見出し画像

スナック忘れな草~晩夏の夏空・2024クイーンS・アイビスサマーダッシュ~

トップ画像引用:JRAホームページ 壁紙カレンダー


※「晩夏の夏空 再考」以降を追記しています(7/27午前6時22分)
  目次をクリックでジャンプします。

■ パリ五輪開幕

2024年7月24日(水)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-

「いよいよパリオリンピックの開幕だな!」

タコ社長はそう言うと、新しい眞露のボトルを開けた。ピキッという、キャップが開封される小気味いい音が鳴った。

フランスのパリで行われる夏季オリンピック大会は、26日に開会式を迎える。

「8月になると夏の甲子園もありますから、寝不足になりそうですね」

真一郎が生ビールのジョッキを持ちながら言った。すかさず、左隣のギョニ子が補足する。右手にはいつもの魚肉ソーセージがある。

「それだけじゃないわ。暑熱対策っていうのかしら? 今週と来週は新潟競馬に小休止の時間が設けられてるでしょ? 最終レースは18時25分。テレビにスマホにタブレット。総動員で一日中スポーツ三昧よ」

みんながなるほどと頷いた。

日本とフランスの時差は、日本が7時間進んでいる。ということは、日本で開会式が放映されるのは、明けて27日の午前2時半ということになる。午前の競技や午後の早い時間に行われる競技なら、普段の生活リズムでも視聴可能だが、夜の競技をリアルタイムで見るとなると、夜更かしは必須だろう。

「生で見る感動を優先するか・・」

マスターが言った。

「いつもの生活リズムを優先するか。難しいところですね」

「こういう話になると・・・」

麗子ママが言った。

「自分がリアルタイムで見ようが見まいが、選手の結果は変わらないという冷めた人がいるけど、あたしはそうは思わないわ」

みんながうんうんと頷いた。タコ社長が言った。

「それな! 自分がリアルタイムで見て金メダルとかだったら、自分ががんばって起きてたからだと思うし、逆にリアルタイムで見て悪い結果だったら、もしかしたら寝てたほうが結果がよかったのかも・・・なんて思うんだよなあ」

それは競馬も同じですねとマスターが言い、みんなが頷いた。

■ 思い出の名場面

そのとき、パンツ一丁で店内に入ってくる男がいた。くろたんだった。パンツ一丁といってもそれは水泳競技用のもので、頭にはスイミングキャップとゴーグルを装着している。

まるで今プールから上がったかのように、全身が水で濡れているくろたんは、耳の中の水を出すように頭を強く振ったあと、声を絞り出した。

「・・・・・なんも言えねえ・・・・なんも言えねえしか言えねえ!・・・・なんも言えねえしか言いたくねえ!・・・はあ、テレビもねえ、ラジオもねえ!」

「セリフが微妙に違うような気がするんだけど、北島康介ってことかしら?」

ギョニ子が冷静に言った。タコ社長が続く。

「くろたんさん、パンイチが似合うねえ。背が高くで体も締まってる。現役の水泳選手みたいだぜ!」

まんざらでもないくろたんは頬を緩めて、タコ社長の右隣に座った。それを待っていたかのように、マスターが用意した響のロックが目の前に置かれる。くろたんはそれをうまそうにすすると、みんなに言った。

