歩んだ跡が道になる。


わたしは立ち止まった。前方が遮られたから。

このちびオヤジが立ち竦んでいるせいで、俺たちは動けない。

目が合った。あいつ、きっとあたしのところにきて、声をかけてくる。
うざ。

「邪魔だよ、オッサン!」俺は、ちびオヤジの背

に風を感じ、わたしは動いた。

あー、やっぱあいつ、こっちくるー、ちょーやだー。

れ? 俺はアスファルトの上に寝ていた。

「ねえキミ、映画に興味あるかな? すげえお得な話があんだけど」

げ、なにこれー、ママが昔、引っ掛かってたやつじゃん。


俺の周囲をたくさんの足が過ぎていく。
俺はこのまま視界いっぱいの青い青い空を見ていて、いいのか。いいのか?


「大丈夫かね」。わたしは若者をのぞき込んで訊いた。

「うっせーよ」と俺は言った。頭上で誰かの電話が鳴った。

あ、お世話になってますぅ。はいはい、お見積もりの件ですねー

                         終

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