スナック忘れな草~紅白歌合戦・中京3R・ステイヤーズS・チャレンジC~
トップ画像引用:稲垣潤一&中森明菜 - ドラマティック・レイン
■ スナック忘れな草 紅白歌合戦
2023年12月1日(金)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
スナック忘れな草の店内にはいつものメンバーが揃っていた。ただ、いつもとは様子が違う。カウンターの左角にいるのはそこが指定席であるタコ社長だが、その右隣には真一郎がいた。真一郎の指定席はタコ社長の対角にあたるカウンターの右角だが、そこには麗子ママが座っていた。その左隣りには、ギョニ子がいてこれはいつもの席だ。
「さあ、みなさん揃いましたね」
ひとりカウンター内にいるマスターが言った。
「スナック忘れな草、毎年12月恒例の紅白歌合戦です。みなさん好きな曲を一曲歌い、そのあと自由に予想してください」
スナック忘れな草の年末恒例行事、紅白歌合戦の幕が切って落とされた。
■ さざんかの宿
「先攻は白組。トップバッターは八本の手で女性をいかせまくる、タコ社長こと袴田大作さん!歌っていただきましょう!さざんかの宿」
マスターの紹介に頷くと、タコ社長は立ち上がり「さざんかの宿」を熱唱した。何百回と歌っているためだろう。演歌歌手がよくやるようにワンテンポ遅れて歌うのと、ところどころ変なアレンジを利かせているため、もはや原曲とは別の歌になっていた。
明らかにお義理の拍手がなると、タコ社長は手で拍手を制した。
「まあ、うますぎるとこういう反応になるわな。人は想像をはるかに超えた物に直面すると、何も言えなくなるってえもんだ。結婚披露宴でこれを歌ったときも、こんな反応だったぜ」
「ええ!?これを結婚披露宴で歌ったの?」
大きな声を出したのは、紅組のほうにいたギョニ子だった。
「こんな不倫丸出しの歌、結婚披露宴で歌ったらそりゃあドン引きされるわよ」
あきれるギョニ子を意に介さず、タコ社長は満足そうな顔をして座ると、眞露の水割りをグビリと飲んだ。
「社長さん、さざんかの宿を歌ったということは、阪神9レースのさざんか賞でしょうか?」
「ふふふ。普通はそう思うだろうな」
マスターの質問に、タコ社長は不気味な笑みを漏らした。
「だがそれが、素人の赤坂青山ギロッポンってわけよ」
「赤坂青山ギロッポン?なんのことなんでしょうか?」
訝しがる真一郎に、麗子ママが説明する。
「『素人の浅はかさ』の『浅はかさ』を、『赤坂青山ギロッポン』と言い換えたのよ。恐れ入り谷の鬼子母神とか、その手は桑名の焼き蛤とか、そんな付け足し言葉と同じね」
「はあ・・」
麗子ママの説明で、かえって真一郎は混乱したようだった。
「まあそれはいいってことよ」
二人のやり取りを制して、タコ社長が狙いのレースを説明する。
「さざんかの宿といやあ、もちろん大川栄策。大川徹氏の馬が、明日一頭だけ出走するのさ」
中京3R
4-07 スマートアンバー
(田口貫太・大川徹)
「鞍上はテン乗りの田口貫太。これでピンと来たね。例の着服事件だ」
タコ社長が言う着服事件とは、日本海テレビの元局長による「24時間テレビ」の寄付金着服問題だった。局長が懲戒解雇処分されただけでなく、日本海テレビの田口晃也会長も辞任を表明したのだ。
「田口貫太が乗るスマートアンバーかもしれねえが、狙いは『24時間テレビ』の『24』で挟んだ3枠だ」
中京3R
2-04 シンエン(2枠4番→24)
3-05 カズピレウス(雅苑興業)
3-06 アファン (雅苑興業・染分け)
4-07 スマートアンバー(田口貫太・大川徹)
「2枠4番で『24』。この馬と7番の『田口』で3枠をサンドしてらあな。おまけに大川徹氏の『大川』と、雅苑興業の『興業』で『大川興業』になってるぜ」
「大川興業といえば・・・」
マスターがタコ社長の説明に補足しようとしたが、タコ社長はそれを制した。
「メンバーだか元メンバーが起こした詐欺事件な?まあそれはいいってことよ。狙いは『24・田口』にサンドされた3枠の左側。秋山真一郎のアファンだ」
