スナック忘れな草~Sleeping Beauty・2024オパールS・サウジアラビアRC・毎日王冠~
■ 敗北
2024年9月29日(日)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
お会計をと、ギョニ子が目で合図してきたのは午後7時を回ったころだった。隣では真一郎がカウンターに突っ伏している。生ビールを3杯飲んだあと、珍しくウイスキーのロックをやっていた彼は、完全に酔いつぶれていた。チェイサーを勧めるギョニ子を無視し、ハイペースで5、6杯は飲んだだろうか。
ギョニ子にお釣りを渡しながら、麗子ママはタクシーを呼ぼうかと訊いた。ギョニ子は首を振り、アプリでもう手配してあるから大丈夫と告げた。
5分後、ギョニ子と真一郎がいなくなった店内で、口を開いたのはタコ社長だった。
「責任を感じてたんだろうな・・・」
マスターが頷く。
「週初め早々に本命と決めたウインマーベルが馬券にならず・・・自信を持ってプレゼンしていただけに、ショックが大きかったんでしょう」
そういったマスターの顔にも、敗北感がにじみ出ていた。
ウインマーベル以下、対抗のマッドクール、黒三角ママコチャ、白三角にはムゲン、ピューロマジック、サトノレーヴ、そしてビクターザウィナー。印を打った全7頭が一頭も馬券にならず、最高着順がママコチャの4着というひどい有様だった。
「月が変わればツキも変わるわよ」
努めて明るくいった麗子ママだったが、その言葉はむなしく店内に響いた。
■ 静かな木曜日
2024年10月3日(木)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
スナック忘れな草のドアを開けたくろたんは、店内がいつもより広いなと感じた。原因はカウンターの右サイドだった。いつもはそこにいるギョニ子と真一郎がいない。
「おやおや、今日は閑古鳥が鳴いていますね」
タコ社長の右隣りに腰をおろしたくろたんの前に、響のロックが静かに置かれた。
「しんちゃんと今日子ちゃんは、今週ちょっと仕事が忙しいようで・・」
マスターが弁解するようにいった。ふたりは、月曜日からずっと来ていないという。
「・・・ふうん・・・・・・・もしや空中分解でもしたんですか? スプリンターズステークスの予想は散々でしたからねえ?」
そういってくろたんは、マスターを上目遣いに見た。
何かを言いかけたマスターだったが、ぐっと唇を噛んだ。当初の本命馬トウシンマカオからサトノレーヴに変えたくろたんに対し、スナック忘れな草の本命馬はウインマーベルだった。
本命馬の単複合計配当を争う、秋のGⅠキングバトル。ルール上は、初戦は両者配当なしで引き分けである。
しかし、7頭に印を回しながら、一頭も3着内がないスナック忘れな草に対し、くろたんは2頭のうちの一頭が2着と、しっかり連対を確保している。どちらの予想が優秀であったかは、火を見るよりも明らかだ。
「ギャラリーがこうも少ないのでは、プレゼンのやりがいがありませんねえ・・・」
くろたんは短く嘆息した。そして、サウジアラビアロイヤルカップと毎日王冠の本命馬を挙げ、サインの詳細はXのポストを見てくれと言い残し店を出て行った。
サウジアラビアロイヤルカップはアルレッキーノ、毎日王冠はオフトレイルとのことだった。
■ 一日一食
木曜日の3日前-
2024年9月30日(月)午後12時
-東京都某区 真一郎が勤務する病院-
昼食の配膳が始まる旨、院内放送が流れた。真一郎はパソコンでの作業を中断し、今日入院した患者がいる病棟へ向かった。食事の摂取状況を確認するためだ。
新規入院患者の食事摂取状況を評価することは、言語聴覚士の大事な業務のひとつである。入院患者の高齢化に伴い、食事形態の調整業務は以前よりも頻度を増している。
