古代都市バビロンと騎馬民族の王


キャッチコピー

都市の名はバビロン、神に逆らい繁栄を極める至上の都市。その玉座につく者は誰だ?

あらすじ

 神々と神秘が息づく古の世において、古代都市バビロンは繁栄を極めた至上の都市であり、自然そのものをつかさどる神に逆らう都市であった。
 王を亡くした大城塞都市バビロンの前に陣を敷くイルウェスたちの前に、天上の神々の代行者たちが現れ、都市バビロン破壊の前にイルウェスらを殺そうとする。しかし彼らがバビロン市民に好意的であったことから、騎馬隊はバビロン城塞内に匿われる。結果として、慣習に従いイルウェスは至上の都市バビロンの新しい王になる。最初は新王を嫌っていた都市神バビロンだったが、良き王であろうとするイルウェスを少しずつ理解し、イルウェスもまたバビロンの本質を理解し、共に神々に抗い戦うことになる。

1話

 天が裂け地が割れ海が燃え星が落ちた大災害「神々の戦の日」を1年とする新暦の301年、一度は地上滅び去った文明も再び繁栄の兆しを見せていた。
 そんな中「神々の戦の日」でも破壊されなかった至上の都市、繁栄を極める大城塞都市バビロンの正門前に陣を敷く100騎ほどの騎馬の軍勢があった。それを率いるフェン族の若き王子の名はイルウェス。既に多くの将軍や王たちがこの城塞都市に入城しようとして失敗して帰ったあとの、時期外れの侵略者であった。しかし、侵略者というにはイルウェスらはあまりにのんびりとしていた。イルウェスは叔父王の無理難題でこの街を攻略しに来たわけだが、100騎で城塞を落とすなど不可能である。適当に時間をつぶしてからバビロンの土産を携えて帰れば叔父王も気が済むだろうと、そんな具合であるから、バビロン城塞内の商人たちもイルウェスら相手に商売をし、逆にイルウェスらは時間つぶしに彼らの御用聞きなどをしてやる有様であった。
 そんなある日、都市バビロンの正門前のイルウェスの陣に、ウネグが到着する。ウネグは遊牧騎馬民族フェン族の王族の末席にいる男で、この大都市バビロンを一族の現王に献上しようとしていた。そのためにウネグは都市神を暗殺してでもこの都市を攻略するつもりであった。
 ウネグはイルウェスらの制止を振り切り、城塞都市の正門前で、都市神バビロンをひどく罵り、怒りに駆られた彼女バビロンを陣の前に引きずり出す。しかし女神バビロンはウネグを神として威圧し、失禁させてむしろウネグに恥をかかせる。結局都市神バビロン暗殺は失敗し、イルウェスはウネグに変わって深く謝罪をしてこの場を収める。
 都市神バビロンが城内に戻ったところに、天然自然をつかさどる天上の神々の代行者たちが現れて彼らを攻撃し始める。バビロン商人らは親切にしてくれたイルウェスらを要塞内に匿い、神殿上部からの女神バビロンの魔力砲と併せて騎馬で突撃し、代行者を倒す。
 都市神バビロンはイルウェスらが「バビロン城塞内から」出撃したのを知ると、ため息をつきながら彼らを大城塞都市バビロンの中心にある宮殿兼神殿に招き、戴冠式を執り行う。現在のバビロン王が死んだ際、王に子がおらず外からバビロンを陥落せしめようとする者たちがいた場合、一番最初にバビロンの正面門を開かせた者が新たな王となる、というこの大都市の慣習を、イルウェスは無自覚に満たしていた。


