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帰りの地下鉄では座ることができた。 よくやってくれた、有意義な旅であった。 同志は言った。…
ただいま。 男は帰宅した。 なんか、すまん。 娘を抱え、迎える妻に恥ずかしそうに言った。 ど…
特別な恩恵…。 彼に差し出されたもの。 それは、綺麗に包装され、リボンが可憐にあしらわれて…
鞄から包みを取り出す。 娘のために買い求めた。 妻は戒めた。 物心つかぬ子に贈り物など自己…
男は二人を詰所に招き入れた。 茶を出す。 神経質はうなだれている。 仕切り直そう。 向こうは…
札束の攻防戦で、緊張していた男の身体は不思議とほぐれていた。 汗も引いている。 思考がよく…
側近は仰け反った。 身体が強張り、喉が渇き切った。 それほど同志の表情は厳しかった。 失敗を悟った。 故郷の両親が瞼に浮かぶ。 この任務を拝命した時、涙を流して喜んでくれた。 お前は、一族の誇りだ。 だが…。 確かに、失敗したのだ。 情けない。 唇を噛んだ。 そして涙を浮かべ、札束を鞄に仕舞い込んだ。
彼は、行ったり来たりする札束を眺めていた。 違和感があった。 金を出す。恩恵を受け取る。 …
側近は苦虫を噛み潰した。 金の受け取りを拒否された。 偽善者め。 化けの皮を剥がしてやる。 …
何が起こっている? 謎の展開を見せる、官邸正門詰所。 眉間に深い溝を刻み、男を睨みつける、…
神経質の苛立ちは、男に伝わっている。 言葉はわかる。 だが、意味が分からないのだ。 その神…
畳の控室は居心地がいい。 たっぷり昼寝を楽しんだ。 電話が鳴る。 お前の妹、カレー食った後…
男は錯乱の一歩手前であった。 見覚えのある人物。 何故、何故だ。 鼓動が激しく打つ。 夢中で…
側近は小気味良かった。 目の前の男はすっかり色を失っている。 同志の威光が、異邦人をして恐懼せしめている。 この任務にただ一人選ばれた。 名誉であった。 ただ、絶対に誤りは許されない。 最近、気掛かりがあった。 同志の様子だ。 沈鬱…。 考えすぎだろう…。 一方、男は詰所の小窓に手を突っ込んでいた。