自宅や施設では普通の食事を摂っていたが、脳血管障害や廃用症候群により、嚥下機能が低下した状態で入院する患者は少なくない。
例えば、前医からの申し送りではお粥を問題なく食べていたとされる患者が、実際に立ち会ってみると、むせがひどくて安全に食べられる状態ではないということがある。
今日入院した患者がいる部屋を真一郎が訪室すると、患者は横になってテレビを見ていた。70代前半の男性患者、山木徳郎さんだ。軽度の構音障害(こうおん しょうがい=呂律不良でうまく話せない)がある。
真一郎がリハビリの担当になる旨挨拶をし、そろそろお昼ご飯が来ますよと告げると、山木はびっくりしたような顔をした。
「あれれ? 先生は聞いていないのですか? 私はお昼ご飯を食べないのですよ」
今度は真一郎が驚く番だった。
「え? お昼ご飯を食べないというと・・・」
そこに管理栄養士の菊沢がやってきた。50代前半の女性管理栄養士だ。
「大泉先生。こちらの山木さんですが、食事は一日一食、夕食のみという約束で入院されています。事前にお知らせしておけばよかったのですが・・」
菊沢の説明はこうだった。一日一食生活を数十年続けている山木さんは、当院への入院条件として一日一食の食事提供を厳守してくれることを求めた。一日三食だとかえって調子が悪くなるという。栄養科と看護科の上層部とで協議した結果、本人と家族の強い意向なのであれば、その条件で受け入れようということになった。主治医の承諾も得てある。
「夕食は他の患者よりもカロリーを多くしていますし、水分補給もしっかりとしてもらうことになっています」
そういって菊沢が山木に視線を向けると、山木は頷いた。
真一郎は、そうとは知らずに訪室したことを詫び、午後は1時半に迎えるに来ることを告げて辞去した。
■ 情報の熟成
真一郎が、山木のもとを再度訪れたのは午後1時半ぴったりだった。血圧、脈拍、体温などのバイタルチェックをし、体調に問題がないことを確認してから車椅子へ移乗してもらう。申し送りにあった通り身体の麻痺は軽度であり、車椅子移乗は軽介助から見守りレベルといったところだった。
この状態なら、今月中には歩行器歩行へ移行するだろうな。そう思いながら真一郎は車椅子を自操する山木を見守った。
言語訓練室に入り改めての挨拶をすますと、山木は一日一食生活になった経緯を話し出した。
「実はね、先生。わたしは長いこと雑誌の記者をしていたのですよ」
「へえ。雑誌の記者ですか」
真一郎は演技ではない率直な感想を述べた。これまで、様々な職種経験のある患者たちと接してきたが、雑誌の記者をしていたという人物は皆無であった。
「最初は忙しさから、気がついたら朝食を抜いていたとか、朝昼連続で食べられなかったとかだったのですが、ある日ふと、そういう日のほうが体の調子がいいことに気がついたんです」
テーブルの上で、両手の指を組みながら山木は続けた。
「書籍などを調べてみたら、現代人の一日三食というのは食べ過ぎだというある医師の主張を目にしたんです。一日三食だと、胃腸が休まる暇がないというんですなあ」
山木の説明は続いた。一日一食生活だと、体が消化活動にエネルギーを割かなくていい分、むしろ免疫力が高まるのだという。
「ま、脳梗塞で入院してしまった私がいっても、説得力はないかもしれませんがね」
そういって山木は自嘲気味に笑った。そしてすぐに、真顔になって続けた。
「ですがね、先生。この休む、休ませるという考えは、記者という仕事を続けていくうえでも役に立ちましたよ」
「記者の仕事に?」
「ええ。記者と言えばもちろん取材、インプットが大事なわけですが、ただがむしゃらに取材を続けていたっていい記事は書けない。どこかで脳を休ませて、情報を熟成させる期間が必要なんですなあ」
「熟成・・・ですか」
