『トニオ・クレーゲル』におけるソナタ形式
一通り話を読み終えてから、『トニオ・クレーゲル』におけるソナタ形式を扱うかとも思っていたが、第1章の時点で知っておいたほうがよいかもしれないと思い直したので、触れておきたい。
光文社訳の解説でも簡素に言及があるが、『トニオ・クレーゲル』は音楽のソナタ形式で書かれているというのが通説であり、正しいだろう。
ソナタ形式というのは、次のような音楽形式である。
私(finalvent)は次のように読む。
提示部 少年時代
第1章 ハンス・ハンゼンと同性愛的葛藤
第2章 インゲボルク・ホルムと失態としての舞踏会
展開部 青年期の葛藤
第3章 イタリア的なるもの(肉欲)
第4章 リザベータ・イヴァノブナ(ロシア的なるもの)
第5章 つなぎ部
再現部 主題の再現(デンマークへ)
第6章 少年時代と現在
第7章 少年時代の再認識と海
第8章 ハンスとイゲンボルクの幻視
終奏 第9部
『トニオ・クレーゲル』と音楽性では、ライトモチーフも話題になる。ライトモチーフはワーグナーの楽劇で有名な音楽による場面や対象の短い音楽的テーマである。『トニオ・クレーゲル』ではなかでも、3度繰り替えされる「トニオの心は生きていた」が代表的である。
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