「みなさんの思い出の夏季オリンピックはなんでしょうか?」

真一郎が先陣を切った。

「僕はあの人です・・・ええと、バルセロナオリンピック、マラソンの谷口浩美さん! こけたらパンツが全部脱げて、あわてて履きなおして完走したという・・・」

「シューズな!!」

くろたんがピシャリと突っ込んだ。

「どう転んだらパンツが全部脱げるんだよ!!」

次はギョニ子だった。

「あたしは断然シドニーオリンピックのQちゃんだわ! 30キロあたりで急に、頭にかぶっていたパンツを沿道に投げたでしょ? 真似する市民ランナーが大勢いたわよね?」

「いないわ!!・・・っていうかパンツじゃなくてサングラス!!」

くろたんがうんざりという風に突っ込んだ。

「でね、ラストスパートかけるのかと思いきや、給水所で立ち止まってフルーツを食べたんだよね?」

「やめい!! 斉●由貴のゲス不倫は忘れてやれ!! ・・・っていうかあんたらそのネタ好きだな!!」

くろたんが苦虫を嚙み潰したような顔になった。タコ社長が言った。

「俺のはちょっと古いけど、ソウルオリンピックのレスリング、小林孝至! 上野駅構内の公衆電話の上に、パンツを置き忘れたんだよなあ」

くろたんはもう突っ込まなかった。黙って両目を固く閉じ、腕を組んでいる。マスターが言った。

「無事金メダルは見つかったんですが、どうして駅の構内なんかにパンツを置き忘れたのかと尋ねられた小林孝至が、答えた内容が秀逸でしたね・・・僕の競技はグレコローマンじゃなくてフリースタイルだからってね?」