「そう。熟成です。ある程度インプットしたら、それらの情報が勝手に熟成するのを待つのです。天からの啓示といえば、少々大げさかもしれませんがね」
山木の話は、真一郎にとって実に興味深い話であった。サイン競馬について彼は、週明けの月曜日からあらゆる媒体で情報収集し、ひらめいたことをスナック忘れな草で逐一発信する傾向があった。
その結果、サインが集中していると評価された馬は早い段階で彼の中で本命視され、のちに出てくる情報からのサイン考察に、バイアスを掛ける一因となることもあった。すなわち、別の馬への切替ができなくなるのである。
早くから目星をつけていた馬が当たりであればいいのだが、ハズレだった場合の虚無感は大きい。いったい俺は、一週間なにをやっていたのだろうかと。
■ キャッチボール
「先生・・・続けてもよろしいでしょうか?」
山木の問いかけに真一郎は、思索から現実へと呼び戻された。
「は、はい。どうぞ続けてください」
「いい記事を書くということにおいて、私が大事にしていたことがもうひとつありました。それは、自分が主役になるのだという欲を捨てることです。人間だれしも、手柄が欲しいし人から褒められたいものです。ですがその考えが、他者との交流を阻む足枷となります。まずはポーンとボールを投げてみることです。誰かが投げ返してくれるかもしれないし、誰も投げ返してくれないかもしれない」
真一郎は深く頷いた。
「誰かが投げ返してくれて、キャッチボールの輪が、ふたりから三人、そして四人と広がっていくと、そりゃあ楽しいもんです。ひとりで壁に向かってボールを投げているときとは雲泥の差ですよ」
~~~
お昼休み中、真一郎は山木の言葉を何度も反芻していた。まるで最近の自分を見透かされたような耳の痛い話であった。最近の自分は、主役になろうという気持ちが強すぎて、みんなが発言する機会を奪っていたのではなかろうか。
情報の熟成と他者とのキャッチボール…
真一郎はスマホのLINEを開くと、ギョニ子へのメッセージを打ち始めた。
■ 秋の夜長
2024年10月3日(木)午後6時45分
-東京都某区 真一郎とギョニ子が住むアパート-
その日夕食当番だった真一郎は、ロールキャベツを皿に盛りつけるとギョニ子に声を掛けた。パソコンでジブリの映画を観ていたギョニ子が、はあいと返事をしてダイニングへやってくる。
「うわあ。おいしそう! これ全部しんちゃんが作ったの?」
「俺のほかに誰が作るんだよ」
そう返しながらも、真一郎はうれしそうだった。
月曜日からの4日間、ふたりは仕事のあとにスナック忘れな草へ通うのをやめて、アパートでゆっくりと過ごすことにしていた。月曜日に、真一郎が持ち掛けた提案だ。
重賞インフォメーションやデータ分析などの基本的な競馬のアイテムは、月曜日の夜にざっと確認するにとどめ、どの馬が来そうかなどの考察はあえてしなかった。患者の山木が言っていた、情報の熟成を待つ作戦だ。
「今日は何を観ていたの?」
ブロッコリーと小エビのサラダをつまみながら、真一郎が訊いた。
「今日はねえ、『となりのトトロ』。メイちゃんがかわいすぎてかわいすぎて」
月曜日からの4日間、ふたりは食後に別行動をとっていた。真一郎は読書。ギョニ子はパソコンでの映画鑑賞だ。最近、池井戸潤を読み進めていた真一郎は『空飛ぶタイヤ』の下巻を読み進めていて、ギョニ子はジブリシリーズを次々と観ていた。
「子供ってなんであんなに素直なのかしら?」
「ほんとだよねえ・・っていうか、どうして大人になると素直さがなくなるんだろう」
「汚いものをたくさん見るからじゃないの?」
「ははは。そりゃ言えてる」
料理を食べながらのこんな他愛もない会話が、競馬のことを忘れさせてくれた。当てよう当てようという気持ちが強すぎて、今日子ちゃんとの対話が減っていたのかもしれないな。真一郎は思った。
「素直と言えば・・」
