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うちなーぐち(おきなわ語)の伝統的表記は「漢字平仮名まじり」#8


御総様(ぐすーよー。皆様)。

うちなーぐちの表記は本当に色々な表記があり、なー銘々、つまり多様性という意味では良いでしょうが今後、教科書を作成したり、うちなーぐちの書籍などを普及していく上では、やはりある程度統一した方が良いのではと思います。


私はうちなーぐちを大学で教えたり(元・沖縄キリスト教学院大学と沖縄国際大学にて非常勤講師)

うちなーぐちの本(下記リンクより参照下さい)

https://books.kenkyusha.co.jp/book/978-4-327-38472-2.html

を執筆したり、

webサイトにうちなーぐち辞典を作ったり(下記リンクより参照下さい)

https://kozaweb.jp/culture/uchina.html

さらに、沖縄タイムスワラビー(下の写真は2011年の記事ですが、サンプルとして掲載します)

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に、うちなーぐち翻訳文を書いたり(もう12年になります)など、どうしても、うちなーぐちの文章を書かないといけない立場に追い込まれてきたので、文科省や沖縄県庁などが、うちなーぐちの表記法を定めるまで待つことはできませんでした。

ここ20年の間、悩みに悩み、色々な文献を研究し、行きついた結論が先人に学ぶでした。


先人達の残したうちなーぐち表記は大きな腰当(くさてぃ。根拠)になります。


まず、そもそも私の大きな腰当はやはり『沖縄語辞典」(国立国語研究所 1963)です(下記リンクより辞典全ページダウンロードできます)

https://mmsrv.ninjal.ac.jp/okinawago/

そのp21に「ー 組踊り、琉歌の表記は漢字平仮名まじり文であるが、「おもろ」のそれよりも整備されている ー」とあります。


はい、論より証拠、4つあげたいと思います。


① うむるそーし
「うむるそーし(「おもろさうし」は表記であり発音ではない)」が最初に書かれたのは1531年ですが、表記はひらがなと多少の漢字で表記されています。
下記那覇地域マップ中学校版サイト参照

http://www.nahaken-okn.ed.jp/naha-c/webmagic/html/062_nt2c.html

② 組踊
組踊(くみをぅどぅい)が作られたのは1719年ですが、当時の台本はなく、宜野座村松田に1818年の書写本『本部大主』が残されており、漢字平仮名まじり文です。これが現存する一番古い組踊本です。下記リンク先は平成 30年度琉球大学附属図書館・琉球大学博物館(風樹館)企画展の冊子で、その11ページに『本部大主』写本の写真があります。
https://www.lib.u-ryukyu.ac.jp/lib_uploadfile/exhibition/2018_ginoza.pdf

③ 琉歌百控乾柔節流
琉歌百控乾柔節流(るーかひゃっこーけんじゅーせつりゅー)が書かれたのは1795年です。漢字平仮名まじり文です。
下記琉球大学附属図書館サイト参照下さい

https://shimuchi.lib.u-ryukyu.ac.jp/collection/iha/ih07401/1

④混効験集
混効験集(こんこーけんしゅー)は1711年に書かれた、うちなーぐち古語の辞書。これは要するに、うむるそーしの言葉を説明する辞書なので、ひらがな文が主ですが、うむるそーしと同じく多少の漢字もまじっています。
同じく下記琉球大学附属図書館サイト参照下さい

https://shimuchi.lib.u-ryukyu.ac.jp/collection/iha/ih08401/1

はい、うちなーぐちが漢字平仮名まじり文で書かれた資料はもっとありますが有名な資料4つをあげてみました。


うちなーぐちをカタカナのみで書くのは伝統的表記とはいえないでしょう。


例 ウチナー ウチナーンチュ ウチナーグチ チュラカーギー ナンクルナイサ など。


どうしてうちなーぐちはカタカナで書かれたものが多いのか?


私の推測ですが、日本語の方言だと考えている人が多数いるからでしょう。


つまり日本語の表記では外来語はカタカナ(例 テレビ、ラジオ)で書くのが表記のルールですが、同じように地方の方言もカタカナで書くのが慣例となっており、特に日本の諸方言の学術論文においてはカタカタ表記がかなり目立ちます。少し例をあげます。


1ベコ(東北方言 牛)
2ウラー(神奈川相模方言 私)
3セッセツ(愛媛県宇和島方言 たびたび)
4ソゴワシ(薩摩方言 たびたび))

 
など、これらはほんの一部で上記方言などの論文を調べてみて下さい。かなりカタカナ表記が目立ちます。


はい、我々の琉球諸語(奄美語 国頭語 おきなわ語 宮古語 八重山語 与那国語)は日本語と姉妹語です。


つまり姉妹語ではあるが日本語の方言ではありません。日本語と別の言語だというのはUNESCOやEthnologueなど世界の言語研究機関が認識する常識なのです。

例えば下記の
Ethnologueサイトにアクセスして見てください。

https://www.ethnologue.com/language/ryu/

Ethnologueはうちなーぐち(おきなわ語)を
方言ではなく言語として扱っているのです。

はい、話を戻して、うちなーぐちをカタカナで表記するというのは我々の先人達が書いてきた漢字ひらがなまじり文とは違う表記になります。


上で示したように「うむるそーし」が書かれた1531年以来我々うちなーんちゅはうちなーぐちを漢字ひらがなまじり文で500年近くも書いてきた歴史があるのです。


けれども、ひらがなは日本のもので、これらを表記に使うのであればうちなーぐちは日本語の方言だし、カタカナでも何でも良いのでは?


と考える人もいるでしょう。


それではアルファベットは誰が発明したのでしょうか?


これは現在のレバノン地域のフェニキア人が発明したと言われています。

それなのに欧米の言語はほぼアルファベットを用いますよね?


英語もフランス語もドイツ語など、欧米の言語は全てフェニキア人の用いた言語の方言なのでしょうか?


そうではないですし、仮にそうだとしても、かなり語彙や文法などが違うのになぜ方言として扱いたいのでしょうか?


琉球諸語と日本語は姉妹語だというのは言語学では常識です。

ただかん違いしてほしくないのは、何度も述べますが、琉球諸語は日本語の方言ではなく独立した言語群だということです。


ですから、うちなーぐちをカタカナで書くというのは、日本語の方言だと自ら認めていることに繋がると私は考えます。


それだけではなく上記500年近くもの漢字平仮名まじり文で書いてきた伝統的表記を知らないということが大きいでしょうけれど、これでは我々の伝統が途切れてしまいます。


うちなーぐちを方言ではなく独立した言語だと認識していただけるのならば、500年近く我々の先人達が書いて来た漢字平仮名まじり文で、うちなーぐちを表記してもらえればうちなーぐちの本来の姿がとり戻されると私は思います。


良たさる如、御願さびら(ゆたさるぐとぅ、うにげーさびら。宜しくお願いします)。

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