アーサー・コナン・ドイル北極日記5月31日
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5月31日月曜日
カレドニア運河[訳注1]にクジラがいて、平底船や馬がクジラを驚かせないように我々が戦々恐々としているという夢を見た。クジラは17頭いてすべてがトックリクジラで橋の下にいた。非常に面白い夢だ。今朝、風向きは東北東であり、とても良く、水の色が緑がかっていてさらに良い[兆候だ]。
ところで私は面白い夢についてまだ半分も述べていない。運河の橋の下で我々がクジラを殺しに出ている間、私は2時の鐘が打つのを聞いた。すると、私の最終試験が1時に始まる予定だったことが私の頭に突然浮かんだ。恐ろしくなって私はクジラを放棄して大学に向かって走った。門番は私が試験室に入るのを拒んだ。凄まじい取っ組み合いの後、彼は私を叩き出した。その時になっても私は目覚めておらず、どのような問題が出題されたか見られるように誰かが私に試験用紙を渡す様子を夢で見ていた。四つの問題があったが私は真ん中の二つの問題を忘れてしまった。最初の問題は「ベルリン近くで深さ10マイル[16km]の水域はどこか」であった。最後の問題は航海術に関するものであり問題は言葉通りに言えば「1人の男とその妻とその馬が1隻のボートに乗っていた場合、妻が浸水させずにボートから男と馬を出すにはどうすればよいか」であった。私はこうした問題に悩み抜いて、医学の試験問題に航海術を出題するのは公平ではないと言った。それから私は試験用紙をグレイ船長に送って彼に解答を書かせた。そこで私は目が覚めた。非常に一貫した夢であり私はこれまで見た夢の中でも最も鮮明に記憶している。
今夜、前部マストの帆桁が繋環[訳注2]の故障のせいで急に傾き、動索が壊れた。我々は繋環を交換してすべてを4時間で復旧させた。すばらしい海の男の技だ。店長はマストの見張り台に登って、私は楽しげに揺らめく火の前でこれを書いている。扉のすぐ外でステュアートが最高級のテノールで「真夜中の海原における彼女の輝かしい微笑みは私をいまだに悩ませる[訳注3]」と歌っている。それは彼を真夜中に悩ませているように思える。それから彼はあれこれと言いながら残りの23時間を費やすのだろう。夜、デイヴィッド船長が[ホープ号に]やって来て、クジラに関する小冊子を私に貸してくれた。夜、私は「ついばみ」実験をした。私はパンを4切れ取って、1枚はストリキニーネ[訳注4]、1枚は石炭酸、1枚は硫化亜鉛、そして、1枚はテルペンチン[訳注5]に浸した。それからどれがすぐに効果を示すか見ようと、それらを鳥に投げてみたが、驚くことに最も年老いた奴が前に出てきて4切れすべて呑み込んでしまったが、不思議なことに何も調子が悪くなった様子はなかった。
訳注
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