ギョニ子が何かを思い出したようにいった。
「先々週の土曜日だったかしら・・・ある患者さんの入院に立ち会ったんだけど、4歳くらいの女の子の解釈が面白くて」
ギョニ子の話は次のようなものだった。70代後半の男性患者の入院に、30代の孫娘とその娘が立ち会った。立ち会う予定だった男性患者の息子が、仕事の関係で急遽来られなくなったからだ。
「孫娘さんが、祖父は昨年大腿骨を骨折してから、寝たきりの生活でしたって言ったの」
真一郎が頷いて先を促す。
「そしたらね、隣にいた4歳の女の子が、ママ、じいじは寝たきりじゃないよ。昼はちゃんと起きてるよって真顔でいったの」
「ああそうか! 寝たきりを眠ったままって解釈したんだね」
「そうそう。寝たきりってそういうことじゃないのにね」
自分も子供のころ、ある言葉をこんな風に理解していたなど、ふたりの会話は続いた。
■ データ分析コピー
2024年10月4日(金)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
真一郎とギョニ子がいつもの指定席に着くと、麗子ママがふたりの前に生ビールのジョッキを置いた。
「あちらのお客様からです」
わざとらしいほど、うやうやしく麗子ママがいった。あちらと示されたのは、カウンターの対角にいたタコ社長だった。
「社長さん、あざっす!」
照れくささから、あえていまどきの若者のようなお礼を言った真一郎に、タコ社長は軽く手を挙げた。何も言わなかったが、顔には満面の笑みが貼りついている。
「んまあ! さてはエビで鯛を釣ろうって魂胆ね」
素直じゃないギョニ子は辛口でそう応じたが、お礼の言葉の代わりに、ことさらうまそうに喉を鳴らして生ビールを飲んだ。
みんなの雑談がひと段落したところで、マスターが競馬の話を切り出した。
「毎日王冠のデータ分析コピーが面白いですよ」
毎日王冠 データ分析コピー
「近年は大きな波乱が起きていない要注目のGⅠ前哨戦」
「大きな波乱が起きていない・・・違和感のある表現ですよね」
マスターの言葉に、真一郎が頷いて答える。
「大きな波乱が起きていない・・・固く収まっているとか、固い決着が多い。これでいいはずですよね?」
マスターが頷く。
「そうなんです。それなのに、あえて波乱が起きていないを使った」
「起きていない!」
ギョニ子がポンと手を叩いていった。
「つまり、寝ているとか眠っているということじゃないかしら?」
ギョニ子がそう解釈したのは、昨日の真一郎との会話が頭にあったからだ。寝たきりという言葉を、眠ったきりと解釈した小さな女の子の話だ。
キャッチボールだなと真一郎は思った。マスターが投げたボールを自分がキャッチし、投げ返す。マスターがまた投げて、今度はギョニ子が投げ返す。
ギョニ子の投げた球は誰がキャッチするだろうとみていると、それは麗子ママだった。
■ グリム童話
「今日子ちゃん、それ面白いかも。眠っている・・・それもただ眠っているんじゃなくて、何十年も眠り続けている・・」
みんなが麗子ママに注目した。まだ話がみえない。
「明日の京都メイン、オパールステークスを見てみて。何十年も眠ったままの王女がいるわ」
そういって麗子ママは、マスターを手招きした。いぶかしがりながら、麗子ママのすぐそばまでマスターが近づく。麗子ママは、自分の右の頬を指さしていった。
「王女を目覚めさせて」
そういって目を閉じた麗子ママの様子に、意味を理解したマスターはキスをした。頬ではなく唇に。
「きゃーー! 公然わいせつ罪だわ! 誰かおまわりさんを呼んでー」
そう茶化したギョニ子に、麗子ママとマスターは照れくさそうに笑った。
「おお! 『眠れる森の美女』だな!」
やっと意味を理解したタコ社長が、パンと膝を叩いていった。
「なるほど、モリノドリームっつうわけだ!」
毎日王冠 データ分析コピー
