない、強固な結びつきは、いわば部活動などと近いかもしれない。

何度も言うが、普通に考えて、数多く開催される地下アイドルのライブ全てに参戦して、最前列で見なければいけない理由などどこにも無い。
アイドル達だって、有り難い側面はありつつ、そんなことを望んでいるわけではないだろう。

彼らは、どこの誰が始めたかも分からない「最前管理」というゲームに仲間内で熱狂しているだけとも言える。

しかし、その最前列を何がなんでも確保するという行為が数多くのトラブルを生んできたことは確かだ。
今回のサコフェス事件ほどではないにせよ。

そしていつの間にか、「普通のオタクがたとえ1番を引いても、最前列センターでライブを観ることは出来ない」という空気が生まれてしまった。

最前列センターで見れば、そこには2列目以降では味わえない観戦体験が有り、よりそのアイドルを好きになったりする者も生まれただろう。

しかしそれは不可能とは言わないが、極めて難しいことに最前管理という存在がしてしまったのだ。

これはやはり悪ではないか?と思うのだが、これを読んだ皆さんはどう思うだろうか?

少なくとも、今回の事件でこんなにも最前管理に対するヘイトが爆発しているのは「誤解」によるものではないと私は思う。

ある程度現場に通うオタクならば、最前管理に大なり小なり嫌な思いをさせられてきたのである。

その嫌な思いをしたくないなら、最前管理とお近づきになり、何らかの利益を提供して、仲良くなりましょう、というのは、到底受け入れられないものではないだろうか?

オマケ 最前管理に絶対にしてはいけないこと



 なお、最前管理に義憤を感じたからと言って、最前管理を現場で批判したり、ましてや妨害めいた行為は絶対にしないほうが良い。

最前管理の中には、本当に喧嘩っ早い者も居て、すぐにキレて暴力沙汰を起こすこともある。

彼らが最も凶暴化するのは、最前列に割り込まれた時だ。

最前管理は、マサイというジャンプ行為をライブ中に行うため、左右にそれなりにスペースを取って場所を確保する。

結果的に「一人くらいなら入れるんじゃない?」と素人目に思える隙間が空いていたりするが、そこに入ろうものなら烈火のごとく最前管理に囲まれ「剥がされる」のだ。

その様はまるで昨今話題になった「私人逮捕」に似ている。

「出ろオラァ」という怒声とともに最前管理に連れて行かれる「何も知らない人」を見たことがある。

スタッフに助けを求めたところで、救済される保証は全く無い…と言うか、むしろトラブルを起こした側として出入り禁止にされてしまう可能性も高い。

ライブは最前管理に喧嘩を売るためにではなく、楽しみに行く場所である。

くれぐれも彼らと関わってはいけないのだ。


























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