「嘘をつくな!!」

くろたんが両手でカウンターをバンバンと叩きながら言った。

「フリースタイルだからフリチンもOK・・・んなわけないだろ!!」

その時、いつの間にか着物に着替えていた麗子ママが言った。

「パンイチさん!! 行かないで!」

くろたんの足元にすがりつく。くろたんは麗子ママを足蹴にして背を向けると、顔を少し上げて涙をこらえながら言った。

「ああ、宮さん! 来年の今月今夜のこの月を、僕の涙で曇らせてみせる!!」

意味が分からず首をかしげているギョニ子と真一郎に、タコ社長が説明してあげた。

「ちょっとわかりづれえだろうな・・・パンイチお宮・・・貫一お宮・・・尾崎紅葉の『金色夜叉』だ」

■ 優駿8月号

くろたんはドアのほうに向かって歩き始めた。両頬には一筋の涙が流れている。今の芝居から来るものではなく、競馬の話がまともにできなかった悔しさから来るものだ。

くろたんがドアに手を掛けたとき、マスターが言った。

「今日子ちゃん! くろたんをつかまえてください! くろたんを・・・くろたんを手ぶらで帰すわけにはいかない!!」

脱兎のごとく椅子から降りたギョニ子は、くろたんの手首をグイと掴んだ。

「くろたんさん、もう悪ふざけはしないから戻って!」

今回だけですよと言いながら、くろたんは席に戻った。

「くろたん、優駿8月号のインタビュー記事が怪しいんです」

マスターがパソコン画面を見せながら言った。くろたんが頷く。

「ああ。Xでポストしてたやつですね? 横山典弘と戸崎圭太が仲間外れだという」

マスターが顎を引く。

「そうなんです。上半期の平地GⅠ勝利騎手12名。そのうちの8名にインタビューしたものが特集として組まれています。インタビューされなかった4名がこちらです」

<優駿8月号特集 インタビューなし>

●桜花賞 ステレンボッシュ
J.モレイラ(短期免許

●皐月賞 ジャスティンミラノ
戸崎圭太(地方競馬出身

●日本ダービー ダノンデサイル
横山典弘(JRA競馬学校卒業

●安田記念 ロマンチックウォリアー
J.マクドナルド(外国人騎手

「掲載された8名はすべてJRA所属騎手ですから、JRA所属騎手というくくりだと、10名中2名、戸崎圭太と横山典弘だけが特集から漏れたということになります」

みんながなるほどと頷いた。

「ふむ。この2名からどうつなげていきますか?」

くろたんの質問に、マスターは即答した」

「キーになる馬は、おそらくアエロリットでしょう。今週の平地2重賞のひとつ、クイーンステークスを勝っています」

2017/7/30(日)
第65回 クイーンS
2-02 アエロリット(横山典弘

※戸崎圭太とのコンビで、
安田記念2年連続2着、秋天3着あり

7/21(日)
第72回 中京記念
2-02)アルナシーム(横山典弘

みんながおおという声を挙げた。くろたんが言った。

「ほほう。先週の中京記念アルナシーム。アエロリットの横山典弘が、同じゲートで勝利でしたか・・・そうすると?」

「今週の競馬は中京記念の翌週。ということは、アエロリットの翌年に、クイーンステークスを勝った馬がサインを発信するのではないでしょうか?」

2018/7/29(日)
第66回 クイーンS
7-09 ディアドラ 4歳牝馬
前年紫苑S覇者

2024 クイーンS
モリアーナ 4歳牝馬
前年紫苑S覇者前走横山典弘

みんながなるほどと頷いた。

マスターが続ける。

「ディアドラがサイン馬っぽいのは、凱旋門賞出走歴有という点も含めてです。凱旋門賞・・・すなわちフランスですね」

2020 凱旋門賞
9番 ディアドラ 8着

■ コンクシェル

「面白い見解ですね。みなさんの現時点のイチ押しがモリアーナなら、私のイチ押しはコンクシェルです」

「東京オリンピックで、きょうだいで金メダルを獲得した阿部一二三と阿部詩。史上初の2大会連続きょうだい連覇がかかっています。『きょうだい』がキーワードになる今週なら、馬主のほうではありますが、トランセンドとは『きょうだい』の関係にあるコンクシェルというわけです」

トランセンド(前田幸治
コンクシェル(前田晋二

みんながおおという声を挙げた。

「キーワードが『きょうだい』であることのもうひとつの理由は、JRA-VAN公式Xがポストした北村宏司。落馬したレースが、横山兄弟のワンツーなのです!」

2024/1/8 中山12R 
1着:4-06 スプレモフレイバー(横山和生
2着:6-10 タシット     (横山武史

中止:8-14 アーレンダール(北村宏司

みんながなるほどと頷いた。

くろたんは満足そうに頷くと、店を出ていった。

クイーンS
くろたん注目馬 コンクシェル
スナ忘 注目馬 モリアーナ

■ ファイアダンサー

2024年7月25日(木)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-

翌日、戸崎圭太がキーマンのひとりなら、素直にファイアダンサーはどうだろうとギョニ子が言った。クイーンステークスではなく、新潟のアイビスサマーダッシュのほうだ。

アイビスSD
ファイア)ダンサー(戸崎圭太

「ね? オリンピックに聖火はつきもの。直球だけど、開会式がある週だし、侮れないと思うのよね」

みんながなるほどと頷いた。だが、隣の真一郎は慎重だ。

「ファイアダンサー・・・昨年は韋駄天ステークス2着から参戦でシンガリ負け・・・今年は韋駄天ステークス3着からの参戦。本番に弱いという可能性は否定できませんよね?」

否定されたギョニ子はちょっとムッとしたが、確かに気にはなるところだ。

■ 晩夏の青空

10分間の休憩後、8月壁紙カレンダーの話題を提供したのは麗子ママだった。一昨年の3歳未勝利戦が使われているという。

JRAホームページ 壁紙カレンダー

2022/8/21(日)
札幌4R 3歳未勝利
1着:2-02 ヴィルトブリーゼ(柴山雄一
2着:8-13 グロー     (池添謙一)

同日札幌メイン
札幌記念 ジャックドール

新潟メイン
NST賞 ギルデットミラー

小倉メイン 
北九州記念 ボンボヤージ

「うーん・・・2重賞を含めた、これら3場メインが使われるんでしょうか?」

真一郎が言った。マスターが頷く。

「北九州記念が入っているのが気になりますね。くろたんがポストしていましたが、今年はCBC賞と北九州記念が入れ替わっています。そのため、アイビスサマーダッシュで、『前走北九州記念』の馬が揃うことになりました」

