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スナック忘れな草~ナリタセンチュリー・ダービー注目馬編~

トップ画像引用:JRAホームページ


■ 揺さぶられるGK

2024年5月19日(日)午後4時
-東京都某区 スナック忘れな草-

スナック忘れな草の店内には、どんよりとした空気が漂っていた。東京中のため息を集めて圧縮したような重苦しさだ。

「荒れて取れねえ、固くて取れねえか・・・」

タコ社長はそう言うと、禿げあがった頭を右手でつるりとなでた。

単勝2万円台のテンハッピーローズが勝ったヴィクトリアマイル。オークスでは一転して、チェルヴィニア、ステレンボッシュ、ライトバックという、単勝2人気、1人気、3人気の固い決着だ。

「揺さぶられていますね」

マスターが渋面で言った。みんなが力なく頷く。

大阪杯から春天までは、ローシャムパーク2着、ステレンボッシュ1着、コスモキュランダ2着、ブローザホーン2着と連対馬を指名できていた。

それがどうしたことだろう。NHKマイルカップからは、ことごとく狙いが外れている。

右に飛べば左へゴールを決められ、左に飛べば右にズドンと決められる。それならジャンプしたらどうかと真上に飛べば、ゴロゴロと股の下を抜かれる。動きを完全に読まれている哀れなゴールキーパーのようだ。

こんな状態で反省会をしてもしょうがないだろうということで、みんな好き好きにスマホを見たり雑談したりして過ごした。

■ シックスセンス

「シックスペンスなんだよなあ・・」

タコ社長が言った。ペンスのところを強調しているのは、かつていたシックスセンスとの違いを言っているのだろう。

「あれはシックスセンスでしたね」

マスターが、やはりセンスのところを強調して応じた。この何気ないやり取りが、結果的に功を奏したようだ。

■ インティライミ

「今の会話を聞いてたからかもなんですが・・」

真一郎がポツリと言った。

「皐月賞馬ジャスティンミラノ。この馬の馬名には『インティライミ』がまんま入ってると思いませんか?」

みんなが手を止め会話を止め注目した。なるほど、「ティンミラ」の部分にインティライミがそっくり入っている。

「ディープインパクトの三冠、シックスセンスとインティライミがいるってことね?」

ギョニ子が言った。みんながうんうんと頷く。マスターが続いた。

「ディープインパクトの三冠。皐月賞が2着シックスセンス、ダービーがインティライミでした。菊花賞は・・・」

「アドマイヤジャパンね!」

すでに先回りしてスマホを見ていた麗子ママが言った。

「ジャパン・・・サンライズジパングがいるわ!」

みんながおおという声を挙げた。今年のダービー登録馬には、ディープインパクト三冠の2着馬が勢揃いしていることになる。

<2005 ディープインパクト三冠>

皐月賞 2着
シックスセンス 
→ シックスペンス

ダービー 2着
インティライミ 
→ ジャスティンミラノ 

菊花賞 2着
アドマイヤジャパン 
→ サンライズジパング

■ ディープインパクトの七冠

「ダノンエアズロック!」

タコ社長がパンと膝を叩いて言った。

「これってディープインパクトのラストラン有馬記念、ポップロックのことじゃねえか?」

ディープインパクト ラストラン
2006 有馬記念 
2着 ポップロック 
→ ダノンエアズロック

「もしかしたらディープインパクトの七冠、すべての2着馬がいるんじゃないですか?」

真一郎が興奮して言った。みんなはうんうんと頷きながら、すでにスマホを操作している。ジャパンカップの2着馬はすぐに見つかった。ギョニ子が言った。

「ドリームパスポート!これは追加登録のビザンチンドリームね!よくできてるわ!」

2006 ジャパンカップ
2着 ドリームパスポート
→ ビザンチンドリーム

これで三冠とジャパンカップと有馬記念。七冠中五つのレースの2着馬が見つかったことになる。残るは天皇賞(春)と宝塚記念だ。

■ リンカーン

少し難産ではあったが、天皇賞(春)のリンカーンもほどなく見つかった。皐月賞の結果から、騎手と調教師を利用した力技だ。

2006 天皇賞(春)
2着 リンカーン(横山典弘・音無秀孝

2024 皐月賞
1-01 サンライズジパング(音無秀孝
8-16 ダノンデサイル(競走除外・横山典弘

マスターが言った。

「サイン発信ゲート1番に音無秀孝。そして、馬場入場後に左前肢跛行を発症して競走除外となったダノンデサイルの横山典弘。まあ、強引ではありますがリンカーンがいたとしましょう」