「近年は大きな波乱が起きていない要注目のGⅠ前哨戦」
起きていない → 眠り続けている
→『眠れる【森の】美女』
オパールS
8-16(モリノ)(ドリーム)
「モリノドリーム、いいですね!」
真一郎がいった。
「『眠れる森の美女』の『モリノ』に『ドリーム』。目標とかやりたいことという意味ではないドリームは、眠っていないとみられないですからね」
マスターが頷いてあとを引き継ぐ。
「鹿戸雄一厩舎というのもいいですね。先週のスプリンターズステークス。2頭の非抽選馬はいずれも鹿戸雄一厩舎でした」
みんながなるほどと声を挙げた。
5分後、スマホでWikipediaをみていたギョニ子が面白いものをみつけた。
「先週のスプリンターズステークスの結果も、『眠れる森の美女』の伏線だったのかも・・・勝ったルガルのゼッケンは13番。そして、西村淳也は今年の平地GⅠ、13人目の勝利騎手よね?」
みんながうんうんと頷く。
「『眠れる森の美女』のグリム童話版の解説をみてたの。王女に呪いをかけたのは、招待されなかった13人目の魔法使いだったって書いてるわ!」
みんながおおという声を挙げた。
グリム童話版の『眠れる森の美女』。解説によると、食器が12皿しかなかったために、13人いた魔法使いの中でひとりだけ招待しなかった。その扱いに腹をたてた魔法使いが、王女に呪いをかけたという。
「13の強調か! なるほどうまくできてるぜ!」
タコ社長が言った。
「こりゃあモリノドリームの単複でいいんじゃねえか? 前走キーンランドカップはルメちゃんで4番人気4着。丸山元気に乗り替わりで人気が落ち、妙味たっぷりだぜ!」
みんながうんうんと頷いたとき、麗子ママが仕上げのネタを披露した。
「京都競馬場のイベント、AUTUMN FLOWERS ROAD・・・会場は円山公園よ」
オパールS
8-16 モリノドリーム
(丸山)元気
なるほど漢字は違うが同じ「まるやま」だ。
みんながおおという声を挙げて、スナック忘れな草の勝負馬券が決まった。
10/5(土)京都メイン
オパールS(L)
単複:16番 モリノドリーム
■ いちょうステークス
真一郎とギョニ子のプチ休暇が功を奏したのか、ここまではいい感じで考察ができている雰囲気があった。10分間の休憩後、最初のボールを投げたのは真一郎だった。
「重賞インフォメーションのサウジアラビアロイヤルカップ。過去の優勝馬がいちょうステークス時代のクラリティスカイ。なんでかなって考えたんです」
みんなが真一郎に注目する。
「有力馬紹介のトップ、アルレッキーノのところで、チェルヴィニアの弟というくだりがあります」
みんながうんうんと頷く。
「いちょう・・・兄弟、姉妹・・・女子レスリングの伊調馨なんてのは飛躍しすぎでしょうか」
おおという声も挙がったが、反応は微妙なものだった。投げたボールは、誰にもキャッチされず地に落ちるのか-
その時、麗子ママがボールを投げ返してくれた。
「・・・伊調馨、あるかもしれないわよ。毎日王冠のほうの過去優勝馬。エイシンヒカリといえば栄進堂よね?」
みんながうんうんと頷く。
「栄進堂の『栄』は国民栄誉賞の『栄』。そして栄和人のことでもあるわ」
みんながおおという声を挙げた。
伊調馨はオリンピック4連覇を評価され、2016年に国民栄誉賞を受賞している。また、師弟関係にあった栄和人と袂を分かった一連の報道で、一時世間を騒がせたことがある。
5分後、伊調馨がキーワードであることを決定づけたのはギョニ子の発見だった。
「重賞インフォメーションのサウジアラビアロイヤルカップ。冒頭のデータがステラヴェローチェを示唆しているわよね?」
タコ社長が応じる。
「なるほどなあ。過去の優勝馬10頭は、全馬が前走1着・・・その切り口でもよさそうなもんだ。ところが、0.3秒差以上の着差をつけていたと切り口を変えることで、ステラヴェローチェが例外になるって寸法だ」