<アイビスSD・前走北九州記念>

モズメイメイ    3着
ディヴィナシオン  11着
メディーヴァル   15着
ジャスパークローネ 16着
テイエムスパーダ  18着

みんながなるほどと頷いた。ギョニ子が言った。

「それにしても、まだ7月なのに『晩夏の夏空』ってタイトル、なんだか夏が終わっちゃうようで寂しい感じがするわね」

8月壁紙カレンダーのタイトル、『晩夏の夏空』のことを言っている。確かに、東北や北陸ではまだ梅雨が空けておらず、「晩夏」という言葉には違和感を覚える。

■ 柴山雄一

2024年7月26日(金)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-

昨日はその後、大きな進展がないままお開きとなり、2重賞と土曜競馬の枠順が確定する金曜日となった。

取っ掛かりを作ってくれたのは真一郎だった。

「昨日帰ってから、なんで柴山雄一なんだろうと思ったんです」

みんながなるほどと興味を示した。

8月壁紙カレンダーの3歳未勝利戦。同日に札幌記念や北九州記念があったことから、画像のレースには注目していなかったのだ。

JRAホームページ 壁紙カレンダー

2022/8/21(日)
札幌4R 3歳未勝利
1着:2-02 ヴィルトブリーゼ(柴山雄一

真一郎がスマホを見ながら続ける。

「柴山雄一のことをWikipediaで調べてみたら、JRA競馬学校の試験に3度落ちてから、笠松での騎手生活が始まってるんですよね」

みんながうんうんと頷いた。

「アイビスサマーダッシュに、似たような経歴の騎手が出ています。グレイトゲイナーに乗る、笹川翼騎手です」

柴山雄一
JRA競馬学校 3度受験失敗

笹川翼
JRA競馬学校 2度受験失敗

アイビスSD
5-09 グレイトゲイナー
笹川翼・森秀行)

みんながなるほどと頷いた。

そのとき、マスターが眉間にしわを寄せて腕を組んだ。何かと何かがつながるのだろうか。マスターの頭の中で、真一郎がくれた火種が、メラメラと音を立てて燃え出していた。

■ 笹川翼

「晩夏・・・笹川翼・・・オリンピック・・・暑熱対策競馬・・・」

そうぶつぶつとつぶやいていたマスターは、突然パソコンを操作しだした。みんなが固唾を飲んで見守る。

数分後、ふぅーと大きな吐息を漏らしたマスターの顔には、みるみる笑みがあふれ出した。

「みんなが挙げてくれたキーワードが、ひとつにつながりましたよ! 今週の真のキーホース、それはイグナイターです!!」

まだ何のことかわからないみんなに、マスターがゆっくりと説明を始めた。

「昨年のJBCスプリント、笹川翼騎手にJpn1初勝利をもたらしたのがイグナイターでした。馬名意味は『点火薬』」

2023/11/3(祝・金)→金メダルを祝う
JBCスプリント Jpn1
1着:5-08 イグ(ナイター)(笹川翼
2着:6-11(J)リメイク
3着:3-05(J)リュウノユキナ

みんながおおという声を挙げた。タコ社長が言った。

「なるほどなあ! イグナイターには、オリンピックにふさわしい点火。そして、暑熱対策競馬にふさわしい『ナイター』もあるってわけか?」

イグ(ナイター)→ 暑熱対策競馬
点火薬     → オリンピック

今週と来週、新潟の最終レースは18時25分発走となる。ナイターというわけでないが、JRAはこの開催を行うにあたり、日本中央競馬会競馬施行規程第68条の文言から、「日出から日没までの間に行う」の部分を削除している。つまり規程上は、JRAでもナイター開催が可能となったわけだ。

