「百合文芸」という場、我々にできること

タイトル通り、pixivから応募する第4回百合文芸小説コンテストでpixiv賞というのをいただきました。受賞作品は約20。最終候補に残った作品が44だったので約半分の作品が最終的に賞を取ったことになります。

一番小さな賞ですが、自信が付くというかありがたいことです。pixivから後日発行予定の小冊子に収録していただけるようで、ちょっとそわそわしてしまいます。

 5月半ばに1次審査の結果が出て、最終の結果が出るまでの約1か月間でいろいろなことを考えました。

 例えば株式会社pixivでのハラスメント問題のこと。はっきり言って、今回の百合文芸4はこの問題でケチが付いたという感想を言う抱かざるを得ない。
 この問題、今年になって表に出てきた感がありますが、もとをただせば2018年から続いたいたことだったようで、それがこれまでの約4年間ろくに改善されず今になってようやく会社側からきちんと声明が出たらしい。
 今回の件に関して、pixiv社からは2度の声明が出ました。1度目は具体性が無くとりあえず謝罪するという雰囲気の、本気で改善をする気があるのか分からない文章でした。2度目は1度目よりもかなりマシでしたが、相変わらず十分な対応がされそう、と思うことはできませんでした。
 pixiv社には強く「加害を起こさせないシステム」と「起こった場合の被害者のフォロー体制(そして第3者的な窓口へのアクセスを可能にしておく)」「加害者への適切かつ厳重な対処」この3つを要求し、今後このような事態が発生しないことを強く望みます。
 pixivというサイトには多くの作品が集います。万人受けしやすい作品からかなり尖ったもの、現実で行えば即警察沙汰になるような内容、ハラスメント(あるいはセクハラ)に分類されるようなセリフ、倫理の破綻した行為、そのすべてが「フィクションだから」の一言で存在することが許され、そこに集っている。だからこそ、そんな場を管理する組織には現実の行いに誠実であってほしい。少なくとも今回起きたようなハラスメントをここまで放置し続け適切な対応ができなかった会社(そしてそれによって運営されるサイト)が「百合文芸」を提案し作品を募るのはあまりに乱暴だと感じる。「どの口がそれを言うんだ」という感じで、「他人をいじめてる人がいじめ被害者を慰めてる」ようなそんな構図を想像してしまう。「もっと先にやるべきことがあるでしょう」と言いたい。
 pixivに集う作品はフィクションです。フィクションであることを免罪符にどんなひどいことを書いても良い。だからこそそこを管理する者、そして制作する側にも誠実さが求められる。私自身にも。

 人が多くなればなるほどトラブルは増える。それは当然のことです。そして、人間のもつ差別意識をなくすこともできません。残念ながら。こんなことを今大層に書いている自分にも「あんな風にだけはなりたくないな」なんて感情がある。もうそれはどうしようもないことでしょう。ただ、だからと言って放置するわけにもいきません。少しでも改善しようとすることと、諦めて手放すことは全く違います。後者は現状が悪くなることを容認する方向性であり、自分自身が無自覚に加害者になり、あるいはいつか被害者になることを認めることでもある。大事な人がいつか傷つくことを認めることでもある。見込みのない希望に向かうべく努力することは大変苦しく実の無いことだとも思われます。日常は常にせわしなく、目を背けたくなることが世間には山とあります。けれど、それでも現状の改善を目指して努力し続けることで共感してくれる誰かがいるかもしれません。少なくとも何もしなければローマは完成せず、足を動かさねば千里は永遠に千里のままであり続けます。「綺麗ごとだからこそ現実にしたいでしょ」とは大好きな仮面ライダークウガで主人公の五代雄介くんが言っていた言葉です。何度も何度もこの言葉を思い出します
 一人一人にできることはこれまた残念ながらとても小さい。ただ、声を上げることはできます。「これは間違っている」「正しい方向に向かわせるべきだ」と主張することはできます。ただ、第一声を発する人がいれば良いというわけではなくて、これに賛同し一緒に声を上げる二言目を発する人も大事です。第一声を挙げた人を守りサポートする人たちも大事です。シチュエーションによっては専門家のいる公的なサポート機関を紹介することだって十分な協力になります。素人が勝手にアドバイスするよりよほど親切で建設的でしょう。
 自分自身の行いを常に冷静に見ること。親しい人、周りの人たちの行いが過ぎる場合は「それは良くないと思う」ときちんと指摘することだって大事です。

 あまりに道のりは長く険しく、全部忘れたくなる時もある。それでも自分自身がフィクションを楽しみこれからも書き続けるために現実から目を背けるのは不誠実だろう。
 pixivというサイトとの距離感はいまだに悩んでいる。国内でもかなり大きな作品投稿プラットフォームという利便性、なにせ漫画やイラストも見れるというのはかなりおいしい。次に百合文芸が開催される時にはどの会社が共催になるのだろう、そもそも次開催するのなら自分は投稿するのか? 大前提として来年もやるのか? 悩みは尽きないが、ひとまず今後のpixivの動向をきちんとチェックすることは必須だと思っている。


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