ササキ モザイク

年相応にいろんなことを考えた結果、「せっかくだから」という動機で、noteを始めること…

ササキ モザイク

年相応にいろんなことを考えた結果、「せっかくだから」という動機で、noteを始めることにしました。 創作作文ばかり投稿の予定。ウソばかり書き連ねることができれば成功です。

最近の記事

正直村で嘘をつくと

(407文字) 嘘つき村人「まったくなんだこの村は。しみったれ過ぎだな。こんなところに住んでいる奴らの気がしれない。どうせイヤな奴らばっかなんだろうなあ。よく見ればどいつもこいつも馬鹿そうな顔ばっかじゃねえか。とっとと帰りたいぜ」 正直村人A「ああ、なんと口汚いことか。さぞ厳しい環境で育ったのであろう」 正直村人B「可哀想な方。きっとこの方には罪はないと思うわ。神様はきっと許してくださいます」 正直村人C「まったく、世の中にはどうしようもない奴がいるものだ。はっきり言

    • 1日の終わりに

      (2610文字)  揚力が足りないブーメランのように、最低限の慣性でかろうじて体勢を維持し、なんとか止まらず堕ちず、自宅のドアまでたどり着く。エンストした車が残っているエネルギーを絞り出して直進するかのように、止まってしまうまではなんとか止まらないように、部屋に入る。  キッチンの流しには、朝洗わなかった食器が置かれている。帰ってきてから夕食の分と一緒にまとめて洗おうと思っていたやつだ。今日はもう無理だと決めたので、明日の朝まとめて洗おう決心し、汚れた食器を視界からシャット

      • 夜の道

        (2,781文字)  若干オレンジ色を帯びた街灯が、道の両側を照らしている。  街灯の間隔は20メートルほどはある。それが数百メートル続いている。街灯から街灯へ、光の島を渡り歩く。自分を俯瞰して見ているだれか他人になったような、想像をしてみる。  次々と新しい世界に足を踏み出す冒険者ようだな、と考える。まるで自分のことではないかのようだ。その発想の強引さと幼稚さにうんざりはするものの、一方で、自分もまだ捨てたものではないな、というポジティブな思考も湧く。  舗装路ではない。

        • 或る男の序章

          (5457文字)  その男が死んだのは、36歳になる誕生日のちょうど1週間前だった。  彼に家族はいなかった。過去、とある会社に勤めていたが、辞めてもう数年は経過していた。そのときの知人との交流も既になく、まさに『天涯孤独』であった。自室で首を吊った状態で発見されたのは、死の1ヶ月後である。何かの勧誘にきた若い男性が異臭に気づき、大家と共に部屋に入って首吊り死体を発見した。すぐに警察と救急車を呼んだが、救急車を呼ぶのは意味がないことは明らかだった。  その後数日間は警察の人

          明けない夜

          (1194文字)  小説にできそうなひとネタを思いついた。我ながら素晴らしい着想だと思う。忘れないうちに触りだけ書いておこう。 タイトル:明けない夜  道端で偶然、彼氏と別れた直後の女性と出会い、瞬く間に意気投合した。もう深夜と言って良い時間である。初対面の人とこんな時間に喫茶店に入るなんて、初めての経験だ。とはいえ相手は失恋直後で情緒不安定なところもある。専ら私が愚痴を聞きつつ慰めるかたちだ。  どことなくミステリアスな雰囲気を纏っている女性である。こんな素敵な人を振

          世の中金噺

          (2893文字) ほら、やっぱり世の中金じゃないですか。あんたも思うでしょ。こちとら汗水流して働いて、その日暮らしの銭稼いでるってえのに、あいつらぁエアコン効いた部屋で紅茶飲みながらパソコンのキーボードをタターンって叩きゃあ、そんだけでオイラの何倍何十倍のゼニが入ってくるんだぜ。やってらんねえよなあ。そもそもだよそもそも。ゼニってぇのは、モノと交換するもんだろ? あっしだって、こうやって一生懸命しゃべってあんたらに聞いてもらって、じゃあ時間潰せたから褒美でもやるか、ってえ人