ギョニ子が頷いて続ける。
「そうなの。で、ステラヴェローチェを挟む2年の勝利馬をみてみたわ」
2021 国枝栄(コマンドライン)
2020 ステラヴェローチェ(横山典弘)
2019 石橋脩(サリオス)
「国枝栄には国民栄誉賞の『国』と『栄』があるわ。国枝姓はそのまま、直近の国民栄誉賞受賞者、国枝慎吾よね?」
みんながうんうんと頷く。ギョニ子が続ける。
「一方、2019年の石橋脩は、新首相の石破茂だわ。国民栄誉賞を表彰するのは、内閣総理大臣よね?」
みんながおおという声を挙げた。
サウジアラビアロイヤルカップのデータを、ステラヴェローチェが浮かび上がる切り口にすることで、国民栄誉賞、すなわち伊調馨を暗示するというカラクリだ。
「アルアル馬券でいいんじゃないでしょうか」
マスターが落ち着いた口調でいった。
「同じヴェローチェのアルテヴェローチェに、断然人気のアルレッキーノ。この2頭のワンツーならアルアル馬券。伊調馨が所属するのは、旧社名が綜合警備保障・・・」
「アルソック!!」
ほぼみんなが同時に発し、店内がどっと沸いた。旧綜合警備保障。現在の社名はALSOKだ。
スナック忘れな草 勝負馬券
サウジアラビアロイヤルカップ
◎3番 アルレッキーノ
〇1番 アルテヴェローチェ
馬連:1-3 1点
■ 毎日王冠
「さあ、次は毎日王冠だな」
10分間の休憩後、タコ社長が口を開いた。
「しんちゃん、おめえさん何か推しがあるだろう?」
図星だった真一郎は、ペロリと舌を出してからポーンとボールを投げた。
「まずは単純思考のネタなんですが、いちょうステークスのクラリティスカイから、マテンロウスカイなんてどうでしょう。同じ横山典弘でもあります」
2014 いちょうステークス(重賞)
5-06 クラリティ(スカイ)(横山典弘)
毎日王冠
6-10 マテンロウ(スカイ)(横山典弘)
「うーん、横山パパか・・」
ボールを受けたタコ社長だが、すぐには投げ返してこなかった。
「木曜日の東京盃だったかな? チカッパが勝ってるんだよなあ・・」
10/3(木)
大井11R 東京盃
4-06 チカッパ(横山典弘)
1日から3日連続で交流重賞があった大井競馬。最終日の東京盃は、JRAのチカッパが勝利していた。鞍上はマテンロウスカイと同じ横山典弘。同騎手のもう一丁に対し、タコ社長は不安感を示したのだ。
10分後、真一郎に救いの手を差し伸べたのは、マスターだった。
■ リオデジャネイロ
「しんちゃん。やはり伊調馨がキーパーソンかもしれませんよ。彼女のオリンピック4連覇。実は、最後の4連覇目だけ階級が違うんです」
マスターの言葉に、みんなが虚を突かれた表情になった。
オリンピック3連覇で国民栄誉賞を受賞した吉田沙保里に対し、伊調馨の受賞は4連覇達成後であった。ネームバリューやスター性という点において、どうしても伊調馨は一枚落ちる。彼女の階級について、誰も即答できないのも無理はなかった。
マスターが続ける。
「2004年アテネ、2008年北京、2012年ロンドン。ここまでは63キロ級でした。最後の2016年リオデジャネイロ・・・・・階級は58キロ級でした!」
マスターの最後の言葉が号砲かのように、みんなが一斉にスマホを操作した。毎日王冠に58キロの馬がいるはずだ。
「エルトンバローズ、マテンロウスカイ!」
真一郎が叫んだ。
<毎日王冠 58キロ>
6-10 マテンロウスカイ(58キロ)
8-14 エルトンバローズ(58キロ)
じりっじりっと、マテンロウスカイ包囲網が狭まっていく。
■ マンハッタン
10分間の休憩を申し出たのは、タコ社長だった。みんながトイレに行ったりしている間、熱心にスマホを見ていた。
みんなが揃ったのを確認し、タコ社長が口を開いた。