中京3R
2-04 シンエン(2枠4番→24)
3-05 カズピレウス(雅苑興業)
3-06 アファン (雅苑興業)
4-07 スマートアンバー(田口貫太・大川徹)
「ここは単勝一本!前走はちょい足らずの2着だったが、ここは決めてくれるだろう」
タコ社長の勝負馬券
中京3R 単勝6番 アファン
■ 涙そうそう
「さあ、次は紅組です。紅組先頭バッターは、麗子ママ!歌っていただきましょう。涙そうそう」
麗子ママが選んだ曲は、夏川りみの「涙そうそう」だった。原曲に忠実に、それでいて情感たっぷりに歌い上げていて、みんな聞き入っていた。曲が終わるとみんなが拍手した。タコ社長のときのお義理の拍手とは違い、心がこもった拍手だった。
「うふふ。みんなありがとう」
麗子ママは少し照れて言った。マスターが訊く。
「狙いのレースは何でしょうか?『涙そうそう』というタイトルからはピンと来るものはありませんが・・・」
麗子ママが答える。
「それがね、実はチャンピオンズカップなの。このイベントを見てちょうだい」
「阪神競馬場で2週に渡り、『灘五郷ふぇ酒』というイベントが行われるの。『ふぇ酒』は最近よく聞く『フェス』に掛けていて『フェシュ』と読ませたいのでしょうね」
「そういうことか!」
麗子ママの左隣にいたギョニ子が言った。
「NADAGOGOは『灘五郷』だから本当は『なだ ごごう』なんだけど、アルファベットをそのまま読むと『なだ ごーごー』のほうがしっくりくるわね」
麗子ママが頷く。
「そうなの。それでなんとなく響きが似ている『涙そうそう』を思い出したってわけ」
「ごーごーからまさか、チャンピオンズカップで5枠のゾロ目を狙うとか?」
チャンピオンズC
5-08 アーテルアストレア
5-09 クラウンプライド
真一郎が訊いた。麗子ママが答える。
「そのまさかなの。ちょっと穴すぎるかしら?でもね、しんちゃん。ジャパン・オータムインターナショナルは、ずっと接触目の決着なのよ」
<ジャパン・インターナショナルオータムシリーズ 2023>
エリザベス女王杯
3連単:(1→2)→3
マイルCS 【16頭立て】
3連単:(16→1)→5
ジャパンカップ
3連単:(2→1)→17
チャンピオンズC
3連単:1.2着は接触目?
「なるほどなあ!」
タコ社長が感心したように言った。
「16番と1番で決まったマイルチャンピオンシップがあるからうまくぼかされてるが、3戦とも接触目だ!」
「そうなのよ。それにね、社長さん。クラウンプライドはシュネルマイスターとソングラインからもサインがあると思うの」
麗子ママが言った。競走馬登録抹消のニュースがあったシュネルマイスターだが、ソングラインの名前がないことに違和感を覚えるという。
「ネットニュースでは、早くからシュネルマイスターとソングラインの引退が報じられていたわ。2頭とも同じサンデーレーシング。それなのにJRAニュースでは、ソングラインの名前がなく、発表されたのはシュネルマイスターだけ」
画像のレース NHKマイルC
5-10 ソングライン 2着(5枠左)
チャンピオンズC
5-09 クラウンプライド
(5枠左・〇ングライン)
「ホームページの画像を見ればわかるように、2頭のワンツーで決まったNHKマイルカップは、シュネルマイスターにソングラインがすっぽり隠れているの。そのソングラインと同じ『5枠左』のクラウンプライド。わかりづらいけど馬名の中に『ングライン』があるわ」
「面白いですね!」
真一郎が言った。
「それに、シュネルマイスターには『酒(シュ)』がありますから、NADAGOGOにもつながりますね」
麗子ママはにっこり笑って頷いた。
「ゾロ目の5-5ならかなりの穴だから、さすがに1点勝負ってわけにはいかないけど、あたしは5枠から枠で手広くながしたいわ」
麗子ママの勝負馬券
チャンピオンズカップ
単勝:9番 クラウンプライド
枠連:5-2.3.5.6.7.8
■ Welcome to the Jungle
「さあ、次は白組の二番手、しんちゃんの・・・」
