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ジェロニモ自伝―第1部 アパッチ族 第5章 家族

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目次

私の祖父のマコは我々の族長であった。私は祖父を見たことがないが、私の父はしばしばその老戦士の体の大きさ、逞しさ、そして、 賢さについて私に話した。主な戦争の相手はメキシコ人であった。メキシコ人はインディアンの他の部族ともいくつかの戦いをしていて、メキシコ人の街々と長い間にわたって平和が保たれることは滅多になかった。

マコは私の父がまだ若き戦士だった頃に亡くなった。そして、マンガス=コロラドがベドンコヘ=インディアンの族長になった(マコはネドニ・アパッチ族の族長であった。彼の息子(ジェロニモの父)はベドンコヘ・アパッチ族(ジェロニモの母)と結婚して母方の部族に加わったので世襲によって支配権を得る権利を失った。こうした事実からジェロニモの祖父がたとえ族長であってもジェロニモは世襲による権利によって族長になれないように思える。ジェロニモの父が族長になれず、マンガス=コロラドが族長になったことも示されている)。私が幼い少年にすぎなかった頃、しばらく病気になった後、私の父は亡くなった。父が亡くなる時、介添人が父の目を閉じさせ、最高の衣服を整え、父の顔を鮮やかな色で塗り、贅沢な毛布で体を覆い、愛馬に鞍をつけて、その前に父の武器を載せて、その馬を後ろに従わせながら父の勇敢な行為を称える嘆きの叫びを上げながら山の中にある洞窟に遺体を運んだ。彼らは、部族の慣習に従って父の馬を屠り、その他の父の財産をすべて分け与えた(アパッチ族は亡くなった近親者の財産を受け継がない。彼らの不文の部族法はそれを禁じている。そうしなければ子供達やその他の近親者達がたくさんの財産を持つ父や近親者の死を喜ぶようになるからである)。その後、父の遺体は洞窟に収められ、武器がその横に置かれた。石が積まれて父の墓は隠された。栄光に包まれて父は終の棲家にいて、松の間を吹き抜ける風が死せる戦士のために低い鎮魂歌を歌った。

私の父が亡くなってから私は母の世話を引き継いだ。部族の慣習では夫の死後にすぐ再婚することになっていたが母は再婚しなかった。しかしながら、子供を持つ寡婦は夫が亡くなった後、2年から3年は独身のままでいるのが普通であった。しかし、子供を持たない寡婦はすぐに再婚した。戦士が亡くなった後、寡婦は実家に帰って父や兄弟によって誰かに与えられたり売られたりした。私の母は私と一緒に住むことを選んだ。そして、母は再婚を決して望まなかった。我々は古い家の近くに住み、私が母を支えた。

1846年、17歳になった私は戦士達の会議に加わった。私はとても幸せだった。というのは好きな場所に行くことができたし、好きなことは何でもできたからである。いかなる人物の支配下にも私は置かれなかったが、我々の部族の慣習によって私は会議に認められるまで遠征の栄光を分かち合うことが許されなかった。この後、ようやく機会が示されると、私は部族民とともに遠征に出られるようになった。それは名誉なことだった。私はすぐに戦闘で部族民のために役立ちたいと望むようになった。私は戦士達と一緒に戦うことを切望していた。

私にとって最も大きな喜びは、ノ=ポ=ソの娘である美しいアロープと結婚できるようになったことだ。彼女はすらりとした繊細な少女であり、我々はずっと長い間、恋人同士であった。会議が私に特権を与えた後、私は結婚の許しを得るために彼女の父に会いに行った。どうやら我々の愛に彼女の父は関心を抱いていなかったようだ。おそらく彼女の父はアロープを手元に置いておきたかったようだ。なぜなら彼女は気立ての良い娘であったからだ。いずれにせよ彼女の父親はたくさんのポニーを渡すように求めた[結婚と引き換えに婚資を渡すのは多くの文化でよく見られることである]。私は返事をしなかったが、数日後、ポニーの群を彼女の父のウィグワムの前に連れて行って、代わりにアロープを連れて帰った。我々の部族では、結婚の儀式に必要なことはこれですべてである。

アパッチ族のプリンセス、チリカワ・アパッチ族の族長ナイチェの娘

私の母のティピからそう遠くない場所に我々は新しい家を持った。ティピはバッファローの皮でできていて、その中にはたくさんの熊の毛皮、ピューマの皮、その他の狩りの戦利品、槍、弓矢があった。アロープは多くの小さなビーズの装飾品を作り、鹿皮でいろいろ作って我々のティピに置いた(ビーズはメキシコ人から手に入れていた。またアパッチ族はメキシコ人からお金を得ていたが、それを価値のないものだと見なして子供のおもちゃとして与えたり、捨ててしまったりした)。彼女はまたたくさんの絵を描いて我々の家の壁に貼った。彼女は善良な妻であったがあまり体が強くなかった。我々は父祖の伝統に従って幸せであった。我々の間には3人の子供達が生まれた。子供達は私がそうしたように遊び、ぶらつき、働いた。

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第2部 メキシコ人 第6章 カス=キ=ヤ 前半 虐殺に続く

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