肉切り包丁切る斬るKILL

キャッチコピー

仮想地球歴1945年日本は悪魔に占領された。
肉切り包丁で切る、斬る、KILL! 戦後日本悪魔撲滅譚!

あらすじ

 1945年夏、日本上空を飛んでいた原子爆弾を搭載したアメリカ爆撃機エノラ・ゲイが悪魔によって撃墜され、日本は悪魔たちに支配され、周辺地域にも影響を及ぼしていた。
 スラムの肉屋の少年紫月(しづき)は生まれながらの驚異的な身体能力を生かし巨大な肉切り包丁で悪魔を狩り、その肉を売っていたが、街を追放され、外国人の少女アイリスと共に異界につながる門のある街、パノラマ街へと向かう。都市伝説扱いだったこの街でアイリスがドイツ軍のスパイだったこと、紫月が悪魔の血を引いていることなどが明かされていく。悪魔と天使の最終決戦の戦場として選ばれた日本を救い、平和な世を取り戻すため、紫月は戦いに身を投じることになる。

1話 

 広島に向かう爆撃機エノラ・ゲイが突如撃墜された半年後、悪魔によって日本は隅々まで占拠され、今やその周辺地域にも手を伸ばしつつあった。
 悪魔たちの本拠地である東京、比較的安全に過ごせる新市街の外にある、昼日中のスラム街で、主人公・紫月は手にした巨大な肉切り包丁で襲い掛かる悪魔を切り殺す。手早く悪魔を解体し、実家でもある精肉店の軒先で血抜きをする彼を近所の人々は侮蔑の込もった視線を向ける。紫月は病床の母に声をかけ、闇市に向かう。竹槍に突き刺した悪魔の死骸を中心に掲げて開催される闇市で、紫月は熊肉と称して悪魔肉を売る。物好きな金満家や怪しげな漢方屋がそれを買う際、紫月のような被差別民たちが作った街のことを語る。そのあとに来た外国人の少女アイリスが紫月に向けられる差別的な視線に気づき不快じゃないのかと問う。紫月は肩身の狭さを感じるが母を一人にはできないと答える。
 翌日朝早くから悪魔の肉を売りに行った紫月はその稼ぎで母親に髪飾りを買って帰るが、紫月は母が悪魔たちに連れ去られるのを目撃し、それを追いかける。
 悪魔殺しで悪魔喰らいの紫月への報復として、悪魔らは新市街のど真ん中の広場の時計塔に紫月の母を吊るし上げ、彼女に悪魔の因子を植え付け彼女を悪魔に転化させる。紫月は驚異的な身体能力で空飛ぶ悪魔たちを皆殺しにする。新市街は、人間であるにもかかわらず悪魔相手に優位に立ち回る被差別民の少年が起こした事態にパニックに。紫月は母を解放して悪魔の因子を取り除くが、転化が止まらない。そこに昨日の闇市で会った少女アイリスが現れ、殺す以外に転化を止めることはできないと告げる。殺すことだけが悪魔に転化した者を救うたった一つの方法だ、と言うアイリスに反発を覚える紫月だったが、アイリスに同意した母の懇願で、紫月は母に髪飾りを飾り泣きながら肉切り包丁を向ける。アイリスは震える紫月の手を支えて「悪魔に転化した人を殺す苦しみは分かる」と告げた。
 街外れの静かな所に母を弔った二人の元に悪魔が訪れ、紫月を危険視し彼に呪いをかける。致死の呪いを解く方法を悪魔から聞き出そうとするが、スラム街から炎が上がっているのが見え、紫月はアイリスと共にそちらへ向かう。スラム街の人々は紫月への報復で悪魔が火を放ったと、彼をなぶり殺そうとする。そこにあの漢方屋が現れ紫月たちを助け出して言う。「行きましょうパノラマ街へ!」


