負けてたまるか

大学生になれば自由になれる

そう思っていた私へ



1年生前期(2020年)

・高校の謝恩会・送別会がない、入学式がない、対面授業がないと聞き、紙面の出来事だったコロナがじわじわ迫ってくることを実感した。今まで家の外に出られるから生きられていたことを、その時の私は気づいていなかった。

「みんなで乗り越えよう」
細い路地 マスクを外して 深呼吸
私は戦線離脱を望む

・父の仕事、兄弟の授業もオンライン化した。家には各人の部屋が無かったので、広いリビングと広い個室の2つを取り合いした。zoomでの発言回数が一番少ない私は納戸で段ボールに囲まれる。

・イヤホンをつけて授業を受けることは禁止。急に発言すると驚くからだそう。授業が終わると「つまらない授業だね」とコメントされる。

・母は医療従事者。近所の人からは距離を置かれるようになった。

・施設維持費ぐらい返してくれればいいのに、電気代補填してくれればいいのに、オンライン可愛そう、なんでサークルのミーティングは夜遅くなの、なんで進学したのに家にいるの、なんで東大に受かったのに辛そうな顔しているのなどなど、色々言われるけれど何も返せない。

・新歓・サークル・クラス交流会はオンライン。参加するために、家族と交渉するのが大変だった。お昼の時間、夕飯の時間、お風呂の時間、兄弟のゼミ、父の会議、母のご飯を作る時間etc…どれとも被ってはいけなかった。

たまには「出席しないと先輩に怒られる!」とか言ってみたり。先輩って呼べる関係もなかったけれど。

・気晴らしに漫画をパラパラめくる。キャンパスライフが描かれているものはギャップが苦しくて布団の中で泣いてみる。


1年生後期

・東大では数少ない女の子たちとご飯を食べに行く。前期の間に彼女たちはオンラインで仲良くなったらしい。ブルーな感じで帰ってくると「あなただけ楽しむなんて許せない」と泣きながら言われる。近所のママ友から声が掛からなくなったのが相当応えていた模様。

・男の子達とも仲良くなれない。授業は最前列で受けたいけれど、知り合いを作るために後ろに行くべきなのか。

・制限はありながらサークルの対面活動が始まる。休日に授業がないのはバレていて、なかなか出かけにくい。唯一申し込めた日程に大型台風が来た時はさすがにお風呂で泣いた。

・秋、母の知り合いのお墓参りに行く。大学2年生の若さで亡くなったらしい。私もこのまま死ぬのかと墓地で思う。同時に死んでたまるかと決意した。

・「部屋ないから引っ越します」と宣言した。さすがに焦ったらしく、約束を取り付けた。

・ぶつぶつと周りから言われながら、リフォーム会社を選ぶ。せめて兄弟の受験が終わってから着工しろと頼まれたのでそこは譲歩してあげよう。

初めまして 言わずに進級 1年生
使わなかった 定期が揺れる


2年生前期(2021)

・部屋が完成!お金は働き始めたら返そうと思う。

・自分の大学では1年生の入学式の後の2年生歓迎式はなかった。5月ぐらいに大学内で開かれただけましだったけれど。

後輩よ 入学式を 経たものよ
迎える私が 泣くのは無視して

・初めてサークルの対面活動に参加。朝3時に起きても自分の部屋で準備できるから怒られはしない。ミーティングいなかったよね?初めまして〜と言われるのが辛い。

・期待していた対面授業はほぼ0。ゼミは少し対面形式のものがあり志望理由書を書いて合格したら、おしゃべり禁止で毎回爆睡。想像との乖離にキャンパスのお手洗いで泣く。

・でも授業料・施設維持費の回収のためにせっせとキャンパスに通う。

未使用の 施設費のもと 取るために
充電器背負って キャンパスへ 

・キャンパスにいる1年生は対面授業があって楽しそう。2年生も理系は実験が対面授業で楽しそう。対面授業があるから友達がいるってわけでもないけど。

・交流会にも少しは参加できるようになった。でも、みんな2年生になったら司法試験の勉強があって参加できないらしい。一人になって退出ボタンを押す。

・夏、死んでたまるか(part2)の気持ちで、資格試験の塾に申し込み、田舎で2週間インターンして、寝台列車に乗って長旅に出る。


2年生後期

・相変わらず授業はオンライン。自分の部屋だからまあまあ快適。キャンパスに行くと1年生がいて辛いのでstay homeする。

この解除 大学生は対象外
キャンパスライフは 未だ二次元

緊急事態宣言明けにて

・毎日みっちり授業があるおかげで部屋にこもっていられる。

・やっと自分のペースで勉強ができるようになり、笑えるようになってきた。この2年間の意味は何だったのかとは思うと部屋で泣いているけれど。


3年生(2022年)

・通わなかった1・2年生用キャンパスから、3・4年生用キャンパスへ移る。毎日授業があって、毎日家から出られて、毎日夜に帰れて幸せ。往復3時間の旅路は長いけれど。

・周辺では留学に行く人もいるらしい。行こうと思った昔に説明会も出席したから制度の解説をしてみせる。

・毎日の対面授業。意外とみんな寝ていて驚く。あと、男子が多い。初めての対面試験では、興奮でペンを持つ手の震えが収まらなかった。

・初めての飲み会でピッチャーを見る。酔っ払いも初めて見る。

・やりたかったことを思い出し、理想とのギャップに項垂れて、周りとの遅れに打ちのめされ、たまには空き教室で泣く。後ろから励ましてくれる人もいる。


4年生(今、2023年)

・兄弟は家を出て、隣の部屋は空っぽになった。父に占拠されないように自分の物を置きに行く。

・きらきらしてる五月祭、きらきらしてる人たちを見ると胸が苦しくなる。涙は下に溢れるから、たまには下を向いてキャンパスを闊歩する。


やりたかった事はたくさんあった。

行きたかった所もたくさんあった。

今思うとコロナがなくても、私はできなかった、行けなかったと思う。

コロナのおかげで私は今、自分の部屋にいる。そしてこの文章を一人で書いている。

自由とは、

誰にも邪魔されずに自分でいられること。

そして、泣きたい時に泣けること。

だからあえて、コロナよありがとう。負けてたまるか。


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この文章は、「#いまコロナ禍の大学生は語る」企画に参加しています。
この企画は、2020年4月から2023年3月の間に大学生生活を経験した人びとが、「私にとっての『コロナ時代』と『大学生時代』」というテーマで自由に文章を書くものです。
企画詳細はこちら:https://note.com/gate_blue/n/n5133f739e708

https://docs.google.com/document/d/1KVj7pA6xdy3dbi0XrLqfuxvezWXPg72DGNrzBqwZmWI/edit
ぜひ、皆さまもnoteをお寄せください。


また、これらの文章をもとにしたオンラインイベントも5月21日(日)に開催予定です。
イベント詳細はtwitterアカウント( @st_of_covid をご確認ください )
ご都合のつく方は、ぜひご参加ください。


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