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対人認知における顔のポジティビティ・バイアス

vol.0008
■下記の論文から
『対人認知における顔のポジティビティ・バイアス』川 西 千 弘. 京都光華女子大学 実験社会心理学研究 51 (1), 1-10, 2011 日本グループ・ダイナミックス学会
https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001204318529408

▶︎沙録より
本研究の目的は,好ましい顔と好ましくない顔の認知的表象における構造的特性の相違を探ることであった。その結果,好ましい顔の人物がポジティブ行動をする可能性のほうが,好ましくない顔の人物がネガティブ行動をする可能性より高いというポジティビティ・バイアスが確認された。また,多次元尺度法の分析から,好ましい顔におけるポジティブ行動情報間のほうが好ましくない顔におけるネガティブ情報間より緊密に体制化されていることが示された。

▶︎問題
本研究の作業仮設として、好ましい顔では顔と個々のポジティブ情報の関連強度が強く、精緻かつ一貫性の高い緊密な認知的表彰体系をなすのに対し、好ましくない顔では顔と個々のネガティブ城ホの関連強度が弱く、かつポジティブ情報や中立情報とも複雑に絡み合った拡散した認知的表層体系を形成していると推測した。

▶︎考察
本研究の目的は、顔のポジティブ・バイアスを生じさせる要因として、好ましい顔と好ましくない顔の認知的表象における構造的特性に着目し、その相違を探ることであった。作業仮設においては部分的に支持されたと言えるだろう。
本研究にはさまざまな課題が残されているものの、顔のスキーマ的機能において好ましい顔の影響がより大きいことの背景として、好ましい顔の認知的表象はより評価的に均質かつ高度に体制化された構造を持つが、好ましくない顔では必ずしもそうではないことを示した。
いわゆる美人ステレオタイプは、顔によってどのような印象が形成されるかという結果に関するものであるが、本研究は上述したように、顔が中核となって、言語情報を体制化する認知的表彰を形成し、好ましい顔と好ましくない顔では、その表彰構造上に非対称性が存在するという認知的表彰における構造的特性の相違に着目したものであり、換言すれば、なぜそのような人物像が作られるのかというプロセスに関わる部分を解明しようとしたと言えるだろう。
顔は印象形成において、インパクトの大きい対人情報であるが、上述した本研究の結果は、人が他者との関係を築く上で、より適切かつ柔軟に顔という情報を活用している要素が示されたといえよう。

今日の私の面白Point:好ましい顔とそうでない顔の実験の仕方
好ましい顔の場合はポジティブ・バイアスが働きやすく、そうでない顔の場合はネガティブ・バイアスがポジティブ・バイアスより働かないといった結果も興味があるが、何より「好ましい顔とそうでない顔」といった主観的なものをどう扱い、どう実験するのかが面白かった。
最初に「好ましい顔とそうでない顔」を個々に選んでもらってからのスタートには深く頷いた。


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