みんながうんうんと頷いた。そうなると、残りはナリタセンチュリーだけである。

<ディープインパクト七冠>

●2005 皐月賞
2着 シックスセンス
→ (シックス)ペ(ンス

●2005 ダービー 
2着 インティライミ 
→ ジャス(ティンミラ)ノ 

●2005 菊花賞
2着 アドマイヤジャパン 
→ サンライズ(ジパング

●2006 天皇賞(春)
2着 リンカーン
横山典弘・音無秀孝

→ 2024 皐月賞
1-(01)(音無秀孝
8-16  (横山典弘)※競走除外

●2006 宝塚記念
2着 ナリタセンチュリー

●2006 ジャパンカップ
2着 ドリームパスポート
→ ビザンチン(ドリーム

●2006 有馬記念
2着 ポップロック
→ダノンエアズ(ロック

■ ナリタセンチュリー

ナリタセンチュリーは、10分間の休憩中にマスターが見つけていた。ダービー登録馬の中ではなく、意外なところにいるという。

「ナリタセンチュリーは見つける必要がありません!」

マスターはぴしりと言うと、みんなをぐるりと見渡した。みんなが注目する。

「来年2025年。それがナリタセンチュリーです!」

ひとり、またひとりとその意味に気づき、あっと声を漏らした。そうだった。来年は京都競馬場開設100周年記念の年ではないか。それこそが「センチュリー」なのだ。

2024 
京都競馬場 99周年

2025 
京都競馬場 100周年=センチュリー

「ディープインパクトは、牡馬三冠を達成した翌年、GⅠ勝利を4つ上乗せして引退しました。そのひとつが、ナリタセンチュリーを2着に従えた宝塚記念でした」

みんながうんうんと頷いた。

「今年はセンチュリーが2着した宝塚記念の一年前に該当しますから、ディープインパクトが三冠を達成した年。皐月賞でインティライミを含むジャスティンミラノ勝利は、それを暗示しているのでしょう」

2024=2005
ディープインパクト三冠達成年

皐月賞 ジャスティンミラ
→ インティライミ(ダービー2着)

「今年、ディープインパクト三冠のシナリオを使う。それにはもうひとつ理由があります!」

マスターはそこで指をひとつ立てた。

「今年の宝塚記念は京都開催。前回、京都開催だったのがディープインパクトが2着にナリタセンチュリーを従えた2006年だったのです!」

みんながおおという声を挙げた。

2006 宝塚記念(京都代替
ディープインパクト
2着ナリタセンチュリー

2024 宝塚記念(京都代替
※2006以来の京都開催

「そうなると、皐月賞でダービー2着馬インティライミを使ったのですから、今度は逆に皐月賞2着馬のシックスセンス・・・つまりシックスペンス起用が綺麗です!」

2024=2005
ディープインパクト三冠達成年

皐月賞 ジャスティンミラ
→ インティライミ(ダービー2着)

ダービー シックスペンス
→ シックスセンス(皐月賞2着)

みんながうんうんと大きく頷いた。

「インティライミは皐月賞不出走の馬だったわ」

麗子ママが言った。同馬は皐月賞には出走せず、500万下と京都新聞杯を連勝しダービーに臨んでいたという。

「一方シックスペンスは、スプリングステークス1着から皐月賞をパスしてダービーという謎のローテ。でも、ディープインパクト三冠を表現するという役割があるなら納得ね?」

みんながなるほどと頷き、スナック忘れな草のダービー注目馬が決まった。

スナック忘れな草 
ダービー注目馬
シックスペンス
(≒ 2005皐月賞2着馬 シックスセンス

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