『ゴリオ爺さん』のオリジナル・タイトルは ”Le Père Goriot” であり、Père は「父」という意味なので、そうであれば、このタイトルは『ゴリオ父さん』と翻訳できないでもないということがわかる。そしてその含みは、第一章の次の部分から明らかになっている。レストー夫人(ゴリオの長女)の家ラスティニャック(ウジェーヌ)が切り出す会話から。なお、人物紹介を引用に補足する。
ここでは、pèreが「老」と「父」とに訳し分けられている。手元のLe Dicoを引くと、5番目の意味に、「爺さん」とあり、「年配の人の名前につける」として Le père Louisの例が載っている。なので、『ゴリオ爺さん』という訳は意訳ではない。ちなみに、le père Noëlはサンタクロースである。
文法的に重要なのは、Le Père Goriotの定冠詞の用法で、Bartleby, the Scrivenerと類似の構文で英語的にすれば、Goriot, Le Père(ゴリオその爺さん)であろうか。