finalvent読書会 『嵐が丘』を読み始める前に知っておきたい3つのこと
明日、5/29日からfinalvent読書会 で、『嵐が丘』を読み始めますが、その前に知っておきたい3つのことをまとめます。
① 主要登場人と家系図
『嵐が丘』の主人公は、愛し合う2人です。ヒースクリフという孤児とキャサリンというじゃじゃ馬娘です。ヒースクリフは成長して悪鬼のような男となり、キャサリンは強烈な個性の女性となります。
『嵐が丘』では、2つの家とその家に所属する家系図を理解しておく必要があります。ヒースクリフはアーンショウ家に引き取られます。キャサリンはアーンショウ家の娘です。アーンショウ家の家屋の名前が「嵐が丘」です。地名としての丘ではありません。
『嵐が丘』の物語は、2人の恋をめぐって、2つの家が関わります。もう1つの家がリントン家です。この家屋の名前が「鶫が辻」です。光文社訳では「スラッシュクロス屋敷」とされています。地名としての辻(交差点)ではありません。
アーンショウ家とリントン家の家系図は、不自然なほど同型になっています。その分、覚えやすいでしょう。また、主人公キャサリンの娘も同じくキャサリンという名前です。このあたりも意図的にそうなっていると理解してよいでしょう。
これで9人ですが、それぞれの家の先代が4人います。
あと3人覚えておく必要があります。
ジョウゼフ アーンショウ家の下男。信心めいたクソ野郎。
ロックウッド 物語の聞き手。
エレン・ディーン(ネリー) 物語の語り手。アーンショウ家の家政婦
② 物語の構造
『嵐が丘』という物語は、アーンショウ家の家政婦であるエレン・ディーン、またの名をネリーが、この地の新参者であるロックウッドに物語るという構造になっている。
そして、物語の前提は、このロックウッドの視点で描かれる。
そして、これとは別にエミリー・ブロンテという作者が存在する。
つまり、この物語は、三人称小説でもなければ、一人称小説でもない。ロックウッドという男の手記のなかで、ネリーという女が語っているという構造になっている。そして作者による客観的な視点は存在していない。
このことが意味することは、『嵐が丘』という物語は、ネリーのバイアスとロックウッドのバイアスを経ていていることである。
なぜこんなことをしたのか。単純にネリーが作者(私)に語る、でもよいのではないか?という問題意識をもたないとこの小説の真価がわからない。結論を言えば、描かれたヒースクリフもキャサリンもネリーによる嘘である可能性が高い。別の言い方をすれば、何が真実なのか、ネリーを疑いながら読まなければならない。
③ 4つの時間層
『嵐が丘』という物語は、ネリーがロックウッドに物語る今と、物語の過去という2つの時間構造がある。
これに加えて、その今が、更新されたもう1つの一年後の今があり、そこでもその今と一年間の過去の物語がある。
都合、4つの時間構造を持っている。
なぜ『嵐が丘』が、このような2つの今という構造を持っているかは、2人のキャサリンに関連しているだろう。永遠なるものが循環していると言ってよいだろう。
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