「重賞インフォメーションの動画、3回見直したぜ・・・間違いねえ・・・マテンロウスカイをちゃんと示唆してるぜ」
みんながごくりと喉を鳴らし、タコ社長を見据えた。
「重賞インフォメーションの過去優勝馬。ナレーションの中に登場するのは全部で7頭だ」
<重賞インフォメーション 過去優勝馬>
※ナレーションに登場する馬
サウジアラビアRC
2014(いちょうS)
サトノフラム
クラリティスカイ
毎日王冠(2015)
エイシンヒカリ
アンビシャス
ヴァンセンヌ
京都大賞典(2018)
シュヴァルグラン
サトノダイヤモンド
「ところがこの7頭の中で、血統背景が紹介された馬が一頭だけいる。いちょうステークスのサトノフラムさ」
ナレーション
「近親にGⅠ5勝馬タイキシャトルがいるマンハッタンカフェ産駒サトノフラムが、圧倒的一番人気に支持された」
みんながなるほどと声を挙げた。
「ただ一頭血統について語られたサトノフラム。もちろんサインだろうぜ。タイキシャトルといやあ、岡部幸雄っつうイメージだが、GⅠ初勝利は横山パパだ!」
1997 第14回 マイルCS
(タイキシャトル)(横山典弘)
※翌年岡部幸雄で連覇
毎日王冠
6-10 マテンロウスカイ(横山典弘)
「そしてマンハッタンカフェ。マンハッタンといやあ摩天楼だろ!」
サトノフラム(父マンハッタンカフェ)
毎日王冠
6-10(マテンロウ)スカイ
マンハッタン ≒ 摩天楼
みんながおおという声を挙げた。
不自然なただ一頭の血統紹介。きっちりとマテンロウスカイに結びつく。
このあと、仕上げのボールを投げたのはギョニ子だった。大井競馬の重賞イベントもマテンロウスカイを予告しているという。
「アントニオ猪木さんを使ってきた『1.2.3ダート』・・・ちょっと不思議な感じがしてたんだけど、毎日王冠へのサインなら納得だわ」
みんながギョニ子の次の言葉を待った。
「マテンロウの馬主は寺田千代乃・・・アート引越センターよ!」
みんながおおという声を挙げて、満場一致でスナック忘れな草の勝負馬券が決まった。
スナック忘れな草 勝負馬券
毎日王冠
本命:10番 マテンロウスカイ
単複:10番
~~~ここから追記~~~
■ 若手騎手競走
昨日Xでポストしたように、
ジャパンダートクラシック優勝馬、
フォーエバー(ヤング)の1番が「若手」騎手競走で1着
10/5(土)
新潟7R(若手)騎手競走
(1-01)ヒルノデプラーツ 1着
柳の下にドジョウは2匹いないのが常ですが、
大江原比呂騎手なら穴で一考
<10/5(土)乗り替わり>
東京1R 4番
大江原比呂 → 永野猛蔵
東京2R 5番
大江原比呂 → 菅原明良
東京8R 1番
大江原比呂 → 野中悠太郎
~~~
10/6(日)
新潟7R(若手)騎手競走
(1-01)メリ(トリオ)(大江原比呂)
減量による脱水症状のため乗ることができず、
昨日は3名の騎手(トリオ)に迷惑をかけた大江原比呂騎手
今日の3鞍は11番、1番、5番で、
昨日とかぶっている「1番」もプラスか
ここが不発なら、もうひとつのかぶり馬番、
新潟最終の5番サリーチャンを買ってみます
■ 藤森S
今日4頭が出走の、
ケイアイスタリオンの配置に注目
<10/6(日)ケイアイスタリオン>
京都10R 藤森S 16頭
1-01 ケイアイロページ(正1)
8-16 クインズメリッサ(逆1)
新潟11R トルマリンS
1-01 クインズミモザ(正1)
京都11R 京都大賞典
2-02 ケイアイサンデラ
~~~
正逆1の3頭から、
藤森Sの16番クインズメリッサを選択
馬連・ワイド:14-16
ワイド:16-(4.8.13)
■ グリーンチャンネルC
グリーンチャンネルのCMキャラクター、
井上咲楽(2022~)
CMキャラクター就任の2020以降、