          不純探偵交遊

          (806文字) 刑事アスカ「困ったわ。関係者全員が集合するまでもう時間がないのに…」 探偵ゴトー「考えよう。犯人は煙草屋エンドーで間違い無いんだから、なにかきっと、彼を糾弾する方法はあるはずだよ」 刑事アスカ「ええ、そうね。考えるしかないわね。ああ、でも、やっぱりはやまったかしら…。村長ササカワじゃなくって煙草屋エンドーが犯人だってわかった時点で、落ち着いてもっと証拠集めをするべきだったわ」 探偵ゴトー「しょうがないよ。あの時はああすることがベストチョイスだったんだ。

          僕と若子の真実

          (14898文字) 「おいタケル、明日暇か?」  鹿本義昭が赤ら顔で聞いてきた。酔っているせいか機嫌は良いようだ。 「まだこっちには居る」と、タケルはとりあえず適当に答える。 「じゃあ、12時に俺ん家これるか?」 「あしたお前の家に行けって?」 「そう言ってるだろう」  我ながら頭の悪い会話である。自分もかなりアルコールが入っていることを自覚する。  しかしいくらアルコールが入っているとはいえ、いい歳をした大人が、この時間に明日の昼の約束をするというのもいかがなものか、と思

          僕と若子の真実

          田舎の祖母

          田舎の朝は早い。 私は、祖母の家に泊まると、いつもより2時間は早起きする。 祖母の家で朝起きるたびに、ああ普段もこれくらいに起きて活動してればなあ、と思う。 それでも、私が起きるころには、祖母はもうすでに、割烹着を着て炊事をしている。祖母は毎朝、前日分の洗濯をしてから、その日の朝ごはんを作っているようだ。しかも朝ごはんは和食で、ご飯は釜で炊いているし、毎朝おかずも味噌汁も作っている。私よりどれくらい早く起きているのだろう。私は、生まれてこの方、寝起きの祖母を見たことがない。

          メロンパンか自由か

          パン屋さん『サムブレッド』でメロンパンを買った。 『サムブレッド』のメロンパンはとても美味しい。しかも今日は焼きたてだ。 「いつもありがとうございます」とレジをうった男性がレシートを渡しながら言う。見るからに職人気質で、人づきあいは苦手そうだ。ぎこちないながらも、できる限りの笑顔で精いっぱい愛想を振りまいている。その態度が、微笑ましい。 『サムブレッド』は、パンの出来上がりをインスタグラムで知らせてくれる。メロンパンだけではない。菓子パンから惣菜パンまで、今日この先、店に

          メロンパンか自由か

          やけっぱち探偵と冷静助手

          「ええいわからん!なんなんだ君たちは!みんなしてウジウジしやがって…!捜査に協力しようという気はないのか。…そうか、わかったぞ!これは、単独犯では絶対に不可能なんだ。犯人は2人以上は確実だ。どうせ、君たち全員が共犯なんだろう。オマエも、オマエも、そこの刑事も、みんなしてオレを騙しているんだな。そうだ、そうに違いない!!」 名探偵ゴトー・ミロクは口から唾液を飛ばしながら叫んだ。 探偵助手カナリア・カナコは冷静に言う。 「公衆衛生上の懸念点があります。マスク着用を強く推奨します」

          やけっぱち探偵と冷静助手

          パンダの夢

          夢の中にパンダが出てきた。 夢の中では、これが夢だとはわからなかった。 「やあ、こんにちは」パンダのほうから声をかけてくれた。かなり緊張がほぐれた。きっと良いパンダだ。 「どうも。こんにちは」僕としてはかなり自然に声をかけることができたと思う。 パンダは何も言わないがニコニコしている。 「パンダさんですよね?」次は僕の方から声をかけた。緊張をほぐしてくれたお礼だ。 「そうだよ。ぼくはパンダさんです。見たらわかるでしょ」 「見たらわかるけど、でも座って喋ってるからさ。ちょっと

          節目

          小学生のときは、日曜日の午後3時頃が憂鬱な時間帯だった。休日が終わりに近づいていることが、否応なしに感じる頃合だったから。 推理小説は、最初の1人が殺されてしまうまでが良い。「誰が犯人なのか?」よりも、「これから何が起こるのか?」の方がドキドキする。 野球は、小学生の頃が楽しさのピークだったな。実力のピークは高校生の時だったけど。今だって続けているけど、あの時みたいに純粋な気持ちでは向き合えない。歳をとったものだ。 てっぺんまで登ってしまえば、景色は良いし空気もうまいから、