2話から

 図らずともバビロンの新しい王になったイルウェスだったが、彼がフェン族と知ると、各地で都市への略奪・殺戮を行うフェン族の蛮行を理由に、都市神バビロンと一部市民は彼らに警戒を向ける。特にバビロンという都市は一大文化都市でもあるため、市民らは遊牧民のフェン族を「布の屋根(天幕)しか知らない野蛮人」と馬鹿にする。一方、露骨に自分たちを嫌悪するバビロンにイルウェスは反感を抱く。
 しかし、王として善くあろうとするイルウェスら騎馬隊の働きも相まって彼らは少しずつ受け入れられていく。特に騎馬民族として天文や馬の調教、畜産、狩猟技術に詳しいフェン族は学問所に頼りにされたことが大きかった。さらにイルウェスが現在のフェン族の王である叔父の蛮行で死んだ者たちを弔っていることを知ると、都市神バビロンはイルウェスらを受け入れる姿勢を示す。
 イルウェスもまた、都市神として慈悲深く信徒(つまり市民)に加護を与える女神バビロンの姿を見て、二人は互いに態度を軟化させる。さらに都市神バビロンが過去に大都市バビロンを攻略しようとして死んだ者を弔っていることを知ると、大都市バビロンの王イルウェスと都市神バビロンは共に自然そのものである「天上の神々」の使徒を撃滅し、完全な和解に至る。都市の人々は不安を抱きながらも新しい王の治世に希望を見出し、女神バビロンを支えながら、天上の神々に逆らってでもこの都市で生きようと決意を新たにする。
 日々各地からの旅行者、行商人、学者・学生、移住者などがやって来る、繁栄の都市バビロンの治安維持のため、イルウェスは女神バビロン共に野に出ては魔獣を狩り、時に強盗を捕まえ、時に街頭の娼婦たちに声をかけられたりする日々。
 そんなる日、都市バビロンに再びウネグが来訪する。イルウェスからのバビロン攻略完了の知らせが無かったためである。バビロンの都市神と王との会見において、ウネグは、イルウェスがこの大都市を叔父王に明け渡す気がないことを知り、イルウェスへの敵対心を明確にする。実力主義を掲げるフェン族の王にこの大都市を献上することで王位に近づこうと思っていたフェン王族の末席のウネグの目論見は大きく外れることになった。
 ウネグは以前の都市神バビロンの暗殺失敗の際に自分に大恥をかかせたバビロンへの憎しみも相まって、バビロン神殿の一部を破壊する。それによって都市神バビロンの心臓に傷がつく。神殿の一部を破壊した際にウネグは女神バビロンの正体をしり、これを街中に吹聴しようとする。しかし苦悶の喘ぎながらも女神バビロンはウネグのみながらずフェン族をも呪う。また、バビロン市民も自分たちの神を傷つけられたことで、ウネグ、およびイルウェスらフェン族への怒りをあらわにする。
 ウネグは女神による重篤な呪いを受けて異形と化し、都市内で暴れまわる。一方で市民たちはイルウェスらを罵り攻撃するが、騎馬隊は市民には決して手を挙げず、呪いを受けた体でウネグを倒す。イルウェスは一騎打ちで死に絶えようとするウネグが「都市神バビロン、形ある神など大嘘だ。あの女はただの人間の小娘だ」と言い残す。
 何はともあれ、王として民に手を挙げず愚直に敵を倒すイルウェスらの姿に、市民も彼らの献身を思い出し、彼らと共にこの街で生きる意思を固める。そんな信徒たちの言葉に、都市神バビロンもまたイルウェスらを許し、呪いを解く。
 万事が丸く収まったかに見えたが、間髪入れず神々の代行者と、さらにイルウェスの叔父王率いる大騎馬軍団が現れ、都市バビロンへの攻撃を開始する。心臓が傷付いたままこれを撃退しようとする都市神バビロン。そんな彼女を、イルウェスは止めようとする。「俺が戦う、だからあなたは下がっていてくれ。女神バビロンよ、あなたはたしかに神かもしれないが、それでも人間なのだろう? どうして人の身で神に逆らおうとするんだ」
 バビロンは己の正体を知られたことに驚きながらも、静かに語る。自分は300年前の「神々の戦の日」より前の、旧バビロン都市を支配していた王族の末娘であること。大災害で死んだ親兄弟と交わした民を守る誓いのため、天から降ってきた瀕死の神を食らうことで神の力を取り込み、都市神としてこのバビロンを守ることに成功したこと。それが、今のバビロンの名声の礎になったこと。しかし神を食らうという不敬に対して天上の神々が怒り、以来300年間ずっと神の怒りを買いつづけて彼らと戦っていること。
そして、戦場に出ることを止めようとするイルウェスに、バビロンは語る。
 自分は今、人々の信仰と愛着と嫉妬を得て確かに神として機能している。ならば都市神として都市に住まう信徒たる市民たちを守るのが責務である。そして、たとえ元はただの人間の王族の末娘であったとしても、それもそれで王族として臣民を守る義務がある。故に、このバビロンに退くという選択肢は無い。
 王族として都市神として退かない彼女の覚悟を目の当たりにし、それが人間でありながらバビロン王として神の代行者を迎え撃つ自分と同じであることをイルウェスは悟る。覚悟を決めた彼は、都市神バビロンに己の身体の一部を贄として捧げ彼女の心臓の修復をして、市民たちの協力も得ながら都市神と共に戦い、代行者たちとその傀儡となった叔父王を撃退。このことは、現在サイバーパンク都市として知られるネオバビロンの起源となる古代都市の物語として、今も語り継がれている。

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