「さて、キーホースがイグナイターであっていればですが・・・」

マスターがみんなをぐるりと見回して言った。

「アイビスサマーダッシュのほうはそのままズバリの笹川翼騎乗、グレイトゲイナーでいいでしょう。イグナイターの直近勝利が、さきほど挙げたJBCスプリントだからです」

みんながうんうんと頷いた。

「さて、そうなると裏メインのクイーンステークスは、イグナイターの初勝利が教えてくれるかもしれません」

2023/11/3(祝・金)
JBCスプリント Jpn1
1着:5-08 イグナイター(笹川翼
イグナイター直近勝利

アイビスSD
5)-09 グレイトゲイナー(笹川翼
5- 10 ファイアダンサー
(前年アイビスSD 18着・武藤雅

2020/11/7(土)
東京5R 2歳新馬
6-12 イグナイター(武藤雅
イグナイター初勝利

クイーンS
8-14 モリアーナ(武藤雅

みんながおおという声を挙げた。ギョニ子が言った。

「すごいわ!きれいにモリアーナにもつながったわね!オリンピックと暑熱対策競馬。数年に一度しかないレアなタイミングで、笹川翼のイグナイターが両重賞を教えるってわけね?」

マスターが大きく顎を引いて頷き、スナック忘れな草の両重賞の本命馬が決まった。

スナック忘れな草
クイーンS 単複バトル勝負馬
8-14 モリアーナ

アイビスSD
5-09 グレイトゲイナー

■ 晩夏の青空 再考

10分ほど休憩を取ったあと、麗子ママが言った。

「さっき今日子ちゃんが、8月壁紙カレンダーのタイトルについて語ってくれたわよね?」

みんなが麗子ママに注目した。

「まだ8月にもなってないのに、『晩夏の青空』というタイトルに寂しさを感じるって」

ギョニ子をはじめ、みんなが頷いた。

「それについて考えてみたんだけど、寂しさを感じるのは、『晩夏』という単語に別の意味が込められているからだと思うの」

そう言って麗子ママは、スマホのメモに打ち込んであった単語をみんなに見せた。

挽歌

「挽歌の『挽(ばん)』は『挽く(ひく)』とも読めるんだけど、これって元の意味は、中国で葬式のときに棺を挽く者が歌った歌。転じて死者をいたむ詩歌という意味になるの」

みんながなるほどと頷いた。タコ社長が言った。

「香港映画に『男たちの挽歌』っつうのがあったな。チョウ・ユンファが主演だったはずだぜ」

麗子ママはタコ社長のほうを見て頷き、そして続けた。

「今年で死者をいたむ詩歌と言ったら、どうしても藤岡康太騎手を思い出しちゃうわよね・・・東京オリンピックの開会式の週にも、アイビスサマーダッシュがあったのよ」

2021/7/23(金・スポーツの日
2020東京オリンピック 開会式

2021/7/25(日)
アイビスSD 17頭
1着:7-14 オールアットワンス
2着:6-12 ライオンボス
3着:1-01 バカラクイーン

取消:8-17 ロジクライ(逆1・藤岡康太)

みんながおおという声を挙げた。

今年、落馬事故で亡くなった藤岡康太騎手。大外は最後のGⅠ勝利、2023マイルチャンピオンシップ、ナミュールの位置でもある。

■ 康太の夏

真一郎が言った。

「『晩夏の夏』の『晩夏』には、同じ読みの『挽歌』が隠されていたんですね・・・藤岡康太騎手が最後に、アイビスサマーダッシュに乗ったのはいつなんでしょうか?」

この質問には、すでにパソコンを操作していたマスターが答えてくれた。

「それがですね、しんちゃん。藤岡康太騎手がアイビスサマーダッシュに騎乗予定だったのは、この2021年が最初で最後だったのですよ」

<アイビスSD当日 藤岡康太騎手>

藤岡康太 2007年デビュー

2007~2011 小倉
2012 中京
2013 小倉
2014~2015 札幌
2016 小倉
2017~2020 札幌
2021~2022 新潟 ※2021取消・2022騎乗なし
2023 休養中(7/23中京8R入線後の落馬負傷で8/6まで休養)

