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「錆喰いビスコ」という愛の物語がめちゃくちゃ面白かったはなし

 ここ数年、新しいコンテンツに触れるのに結構エネルギーがいるというか、「よいしょ」ってしないといけない感じで自分がオタクとも言い切れない謎の生き物になってる感じがあったんだけど、ほんの気まぐれでGYAOで配信されてる先の冬アニメ「錆喰いビスコ」を見てめちゃくちゃ面白い!とテンションが爆上がりした。

 元々作品タイトルは知ってて、ラノベであることまでは知ってたんだけど、どういう世界観かとかどんなキャラが主役なのかは全然知らず今回アニメを通して初めてこの作品に触れたんだけどびっくりするくらい私好みで「ひえ~~~~!!!!」ってなりながら頭を抱えました。

 死すら切り裂けない絆で繋がれた主人公2人組がキノコでパンクする作品です。誰が言ったかマッシュルームパンク! 

 まだ原作は読めていないのだけれど、ひとまずアニメの感想を語りたいと思います。

 まずOPがめちゃくちゃ良い。舞台になるのはどんな世界なのかが現れていてとっても楽しい。空を泳ぐフグやクジラ、人間を2人のせて軽々と移動する巨大なカニが出てきて「なんだなんだ?!」となる。主人公のビスコ&ミロもよく動く! そして巨大なキノコが咲くし、2人で一緒にいるビスコ&ミロがとっても楽しそうであのOPが好きな人はこのアニメ好きになるだろうな……という感じでした。私がそれです。ポストアポカリプスものが好きなのもこの作品が自分に合っていた理由かな、と思います。

 キャラクターも魅力的で、生命力というか活力にあふれていて、花火がパッと咲くような勢いがあって、それがアニメーションで勢い良く破裂するように咲くキノコにリンクするようで眩しいものでも見ているような気持ちになりました。主役の2人が最高なのは言うまでも無いんだけど、ジャビさんやパウーやチロル、黒革もそれぞれの魅力があったな。強い老人はたぶんオタクはみんな好きだと思う。(主語がでかい)師匠は声の演技も相まってお茶目で可愛いけどめちゃくちゃに強い最高の老人キャラでめちゃ好きです。病人でありながら体も心も死ぬほど強いパウーも最高でビスコにキスして「報酬は前払い」というのも良かったな……。姉弟間の絆が強いしお互いのことをよく分かってる描写がちょくちょく入るのも嬉しかった……。チロルももうめっちゃ可愛くて、3人でアクタガワの上に乗ってぎゅうぎゅうになって言いあいしてたらアクタガワに放り投げられるシーン可愛くて大好きでした……。黒革も悪役なんだけど嫌いになれないというか、小者っぽさがありつつも命を意思でつなぎとめるような執念が見事で「そういうのもあるのか」ってなって良い悪役だったなぁと思います。声の演技が黒革の魅力を引き出しているようで、気だるげでどこかふざけたような、けれどたっぷり執着の籠った声がすさまじかった。9話を中心に、ビスコとメンチ切り合うシーンはどれも好きです。

 もうこれは私なんかが言うまでも無いんだけど、いくつかリフレインしたりオーバーラップするシーンがあって、それが最後の最後まで響いていて、ミロとビスコそれぞれ、あるいは2人の変化、関係性を沢山見せてもらって嬉しかったです。7話でパウーを人質に取られて1人で忌浜に戻ろうとビスコを眠らせるミロ、9話で黒革と決着を付けようとミロを洞窟に寝かせて1人で旅立つビスコ。そして一人でもとっても強いんだけど一緒の時の方がもっともっと強いなと思わせてくれる最終話。6話の地下鉄で2人で弓矢を構えて短い言葉で会話するシーンは最終話の2人につながるし、2人が本当にキノコ守りのバディになったんだなぁと改めて感じてしみじみした。9話でミロがビスコ自身に頼まれ彼に弓を向け射抜くシーンは、同じ「ビスコを射る」という結果でも8話で黒革に操られてミロがそうした時とは2人とも正反対の心持ちであることに見ていてハッとなった。死ぬことは絶対的な喪失にはなりえないと魂と弓を相棒に託して笑えと言うビスコが、師匠との別れ際に笑顔を見せたのはどんな気持ちだったのかを思って切ないような気持ちになった。