2話以降 

 パノラマ街に本拠地を持つ漢方屋の案内で被差別民の集まってできたパノラマ街を目指す紫月とアイリス。異界につながる門があるという、誰も見たことが無いというその都市伝説じみた街であれば、紫月の呪いを解くこともできるだろうと望みを抱いてのことだった。アイリスもまた、悪魔絡みで苦しむ兄弟姉妹を助ける方法を探すために紫月に同行する。
東京から長野方面にパノラマ街を探して悪魔を狩りながら旅をする中で、紫月とアイリスは互いに絆を深めていく。アイリスは悪魔と戦うすべは悪魔を食べて得たと語る。
 到着したパノラマ街は最奥に巨大な異界に通じる門を擁し、そこかしこに和風の高楼がそびえる山間の街であった。街の中心の高楼に大悪魔アスタロトの死体が突き刺すことで有象無象の悪魔たちから街を守っている。(悪魔に対して、あの大悪魔すら倒す力のある者たちが住んでいるぞ!という警告の意味を持つ)
 パノラマ街の長・星羅(せいら)の元まで連れていかれた紫月とアイリスは、この街が異界に通じる門から現れた大悪魔アスタロトら悪魔の血を継ぐ者たちによって出来たことなどを知る。この悪魔の血を継ぐ者たちは姿かたち、身体能力などが普通の人間とは違うために恐れられ、それが転じてこの国の被差別階級となった。紫月やその母もまたその一人である。パノラマ街は街の最奥にある異界につながる扉から発せられる魔力の影響で通常の人間の目には映らないが、悪魔の血を継ぎ悪魔の呪いを受けた紫月はそれを見ることができた。異界の門を開けば悪魔たちが元の世界に帰ることを知り、紫月は今の日本の現状を知りながらなぜそれを使わないのかと星羅を問い詰めるが、彼は「自分たちを差別する者を助けたくはない」と言う。
 紫月はひとまず悪魔の呪いを解くことになるが、解除に時間がかかるため、アイリスと共にパノラマ街に逗留する。アイリスもパノラマ街の大図書館での調査を開始するが、転化と同じく悪魔を取り込んで心身に傷を負った者は元に戻らないと知りアイリスは焦りを滲ませる。パノラマ街の祭りの日、紫月と一緒に祭りを見て回る約束をしていた彼女だったが、花火に紛れるように信号弾を打ち上げてそのまま失踪する。パノラマ街の長である星羅はこの信号弾を不審に思い、腕の立つ者に街の周囲を探索させ、彼女を捕まえる。
 アイリスは自分がドイツ軍の特務機関の一員で、既に連合国に敗北した母国が戦後処理でイニシアチブを取るために極東に送られたと語る。日本にある異界の門を見つけ出し、その位置を味方に知らせて門とパノラマ街を制圧、門の術式を用いて、連合国が頭を悩ませている日本にはびこる悪魔たちを門を通じて異界に帰す、その母国の作戦のために送り出されたのがアイリスである。紫月に近づいたのも、警戒されずにパノラマ街に入るためだった。
悪ぶって語るアイリスに、紫月は兄弟姉妹を助けたい気持ちは本気だったはずだと言う。アイリスは身体・精神に傷を負って再起不能となった兄弟姉妹をナチスのホロコースト送りから除外させるかわりに、生きた悪魔を食べてその力を得た自身の悪魔殺しの力をドイツ軍に売り込んでいた。
 しかしアイリスとドイツ軍との約束は果たされておらず、既に兄弟姉妹が死んでいることを知ると、アイリスは罪滅ぼしも兼ねてパノラマ街の住人たちと共に街を占拠しようとやって来るドイツの歩兵たちと、それに便乗する日本の敗戦を受け入れられない軍人たちを撃退する。パノラマ街の長である星羅は襲撃者を皆殺しにするように最初は指示していたが「憎しみや侮蔑の感情に目が曇れば、自分たちを差別して苦しめた者たちと同じになってしまう」という紫月の言葉に星羅は動揺する。さらに、アメリカが悪魔の撃滅に原子爆弾を使おうとしているという情報を得て、星羅は逃げ出す者を必要以上に追わないように指示する。さらに、パノラマ街に出入りする行商人たちに、異界に通じる門を管理する街があることを各大都市で声高に吹聴するように頼む。