「へえー!」

ギョニ子が大きな声を出した。

「ロジクライが取り消した2021年。これがアイビスサマーダッシュ当日、藤岡康太騎手が新潟競馬に参戦した最初の年だったわけね?」

マスターが大きく顎を引いて言った。

「初めてのアイビスサマーダッシュ・・・楽しみにしていた騎乗が取り消されてしまった・・・」

マスターはそこで口を閉ざした。誰かが気付くのを待っているかのように。

数秒後、真一郎があっという声を挙げた。

「これってもしかして! 前年に甲子園が中止になったことを言ってるんじゃないでしょうか?」

マスターは少しだけ口角を挙げ、軽く頷いた。真一郎が続ける。

「2020年は、春の選抜も夏の甲子園もコロナのため中止となった。一生に一度のチャンスが、コロナによって奪われたわけです!」

みんながなるほどと頷いた。マスターが補足する。

大外かつ17番というのがポイントでしょう。まず17番は大谷翔平。2020年、彼はエンゼルスで3年目を迎えていました。高校球児にとって、甲子園に出場することと、大谷翔平のような選手になることは、野球を続ける最大の目標と言っていいでしょうね」

みんながうんうんと頷いた。タコ社長が言った。

「17番はわかった。大外っつうのはどういう意味でい?」

「なんとしてでも晴れの舞台に出たい・・・大外でもいい、賞金もいらない」

「おお! マルゼンスキーか!!」

マスターは大きく頷き、ギョニ子や真一郎のために説明を始めた。

「8戦8勝、無敗のまま引退したマルゼンスキーは、持ち込み馬でした。当時、持ち込み馬は外国産馬と同じ扱いで日本ダービーには出走できなかった。これに対し騎手の中野渡清一が、『日本ダービーに出させてほしい。枠順は大外でいい。他の馬の邪魔は一切しない。賞金もいらない。この馬の能力を確かめるだけでいい』と言ったとされています」

参考:Wikipedia

タコ社長が補足した。

「持ち込み馬っつうのは母馬が海外で交配し、仔馬を日本で産んだ場合のことだな。マルゼンスキー以前には、日本ダービーのヒカルメイジ、春天のハクズイコウやタイテエムが持ち込み馬だ。国外で産まれた馬や、持ち込み馬ばかりがバンバン走ったら、国内の生産者はお手上げだ。保護政策の一環として、特定のレース出走に制限をかけるわけだ」

ギョニ子と真一郎が頷いた。タコ社長が続ける。

「その後、持ち込み馬は日本ダービーに出走可能となり、2001年には外国産馬も出走可能となった。外国産馬として日本ダービーに初めて出走したのが、2001年のルゼルとクロフネだったわけだ」

マスターがあとを引き継ぐ。

「つまりマルゼンスキーは、持ち込み馬がダービーに出走できない、ちょうど狭間の時代に産まれてしまったというわけです」

「よくわかったわ!」

ギョニ子が言った。

「先輩も後輩も甲子園に行けたのに、自分の年だけコロナで中止だった・・・そんな不運な元高校球児が、全国にはたくさんいるんでしょうね・・・」

みんながうんうんと頷いた。真一郎が神妙な顔で言った。

「ロジクライが取消となった翌年にも、藤岡康太騎手が新潟にいたっていうのがミソですよね。甲子園は再開されたけど、今度はお呼びがかからなかった・・・」

「なるほどなあ」

タコ社長が言った。

「各都道府県の優勝チームだけが出る夏の甲子園と違い、春の場合は選抜だからな。ブロックごとの選抜に、神宮大会枠、21世紀枠・・・か。人事を尽くして天命を待つ。怪しげな選考基準で涙を飲んだ高校球児もいるだろうしな・・・」