マスターが真一郎を紹介しようとしたとき、店内に入って来た者がいた。手には拳銃が握られている。
「く、くろたん!」
銃口を向けられたマスターが上ずった声で言った。先週、立ち飲み処UEGOMORIのキャロラインママと夜の街に消えたくろたんだったが、それ以来の来店だった。ロンとヤスの暗号を知らなかったくろたんは、キャロラインママの毒牙にやられたのだろう。助けてくれなかったマスターを、恨んでいることは十分に考えられる。
「よくも罠にはめてくれましたね」
くろたんが言った。顔は殺気にあふれている。
「おかげさまで、あれからどの店に行っても、立ち飲み屋で飲む羽目になってますよ」
「それはつまり・・・」
「ケツが痛くて座れねえってことよ!!これでもくらえ!!」
くろたんが引き金を引いた。キャーという悲鳴があがったが、銃口から出てきたのは薔薇だった。マジック用のおもちゃの拳銃だったのだ。
くろたんは、リモコンを操作すると、ガンズ・アンド・ローゼズの『Welcome to the Jungle』を入れ、スタンドマイクで熱唱した。英語がところどころ適当ではあったが、高音もしっかり出ていて、ロックシンガーのようだった。
満足げに額の汗をぬぐうと、あばよと言ってくろたんは店を出て行った。
「ガンズ・アンド・ローゼズ・・・もしかしたら、くろたんは取り消しのアンドローゼズのことを言いたいのかもしれません」
中山3R
6-11 アンドローゼズ(取消)
「アンドローゼズかあ。ガンズがねえじゃねえか?」
タコ社長が言った。マスターはすでにパソコンを操作しており、2頭の『ガン』を見つけた。
中山4R
5-09(ガン)バレユウキ(5枠右)
中山10R 鹿島特別
6-11 ヴァナル(ガン)ド(6枠右)
「アンドローゼズ取消に対し、『ガン』馬名馬が2頭。5枠右と6枠右。5枠左を挟んでいることになります」
5-09(ガン)バレユウキ(5枠右・中山4R)
5-10 シルブロン(マーカンド・5枠左・ステイヤーズS)
6-11 ヴァナル(ガン)ド(6枠右・中山10R)
「取り消したアンドローゼズ。そして『ガン』馬名馬が2頭。3頭とも中山のレースですから、ステイヤーズステークスにサインを送っているとすると、シルブロンがぴったりです」
マスターの説明を受け、ギョニ子が訊いた。
「マーカンド騎手って、勝てばJRAの重賞初勝利よね?」
「確かそのはずです」
マスターはそう言って、また素早くパソコンを操作した。
「やはりそうですね。重賞では昨年のカペラステークスのジャスティン3着が最高順位。勝ったのはリメイクで、福永祐一騎手最後の重賞勝利となったレースでした。そして、これが面白いのですが・・」
チャレンジC
5-07 アドマイヤビルゴ(ドイル・5枠左)
ステイヤーズS
5-10 シルブロン(マーカンド・5枠左)
「夫婦が東西重賞で『5枠左』ね」
麗子ママがそう言うと、マスターが深く頷いた。
マスターの勝負馬券
ステイヤーズS
単勝:10番シルブロン
■ ドラマティック・レイン
10分間の休憩を挟み、紅組2番手ギョニ子の出番になった。くろたん登場で出番を飛ばされた真一郎は、ギョニ子と一緒にデュエットすることになった。稲垣潤一と中森明菜の『ドラマティック・レイン』だ。
カップルが歌うデュエットとあって、店内はやんややんやの大喝采となった。ギョニ子はペロリと舌を出したあと、深々とお辞儀をして椅子に座った。満足そうに喉を鳴らして生ビールを飲み、がんばってくれた喉にご褒美を与えた。
「来週、中京競馬場に来るアバンギャルディ。ドラマチックチャンピオンズってイベント名なの」
アバンギャルディ×JRAコラボソング
ドラマチック・チャンピオンズ
~ペガサスの翼の下で~
「ドラマティックで思い出したのが稲垣潤一の『ドラマティック・レイン』。うまいことにステイヤーズステークスにはキングズレインと稲垣幸雄厩舎の登録があったってわけ」
ステイヤーズS
1-01 キングズ(レイン)
5-10 シルブロン(稲垣幸雄)
おおという歓声が店内にあがった。マスターが言った。
