日本で一番でかい豪華客船・飛鳥IIに(アフター)ロケハンに行った話①

豪華客船といえば、誰もが一度は物語の舞台として憧れるロケーションである。
煌びやかなフロアに流れる優雅な時間、海上という逃げ場のない閉鎖空間、数多の乗客と船員が否応なしにひとところに乗り合わせる都合のよさ。同様のロケーションとしては豪華列車等があるが、兎に角、癖のある登場人物達をひとつの事件に巻き込むのに大変都合がよい、かつ映える場所である。全シナリオ書きにとってこれほど魅力的な場所があろうか、いやない(このテキストは基本主語大きめでお送りします)。

かくいう私もかなり前に、豪華客船を舞台にしたシナリオを2本ほど書いた。1本はTRPGシナリオ、1本は謎解きゲームシナリオで。どちらも大きな不備の話は聞かず、ひとまず普通に楽しんで頂けている認識である。
しかし私のなかに心残りがずっとあった。これらのシナリオ、舞台のロケハン(現地調査)をまったくしないで書いたのである。
大学で漫画を学び新卒で入った会社で地域周遊イベントの企画運営を学んだ身には、題材にする場所のロケハンの重要性が叩き込まれている。ホストクラブ題材のシナリオを書くにあたっては、一度は足を運ばねばなるまいと歌舞伎町ホストクラブに友人達と乗り込んだりもした。当然非日常空間ほど取材の重要性はあがる。豪華客船だって、ロケハンしてしかるべき。
しかし豪華客船。ああ豪華客船。ちょっくらいってきますかね!!の気概はあれど財布事情が許さない。だって豪華客船だから。当時社会にでて間もないピヨピヨの私には、ホストクラブの体験にいくことはできても優雅な船旅のうん十万を捻出することは難しかった。

というわけで、ネットにあった資料と溢れる想像で豪華客船の中を描いてTRPGシナリオを作ったのが約8年前。
月日は流れ、私は社会に少しだけ慣れ、少しだけ金稼ぎの方法を覚え、まだTRPGを遊んでいた。
ならば……行くっきゃねぇよなァ!?

くそでか船

飛鳥II。日本最大、紛う事なき豪華客船である。
話をしたら食いついた母と共に、2022年の秋に乗り込むこととなった。
そう、これは…過去に作ったシナリオのロケハン…題してアフターロケハンに臨む、一般ピーポーの飛鳥II物語(レポ)である。


なおご時世柄、コロナ対策はバッチリである。というか驚くほど徹底されていた。
参加者は一週間前からの体温記録を求められ、当日はワクチン二回接種した証明もしくは数日中に自分で受けた検査での陰性証明の提出が求められる。さらに乗船直前に、船着き場で乗客全員のPCR検査の実施。なんと船着き場に検査用の機械があるらしく、本当に飛鳥Ⅱの横で検査を行う。結果がでるまで約2時間拘束されるのだが、そこで陰性結果がでたものが乗船を許される徹底ぶりだった。
なおこの検査で陽性がでた場合、キャンセル料はかからないが同乗者含め全員乗船不可となるので、私は数日前から気が気ではなかった。なんせ母が滅茶苦茶楽しみにしていたので、私が陽性でNG食らった場合本気で泣いて悲しむことが想像できたからだ。母は飛鳥Ⅱの横浜寄港日を調べて写真を撮りに出掛けるほど飛鳥Ⅱに入れ込んでおり、乗船が夢だったらしい。クルーズに誘うまで母にそこまでの飛鳥Ⅱへの熱意があったとは知らず、アフターロケハンは思わぬ親孝行となったのだがそれはそれ、これはこれ。

我々は無事検査も越え、飛鳥Ⅱに乗船、2泊3日の伊豆諸島クルーズへと旅立つことになった。
しかしこのとき、日本の9月の風物詩、台風もまた伊豆諸島に迫っていた……
(次回へ続く)

飛鳥Ⅱへ乗り込むためのタラップ。飛行機のように乗り込むことを知る。アニメの影響でなんかでかい階段から甲板に乗り込むのかと思ってた
出港前の準備らしきところ。飛鳥Ⅱは5デッキが乗客の立ち入れる最下層で、それより下は乗員用らしかった。写真で言うと手すりが着いたデッキが見える階が7デッキにあたる。結構船底ギリギリまで乗客用だな…


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