ロサンゼルス生活68日目

68日目であった。5月は終わり6月が来る。

家の前で蜂がお亡くなりになっていた。私が越してくる前、家のドアの前に大きな蜂の巣があったらしい。それは引っ越しの時に撤去してくれたらしいのだが、今でも時々お亡くなりになっている蜂の姿を見かける。

蜂には確か帰巣本能があったと思う。家に帰ってきたら家がなくなっていたという状態だろうか。命からがら戦地から帰ってきた日本兵のような感じなのかもしれない。絶望から希望、そしてまた絶望へ。お亡くなりになっている姿を見かけると、少しだけセンチメンタルな気持ちになる。

映画。昨日は『羊たちの沈黙』。過去に何度か観ている。いわずと知れた名作。アカデミー賞主要5部門の受賞作である。主要5部門を受賞した作品は過去にあと2つ。『或る夜の出来事』と『カッコーの巣の上で』。

前者は未見。後者については最近見直した。ベトナム戦争の時代に作られた作品。体制からの自由というテーマがありありと描かれている。とても好きな作品である。

さて『羊たちの沈黙』である。文句なしに面白い作品。しかしその面白さはどこからくるのだろう。少し考えてみた。

1.キャラクター

まずはアンソニー・ホプキンス演じるレクター博士の圧倒的なキャラクターだろう。超ド級のインテリであり、超ド級のクレイジー。恐ろしすぎるマジで。加えて、ジョディー・フォスター演じるクラリスのキャラクター。正義感の強い女性刑事。しかし過去にトラウマを抱えている。このキャラクターの秀逸さがまずある。

2.ミステリー要素

バッファロー・ビルという連続殺人犯を追う、というミステリーが物語の主軸に据えられている。ビルは一体どういう人物で、どういう理由でこのような連続殺人を犯すのか、そのwhy、その原因究明的要素が物語の面白さのひとつになっていると思う。

3.掛け合い

牢の中にいるレクターとガラス越しに話すクラリス。ド級の犯罪者と真っ直ぐな女性刑事。このぶつかり合い。何度かあるこの二人の会話が緊張感に満ちており、そして知的でもあり面白い。またクラリスが徐々にレクターに惹かれていくようにも見える。幼い頃に失った父を失い、ずっと求めていた父性のようなものをレクターに見出していくようにも見える。この映画を観終わったあとに、一番印象に残るシーンはここではないだろうか。

4.レクターの脱出劇

この物語で起きる事件はひとつではない。バッファロー・ビルが起こしている連続殺人に加えて、レクターが起こす脱出劇もある。レクターという人物はひとつの事件を解決するヒントを与えておきながら、同時に自分は牢からの脱出事件を起こしている。この物語はほとんど全部レクターの頭で描かれた通りに進んでいるともいえる。

ざっと考えてみるとこのような感じだろうか。他にもジェンダー的な問題なども物語の中には散りばめられているらしいが、それは物語の面白さとはまた違った味わい方のようにも感じる。映画の見方としてそれはあると思う。しかしそれはこの物語の第一義ではないと思う。作り手はそこを第一に見て欲しいわけではないと思う。そう私には感じられる。

きっと私は続編の『ハンニバル』も観てしまうことだと思う。またレクター博士に会いたい。

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