 戦闘後、アイリスは自分が、悪魔を撃滅し、悪魔に転化した者を殺すことでその魂を解放する、キリスト教会とも切り離された伝統ある祓魔師集団「鉄槌の家」の一員だったことを語る。悪魔と戦えるようになるために生きた悪魔を食らいその力を取り込んで一人前になるが、アイリス以外の兄弟姉妹は失敗し障害を負うことになった。かつて兄弟姉妹と交わした悪魔撃滅と人間を救う誓いを噛みしめ、紫月と共に悪魔と戦う決意を新たにする。
 一方、星羅の対応により、パノラマ街の噂が世間に広まる。これを聞きつけた連合国と日本は担当者を派遣し、パノラマ街の長である星羅を交えて、異界の門を開き悪魔たちを異界に戻すべく交渉を開始する。星羅は門を開く条件として日本政府に悪魔の血を継ぐ者たちへの差別の撤廃と差別的行為への罰則などを、連合国側には将来的に発足する国際機関設立に際してはあらゆる差別を撤廃するための条項や規約を設けることを要求する。うまく進むかに思えたこの会議の場に、日本を支配する悪魔たちの総帥マモンが現れ、復員船に乗っていた兵士たちを悪魔に転化させたことを告げる。悪魔たちは、この人間界で天使たちとの決戦を行う心づもりであり(魔界や天界で決戦を行うと自分たちの住む場所が荒れるので、それを嫌がって間にある人間界を決戦の地に選んだ)、天使たちが人間界に到着するより前に人間界に支配体制を敷き、この地を補給地としつつ人間を悪魔に転化させて戦力増強を行うことが目的だった。
 悪魔に転化した者は殺す以外にない、その事実を受けて、悪魔に支配された日本の治安維持のために緊急措置として全国に設立されていた警察庁対悪魔部隊の多くが舞鶴などの港に向かう。紫月はアイリスと共に近くの港に向かい、戦地にいた父がいることを知りながら復員船ごと沈め、悪魔に転化した者たちを撃滅する。
しかしこれこそがマモンの目論見であった。手薄になった東京を中心とする大都市において大魔術を行い、都市の人々を繭で覆い、彼らを自分たちのための魔力補給用の魔力袋とする。元より悪魔だった者たちと、対悪魔部隊の者たちが押しとどめられなかった悪魔に転化した者がマモンの元に集結し、ついに現れた天使と悪魔の最終決戦が始まる。
 しかしこの状況で、紫月はアイリスが滅魔の力を手に入れた経緯を思い出し、天使を狩りその肉を食らうことで天使を討ち果たす力をも手に入れる。さらに各国の技術者とパノラマ街の悪魔研究者の協力で、悪魔と天使の死骸を武器に組み込んだ対天使・悪魔専用武器を作り出す。これらを駆使して人間たちは一か所に集まった天使を悪魔をパノラマ街方面に追い詰め、星羅によって異界に通じる門の術式が発動し、異界の者たちが元居た世界へと強制的に帰還させられる。
 地上に平和が戻ると、今まで公的な記録が無かっただけで世界には悪魔と天使(ここでの天使はそういう生物であって、各宗教で語られる天使とは異なる)が現れており、これらに適切に対処する必要があると認識される。また国際発足にあたって、全ての国に同じだけの権限が与えられ、差別を廃絶し平和を希求する機関として発足する。その国連に設けられた異界生物対策室の本拠地として日本の旧パノラマ街が指定され、紫月とアイリス、星羅らはその一員として働くことになる。

#週刊少年マガジン原作大賞
#企画書部門


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