finalvent読書会 『幼年期の終わり』 第3部に入ります。

finalvent読書会 『幼年期の終わり』は、8/14日から第3部に入ります。この作品は3部の短編小説という趣もあって、その点では、読みやすい小説でです。まだ未読だった、というは今から読み始めてみてください。AI化が進む近未来の象を描くのにも参考になる点は多いかと思いますし。

第2部「黄金時代」あらすじ

第2部「黄金時代」はその部の表題のように、人類がオーバーロードの監督下におかれて50年が経過し、国家の分断もなく、彼らのおかげで世界平和と繁栄の「黄金時代」を迎えている。

この第2部の冒頭、つまり、5章では、ようやくオーバーロードが人類にその姿を現す。その姿は、硬い皮でできた翼をもち、頭部には角、そして矢印の形をした尾を持っていた。つまり、人類が悪魔として理解する象そのものであった。それを見て、人類は、「ほんの一瞬、原始的な恐怖に襲われるが」、50年の繁栄・平和の日々はすぐにその恐怖感を打ち消した。

黄金期の意味はアイロニカルである。人々は高度な技術の導入によって、労働の必要がなくなった。犯罪もほぼなくなった。それで知的退化が訪れたわけでもない。人類の教育水準は上がり、人々は生涯教育に取り組むようになった。だが、人類による基礎科学の研究は終了した。高度なオーバーロードの科学があるなかで無意味となったからだ。芸術も観戦スポーツもまた無意味となった。キリスト教は消えて、仏教だけが残った。性のあり方も変わった。避妊は簡易になり、また生まれた子の親の特定も簡易に確実となった。

だが、この状況に疑問をもつ登場人物がいる。オーバーロードがいなければもっと宇宙を探求できた、冒険も可能だった、と不満に思う青年ロドリクスである。彼は、オーバーロードの宇宙船に密航し、その母星へ向かった。

人類にとっては、すべてが順調に単調に推移するかに見えたが、「黄金時代」が終わり、重大な人類意識の変化、「トータル・ブレイクスルー」が始まりつつあった。

第2部の面白さ

第2部は、あらすじでは省略しましたが、普通に登場人物たちの日常的なドラマの描写も細やかで興味深いです。

他方、この小説で描かれている人類繁栄の未来は、現在の世界の状況と似ている部分も似ていない部分があり、私の印象を言えば、現在のリアルな人類がこの「黄金時代」に到達することはないだろうと思えます。なんというか、人類の幼年期は終わらないのでないでしょうかね。

さて、なぜ、オーバーロードは悪魔なのか、カレランの嘆きは何なのか。第3部に続きます。

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