■ カノヤザクラ

麗子ママによる「晩夏の夏空」の解釈から藤岡康太騎手の名前が挙がったことで、スナック忘れな草の店内はしんみりとした雰囲気になった。真一郎が言った。

「騎乗できなかった今年の桜花賞、ジョーカプチーノのNHKマイルカップ、代打騎乗で優勝したマイルチャンピオンシップ・・・そして、アイビスサマーダッシュ。来年以降もこれらの時期になるたびに、我々は藤岡康太騎手のことを思い出すんでしょうね」

みんながうんうんと頷いた。マスターが言った。

「早すぎる死は本当に残念ですが、引退した騎手の中にはほとんど思いだされることのない騎手もいるでしょうから、幸せな騎手生活だったと言えるでしょうね」

麗子ママが言った。

「先週、小牧太騎手のJRA最後の騎乗があったわよね?」

みんなが再び麗子ママに注目した。

「小牧太騎手は、同じ馬でアイビスサマーダッシュを連覇しているのよ」

「おお! カノヤザクラだな!?」

タコ社長がポンと手を叩いて言った。

2008年と2009年。小牧太騎手とのコンビでアイビスサマーダッシュを連覇したカノヤザクラは、2年連続してサマースプリントシリーズのチャンピオンにも輝いている。

2008 
第8回 アイビスSD
8-18 カノヤザクラ(小牧太)

2009 
第9回 アイビスSD
8-17 カノヤザクラ(小牧太)

「8枠で連覇・・・」

ギョニ子が言った。

「しかも連覇年はロジクライと同じ17番・・・桜花賞を思い出させるサクラ馬名・・・もしかしたらこの17番が走るんじゃないかしら?」

2024 アイビスSD
8-17 テイエムスパーダ(酒井学

「酒井学はいいでしょうね」

マスターが言った。

「くろたんがポストしていましたが、パリ五輪で日本人メダル第1号になりそうなのが、女子柔道48キロ級の角田夏実選手。酒井学騎手は、数少ない体重48キロの騎手になります」

JRAホームページ
NHK

みんながおおという声を挙げた。マスターが続ける。

「しかも、日本人メダル第1号は、夏季オリンピック通算500個目のメダルになるそうですよ」

「よし! テイエムスパーダいいじゃねえか! 本命は9番グレイトゲイナーとして、相手は8枠。枠の5-8と馬連ワイドの9番17番。これをお楽しみ馬券としようぜ!」

みんながいいねという声を挙げ、スナック忘れな草の勝負馬券が決まった。

スナック忘れな草
アイビスSD 勝負馬券
9番 グレイトゲイナー(単複バトル勝負馬)

枠連:5-8
馬連・ワイド:9-17

■ 編集後記

ポストしたネタですが、ここにもまとめます。

パリ五輪第1号=夏季通算500号

相沢郁 通算500勝 あと1
斎藤誠 通算500勝 あと2

狙ってみたいのは、男子柔道連覇の斉藤仁選手より、
斎藤誠厩舎の連勝。

7/27(土)
札幌01R
7-07 ヤコブセン(斎藤誠

札幌10R 摩周湖特別
6-10 メタルスピード斎藤誠

これもポストしましたが、
メタルスピードは昨年、JRAのFacebookに登場し、
フィールシンパシーを教えてくれたことがあります。

JRA 公式Facebook

メタルスピード → メダルのスピード記録

西矢 椛(もみじ)
2021 東京オリンピック
スケートボード 女子ストリート金メダル

日本人史上最年少のオリンピック金メダリスト
日本人女性として初の21世紀生まれの金メダリスト

2023 ターコイズS
1-02 フィールシンパシー 2着
(前走:紅葉S 1着

そのメタルスピードが、
狙いすましたようにオリンピック開幕週に登場。

斎藤誠厩舎の連勝や、今週中の500勝達成があるかどうかはともかく、
このメタルスピードは単体でも狙ってみたい馬。

単複バトル勝負馬

札幌01R
7-07 ヤコブセン

札幌10R 摩周湖特別
6-10 メタルスピード

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?