【小説もどき】妖星郷ネクロフィレイン

歌詞解説兼小説もどきです。

物語の題材は生と死の狭間、旧約聖書のノアの方舟から着想。
ノアの方舟は実体のある舟であるとであるとされるが、方舟とされるものは見つかっていないのであれば『方舟』とは人の選別をぼかした表現なのかもしれないとして解釈した上、適当につけていた夢日記と良い感じにブレンドしたオリジナルのストーリーです。ノアの方舟の言葉のイメージとなんとなくの筋書きからインスピレーションを得たもので、もともとのノアの方舟のお話からの引用などは一切ありません。

今際の際、歪んだ現実と後悔の滲み出る幻想。
晴間からは願望が照らし出され、柔らかな陽の光は優しく私を包み込むようで、その優しさに包まれた私は自然といくつかの願いを捧げていました。

『私』の命は幾ばくもなく、命の灯火が消え落ちるのならば最後には愛した人と共にいたい、という願望が爆発します。その願いに答え、愛する人は眼前に現れました。愛する人はとても優しい人だったのでしょう。

しかしながら、『私』の周りには雨のように人の命が降り注ぐのが見えていました。愛する人はそれが見えていないようで、私にはまるで生きるべきものと死すべきものが明確に隔たれているように感じました。

私は、愛する人が好きだと言っていたメヌエットを歌いました。関係があった当時、愛する人は『君のメヌエットを子守唄にするとよく眠れる』と言ってくれたからです。私は、優しくこう言いました。「こんなに静かな夜だから、よく聞こえるでしょう?」と。

それは優しさでもあり、諦めでもあり、皮肉のようでもありました。降り注ぐ命からくる不快感、それが物に当たるたびに鳴り響く不快な音。それらを聞くたびに、私は言い知れぬ心の痛みを感じつつも、『お前は死人だ』と気付かせようとしているようにも感じました。この天啓にも思えるような意図を感じ取った私は、私の使命は『この痛みを堪えて愛する人を現世に送り届ける』ことなのだと確信しました。

青いステンドグラスが立派に映える駅のホーム。以前夢の中で見た時はとても鋭い輝きを放ち、人が行き交っていましたが、この物語の元になった夢では、放置されて朽ちていたのが一目でわかりました。一見すると廃駅と化したホームの中からは、時代遅れな汽笛の音が鳴り響いていました。

きっと、この汽笛の音を鳴らしている汽車に乗れば、本当に死んでしまうのだろう。そう思いましたが、今も生の世界で待つ愛する人に生きてほしいと心の底から思っていた私は、肉体も魂も全て脱ぎ捨てて、少し冷たく突き放します。手を離すよう促したのはずるいやり方だなと思いながらも、こうすればきっと忘れないだろう、と自分を納得させました。めでたしめでたし。





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