グリーンチャンネルC当日に井上姓の馬主の馬が出走は初
東京5R 2歳新馬
1-01(グリー)ティ(ン)グデー(井上久光)
→「グリーン・井上」
東京10R グリーンCC
(1-01)ゼットリアン
人気はありませんが、東京ダ1600は、
昨年のヒヤシンスSで2着と好走歴あり(0.1.0.0)
人気どころへと、同郷の柴田善臣先生が乗る、
4番ショウナンライシンへも
ショウナンライシンにサイン的根拠はありませんが、
人気がなさすぎなので狙ってみます
馬連・ワイド:1-(3.4.5.6.12.13.15.16)
■ 京都大賞典
JRA70周年記念
第59回 農林水産省賞典
京都大賞典(GⅡ)
JRA70周年記念競走も、いよいよこれがラスト
くろたんがたびたびポストしているように、
馬連の出目が連動しています
3月10日
金鯱賞(GⅡ)
馬4-3-6
3月23日
日経賞(GⅡ)
馬(6)-10-5
4月14日
アンタレスS(GⅢ)
馬(10)-16-1
4月27日
テレビ東京杯青葉賞(GⅡ)
馬7-15-(16)
5月5日
新潟大賞典(GⅢ)
馬(16)-13-1
6月9日
函館スプリントS(GⅢ)
馬4-10-(13)
6月30日
ラジオNIKKEI賞(GⅢ)
馬5-1-(4)
7月7日
プロキオンS(GⅢ)
馬11-(5)-(1)
7月28日
北海道新聞杯クイーンS(GⅢ)
馬12-(1)-7
10月6日
京都大賞典(GⅡ)11頭
1番 サトノグランツ ?着(正12)
7番 ディープボンド ?着
いずれも有力馬で、
あっさり連動コンプリートがありそう
ところでJRA70周年記念の全10競走は、
同条件(トラック・距離)のペアが3組あります
●芝2000
金鯱賞(GⅡ)
枠4-3-5
馬4-3-6
新潟大賞典(GⅢ)
枠8-7-1
馬16-13-1
●芝1800
ラジオNIKKEI賞(GⅢ)
枠5-1-4
馬5-1-4
クイーンS(GⅢ)
枠7-(1)-(5)
馬12-(1)-7
●芝2400
青葉賞(GⅡ)
枠4-8-8
馬7-15-16
京都大賞典(GⅡ)
4枠? 8枠?
7番?
グレードが違う金鯱賞と新潟大賞典では枠番も馬番も連動がなく、
グレードが同じラジオNIKKEI賞とクイーンSでは枠番も馬番も連動あり
グレードが青葉賞と同じ京都大賞典なので、
枠番、馬番いずれも連動するほうに賭けてみます
置きに行くならディープボンドやブローザホーンですが、
ここは4枠4番シュヴァリエローズで攻めてみます
◎4番 シュヴァリエローズ
馬連・ワイド:4-(1.7.11)6点
■ 凱旋門賞
あのディープインパクトもオルフェーヴルも跳ね返された、
難攻不落のフランスGⅠ
JRAのGⅠ未勝利馬が勝つとは考えにくいですが、
期待しちゃおうかなと思わせるのがこの隠れ取消
東京4R 枠順確定前取消
シャドウメテオ
(冠名+【流星】)
東京9R 枠順確定前取消
ミステリーウェイ(前走11番)
10番/11G(外)シンエンペラー
(坂井【瑠星】・矢作芳人)
京都大賞典のデータ分析に、
「坂井瑠星・矢作芳人」師弟コンビでの重賞初制覇、
ドレッドノータスの名が三度登場もプラス
2015(京都2歳S)
ドレッドノータス(武豊・矢作芳人)
2024(京都2歳S)
(外)シンエンペラー(Jモレイラ・矢作芳人)
坂井瑠星ではない騎手で、京都2歳S制覇が一致
2020年の凱旋門賞を勝ったソットサスの全弟と、
血統的にもワンチャンあるかも?
相手筆頭には牝馬のブルーストッキング
単勝:10番(外)シンエンペラー
馬連:10-(1.4.6.7.8.9.12.13.14)
ワイド:7-10
※トップ画像引用改変:NumberWeb
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?