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インターネット広告事業比較

ファイナンスラボにおいて2回目の企業分析となります。
前回の分析では大手町さんから鋭いご指摘があり、自分の力不足を再確認できました。前回の反省を活かし今回はこの記事において伝えたいメッセージをより明確にすることを意識しました。
今回はインターネット広告事業を比較し、利益率の差を生み出している理由を大きく3つの視点から分析しました。
よろしくお願いします!


日本の広告市場全体の動向

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日本全体の広告市場の動向として、テレビや新聞、ラジオのような既存の媒体からインターネットへ移行が進んでいることがあげられる。この傾向は今後も続くと見られており、インターネット広告事業の市場規模が拡大していくことがわかる。

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インターネット広告は変化の早い分野であることがわかる。インターネット広告の運用手法に関しては運用型広告が大きなシェアを占めており、増加傾向にある。運用型広告とは「ネットユーザーの広告反応目標に達成するように、リアルタイムに入札額やクリエイティブ、ターゲット等を変更・改善しながら運用し続けていく広告」である。従来の特定の枠を買い、そこで広告を打つという手法ではなく、より柔軟な対応がとれるとも言える。
広告の種類では動画広告のシェアが増えてきている。


両者の会社概要(サイバーエージェント・デジタルHD)

◎サイバーエージェント

ネット広告代理業が祖業。スマホサービス、ゲーム展開。ネットテレビ局アベマ育成中。

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サイバーエージェントの事業は大きく3つに分けられる。

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ABEMAは次世代のTVを目指し、独自コンテンツから幅広いコンテンツまで広く扱っている。先行投資がかさみ、長年赤字事業となっているが、マネタイズ手段が増えてきたこともあり、損失幅は縮小傾向にある。

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利益率が高く例年安定した収益を出せている。

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ゲーム事業はヒット商品を生み出せるかがポイントとなる。最近はウマ娘などのヒット作品の影響で大幅増収。


◎デジタルHD

ネット広告専業代理店。企業のデジタル化支援事業を育成中。

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最近のデジタルHDはセグメントを3つに分けている。

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デジタルシフト事業ではITに関連する変化をサポートする事業として力を入れている。DXマーケが大半を占めている。

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インターネット広告事業は利益率改善を目標にし、最近では3%代となっている。

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最後に金融投資事業だが、デジタルHDはこの投資事業で多くのリターンを確保いる。


クイズ

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今回はインターネット広告事業の比較です。
両者とも同じインターネット広告事業を展開していますが、その利益率には差があります。その要因を考えてみてください。

解説

自分なりにこの理由を3つのポイントから解説していきます。

①インタネット広告事業の立ち位置の違い
②シェアの差
③キャッシュの流れ


理由1:インタネット広告事業の立ち位置の違い

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1つ目の理由は両者のインターネット広告事業の位置づけの違いがあると考えました。
サイバーエージェントはインターネット広告事業をメイン事業の一つとして、それ単体で利益の最大化を目的に活動しています。もちろんそれに注ぎ込むリソースも多いです。
一方のデジタルHDのインターネット広告事業は企業のデジタルシフトを促進するツールの一つとして提供しています。実際に過去の有価証券報告書ではデジタルHDのセグメントはマーケティング事業とシナジー事業の2つしかなく、最近になりインターネット広告事業を独立させた経緯があります。今後はデジタルHDもインターネット広告事業の利益率改善に向けて力をいれていくと思いますが、サイバーエージェントほどヒト・モノ・カネ・情報をいきなり注ぎ込むことは難しいでしょう。


理由2:シェアの差

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理由の2つ目は業界に占めるシェアの差です。その業界のシェアを獲得していることで多くのメリットがあります。例えば獲得できるデータの量が多いことです。上述したように、最近のインターネット広告業界は運用型広告が多く、ユーザーの動向に合わせた広告を打つことが広告効果を高めます。
多くのデータを入手できるサイバーエージェントは効率よく広告がうて、その効果を評価されより多くの企業がサイバーエージェントに広告運用を頼むという好循環が生まれています。

一方のデジタルHDもインターネット業界で2位のシェアを獲得していますがそこには約3倍の差があります。デジタルHDでは企業のデジタル移行を包括的にサポートしています。その結果、インターネット広告技術単体で非常に高い評価をされる必要性が薄くなります。


理由3:キャッシュの流れ

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インターネット広告事業における付加価値の違いはキャッシュの流れからも読み解けると考えました。


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サイバーエージェントは多くの現金預金を所有しています。借入金なども少なく内部留保で投資を行っていると考えられます。

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一方のデジタルHDは多額の有価証券を保有しています。事業の一つとして投資業があり、全体の資産の約3割を占めます。

サイバーエージェントとデジタルHDでは投資の源泉となるキャッシュの出どころが違うことがわかりました。デジタルHDも今後インターネット広告事業での利益率を高めてそこから安定したキャッシュの獲得に力を入れると書かれていますが、豊富な手元流動性があったからこそ今まで低い利益率でやりくりができたと考えられます。


まとめ

今回分析をしている中でほしい情報を探すことの難しさを感じました。事業に対する投資額の比較などもしたいと思いましたが、直接的にその数字を見つけられませんでした。有価証券報告書に書かれている内容に慣れることでそこで得られる情報から分析できてより短時間で完成させられるとも感じました。分析に慣れるためにも定期的にアウトプットをする機会を設けようと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

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