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うちとそとの区別

ホロコーストの生存者などに証言を聞いた、9時間以上に及ぶ映画『SHOAH』

授業でほんの一部を鑑賞している。

この前の授業では、絶滅収容所のすぐそばで、畑仕事をしていたポーランド人の証言の場面を見た。

すぐそばで、ユダヤ人が暴力を振るわれ、虐殺されるのを見ざるを得ない状況だった。

それでも、彼らは自分の生業である畑仕事を続けた。

ユダヤ人が虐殺されるのを目の当たりにして、何を感じたのかという質問に対し、一人がこのように応えていた。
「あなたが指を切っても、私は痛みを感じない。」

個の一場面だけを切り取ると、ポーランド人の非情さが際立つかもしれない。

ただ、横で、同じ人間が、ユダヤ人という理由で、モノのように扱われており、次々に命が葬り去られていく。

見るに堪えない絶望的な状況で、いつ自分も殺されるか分からない。

普通の精神状態では自分を保つことができない。

彼らはどうしたか。自分と収容所の間に、精神的な壁を作ったのである。

私たちと、彼らの生きている世界は、隣り合っているが、間違いなく別の世界である。並行して進んでいるが、決して交わることのないパラレルワールドだと。

世界を切り分けたことは、彼らの応える様子にも表れていた。
インタビューの間に、彼らは少し笑うことがあった。

思い出しても絶望的な状況で、へどの出そうな世界だったと思う。(ポーランド人の苦しみの本当のところは分かりかねるが)

その状況に、笑いをつけて話している。

なぜか、そうでもしないと話せなかったからかもしれない。

自分と収容所を別にしないと精神がやられるような、危機的な状況だったのだろう。


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