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深遠

沈んでいく。

深く、深く。どこまでも。

微かに見えていた光も、暫く経つと最早何も照らさなくなった。

ただ確かなことは、口から出た泡が向かう先に明日があること。

ならばそちらに向かわなければ。
なのにどうして、後ろ髪がひかれた。

行くべき未来が確かにそこにあるはずなのに。
向かおうとすれば、何かが足を掴んで離さない。

気がついた時には泡は消えていた。

残されたのは、ただ暗闇と静寂のみ。
それらは思考を包み込み、体を蝕んでいく。

このまま陽の光も見ぬまま、
忘れ去られていくのだろうか。

だんだんと力が入らなくなってきた。

もしかしたら光が届いていないのではなく、
泡が消えたのでもなく。
意識が薄れているだけなのかもしれない。

もう目を開くことも叶わない。
沈んで行った先にも明日はあるだろうか。

「あの公園で見た夕焼けをもう一度見たかった。」

叶わぬであろう願いが口から流れ、
そこで全てが途切れた。

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