「なんだ、今日子ちゃんもシルブロンを狙っていたんですね」
ギョニ子が頷いて言った。
「えへへ、実はそうなの。マスターのアンドローゼズからの狙いが見事だったから言いそびれてしまったけど」
「それじゃあ、僕のほうから裏のチャレンジカップの狙い馬をあげていいでしょうか?」
真一郎が遠慮がちに言った。みんな異論はないとうんうんと頷いた。
「まあ、あまりやらない読みなんですけれど、『阪神重賞・芝2000・13頭立て』で調べてみたんです」
<阪神重賞・芝2000・13頭>
2008/9/15 朝日チャレンジC
1着:5-07 ドリームジャーニー
2着:6-08 トーホウアラン
2011/6/19 マーメイドS
1着:6-08 フミノイマージン
2着:4-04 ブロードストリート
2021/4/4 大阪杯
1着:6-08 レイパパレ
2着:1-01 モズベッロ
馬連万馬券
2023/6/18 マーメイドS
1着:4-04 ビッグリボン
2着:6-08 ウインマイティー
2023 チャレンジC 6枠連対?
1-01 ウインマイティー
6-08 エピファニー
6-09 フェーングロッテン
「なるほど、これは面白いですね」
マスターがすぐに気づいて言った。真一郎が頷いて説明する。
「阪神重賞、芝2000、13頭立て。6枠の連対が始まったのが2008年の朝日チャレンジカップ。その後、マーメイドステークス、大阪杯ときて、またマーメイドステークス。そしてチャレンジカップ」
真一郎の説明に、マスター以外の3人も理解したようだ。タコ社長が言った。
「へえー!GⅠの大阪杯を中心にして、チャレンジカップが二つにマーメイドステークスが二つ。綺麗な対称構造になってるじゃねえか?」
2008/09/15 朝日チャレンジC
2011/06/19 マーメイドS
2021/04/04 大阪杯
2023/06/18 マーメイドS
2023/12/02 チャレンジC
「そうなんです」
真一郎がにっこりと笑って言った。
「しかも1番には前回のマーメイドステークス2着馬、ウインマイティーがいます。2008年のチャレンジカップから始まり、今年のチャレンジカップで終了となると、ゾロ目か万馬券決着ではないでしょうか?」
みんながうんうんと頷き、真一郎の勝負馬券が決まった。
真一郎 勝負馬券
チャレンジカップ
◎8番エピファニー
馬連:8-1.2.7.9.11.13(ゾロ目と馬連万馬券)
■ 編集後記
チャレンジカップについて補足。
大外13番のテーオーシリウス。尻が「ウス」
6-08 エピファニー
(前走ケフェウスS 1着)
よく書くネタですが、エピファニーといえば、
ミッキー・ロークの映画『エンゼル・ハート』に
出てくる人物のひとり。
ロバート・デニーロ演じる、
ルイ・サイファー(ルシファー)という
登場人物もいます。
2023/7/10
プロキオンS
6-12 ゲンパチ(ルシファー)(6枠左)
6枠右(エピファニー)
6枠左 ゲンパチ(ルシファー)
6枠に揃えるのは
ミッキー・(ローク)だからでしょうか?
小説内では万馬券になる組み合わせと、
ゾロ目6-6を押さえた6点買いになっていますが、
一番期待しているのは13番テーオーシリウス。
Xでつぶやきましたが、1戦ごとに
凡走、好走を繰り返しており、今回は走る番。
<テーオーシリウス 過去9戦>
9着→(1着)→9着→(1着)→4着
→(3着)→16着→(2着)→13着
「阪神重賞・芝2000・13頭」のレースに、
2000年の朝日チャレンジカップがあります。
2000/9/9
朝日チャレンジカップ
1着:8-13(ミッキー)(ダンス)
ミッキー・ロークのミッキー。
ダンスチームアバンギャルディとのコラボで、
このミッキーダンスの13番が使われないでしょうか。
チャレンジカップ
(8-13)テーオーシリウス
エピファニーとのワイドも押さえます。
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