 忘れ難いのは、9話で錆矢を撃たれたビスコが洞窟でミロを置いて黒革の元に向かう際にアクタガワに語った言葉。友達ができたんだ、とただの少年のような言葉が出てくるのがなんだか切なくて、でもとても嬉しかった。自分の師である存在がどんな気持ちで自分を育てたのか今なら分かる、という彼。ただ生きて死ぬその命に意味を吹き込んだ相手、自分のすべてを注ぎ守り育てる、そこにあるのは確かに愛情と言う以外ないだろうなと涙が出るような気持ちで見ていた。一方でビスコの魂を宿したミロがテツジンを迎え撃つ際に、今ならビスコがどんな気持ちで戦っていたのか分かる、というシーン。師と言うべき存在から確かに受け継がれたものがあって、それがある限り師は真の死を迎えることは無いのだな、とアニメを見ながら私は勝手に納得して、ED曲がミロのソロバージョンであることにおいおい泣いた。

 錆の海に沈むビスコを見送り「君を愛してる」と言うミロの相棒への愛情はもう言うまでも無いんだけど、これからずっと一緒だし死ぬ時も一緒だと言って一つしかない錆喰いアンプルを相棒に打つのも愛だよな……。最終話で相棒の膝に頭を預けてその心音を聞くミロと、それを拒みもしないし照れたりつっけんどんな態度すら取らずにミロの言葉を受けて黙って背中に手を回すビスコの関係があんまりにも強くて愛としか言えんのよな……。なんというか、自分が相手に持ってる愛に自覚的であるのがすごくうれしかったです。それをごまかしもせず態度にしたり言葉にするのがあまりに輝かしくて……嬉しかった……。地下鉄駅でチロルにどうしてそんなに他人に命をかけたりできるのかと問われて愛情があって不器用だから、と答えるシーンは本当にニクいくらいに大好き。(声の演技も本当にすごかったです……)ここの問答、問いの対象になっているのはミロなのかビスコなのか2人共なのか、他人というのはチロルのことなのかそれとも不特定多数の事なのかあるいはミロやビスコのことなのか、微妙にぼかされている感じがあって、それがまたとっても良かった。どうとらえても成立するし、「友達がどこで何してるかって、いつも想ってる!」その気持ちはやっぱり愛だよなと思う。

 愛というのは自分に向けられていなくてもそこにあるだけでなんだか自分まで嬉しくなるね、とは最近Twitterでどなたかがおっしゃっていたことでした。最近は本当にそうだなと思っていて、他のコンテンツ(スマホゲーム「メギド72」)で「人間が愛と呼ぶ感情」について触れたり考えたりしたこともあって自分が抱いている愛(親愛であったり敬愛であったり愛執であったり)に自覚的であることについて考えることが増えていた矢先にアニメ「錆喰いビスコ」に触れたのでなんだか余計に嬉しかったです。

 錆矢を背中に沢山受けて倒れたミロに、ビスコが子供みたいな泣きそうな顔(その後本当に涙を流すんだけど)をして年相応の少年の声で心配し声をかけるシーンが忘れ難い。それから、パウーが人質に取られた後に豚肉を煮ているミロの表情はほんとうにゾッとするくらいすさまじく恐ろしくて、こぶしを握る左手が血の気が失せているような感じもあって見ていてゾワゾワしました。アニメの楽しさだな~と思ったシーン。

 子供たちの砦の回も好きなんだけど、一方であのポストアポカリプスの世界で現実から離れて生きる大人が描かれているのも好きでした。重苦しい現実から逃げたくなる人もいるだろうし……。忌浜の街の人たちがなんとか生活している描写も良かったな……。

 アニメ「錆喰いビスコ」、本当に面白くて原作を読みたい!と思った作品でした。キャラも魅力的で生の熱さにあふれていて、OPもEDも超絶かっこよくて偶然この作品に出会えたのが幸運だったなぁとしみじみ思っています。2期も見たいのでお願いします!

 


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