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8人の王子がいたから八王子?!

 皆さんは、八王子の名前がなぜ”はちおうじ”なのか疑問に思ったことはありませんか。「8人の王子がいたの?」と考えたことはありませんか。ここでは、八王子の名前の由来とともに、八王子の歴史や文化に触れられる施設を二つご紹介します!


1.八王子の名前の由来

概説

 八王子という地名は東京だけでなく、埼玉県や新潟県、愛知県など全国に分布しています。それは、牛頭天王(ごずてんのう)とその子である八人の王子(八王子)を祀る信仰が八王子神社を中心とした地域から広がったからです。八王子信仰が広まり、八王子神社・牛頭山神護寺が建立され、1582年をすぎたころに北条氏照が深沢山に新しい城を築きました。16世紀半ばには、その周辺の地域(元八王子町)は「八王子」と呼ばれていたことが分かっています。

八人の王子

 牛頭天王と頗梨采女(はりさいじょ)との間に八人の子がいるとされ、その八人子を牛頭天王の眷属(けんぞく)神とし、祀っているのが八王子神社です。彼らは八方の各方位を司り、病気や災厄をまぬがれるご利益をもたらすと信じられていたそうです。「王子」と言いますが、女性も存在します。彼らの名前の表記は二通りあります。

  • 総光(そうこう)天王:太歳神(たいさいしん)

  • 魔王(まおう)天王:大将軍(だいしょうぐん)

  • 倶魔羅(くらま)天王:太陰神(たいいんしん)

  • 得達神(とくだつしん)天王:歳刑神(さいぎょうしん)

  • 良侍(りょうじ)天王:歳破神(さいはいしん)

  • 侍神相(じしんそう)天王:歳殺神(さいせつしん)

  • 宅神相(たくしんそう)天王:黄幡神(おうばいしん)

  • 蛇毒気神(じゃどくけしん)天王:豹尾神(ひょうびんしん)

 つまり、八王子という名前が八人の王子に由来していることは、間違っていないのです。絵本、『八人の王子さま/八王子地名ものがたり』には、氾濫した案下川と水びたしになってしまった田畑を元通りにした第一王子、厄病神を追い払った第二王子など、八王子城の記録の中にあった八人の王子の物語を、楽しい絵とともにつづられています。

<参考>
・八王子市公式ホームページ「八王子市の名前の由来」,
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kankobunka/003/002/p005301.html(2023/11/30).
・レファレンス協同データベース「八王子市の名前の由来となっている八人の王子のそれぞれの名前を知りたい。」,
https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000186097
(2023/11/30).

2.八王子城跡

八王子城の歴史

 天正10年(1582)頃、小田原北条氏4代目である北条氏政の弟、北条氏照が築き、天正15年(1586)頃までに滝山城から移りました。平成18年4月には、日本城郭協会「日本100名城」に選定されました。

八王子城の特徴

①自然を巧みに使用した構造

 八王子城は少数でも守りやすい戦闘を意識した構造になっています。標高約460m、比高約200mの城山で、山のなかは滝や川、土塁、堀が多くあり、入り組んでいました。険しいところもあるので、この城を攻め落とすのには苦労したのではないか、自軍の兵士たちは生活しづらくなかったのか、自分ならどう攻めようか、など想像しながら歩くこともおすすめします。

②当時のものが残っている

 麓の御主殿など一部復元されているものもありましたが、落城後は徳川氏の直轄領、明治以降は国有林であったため、あまり人の手が加わっておらず、落城当時のまま保存されているものも多くありました。御主殿跡に向かう途中には、400年前の築城当時の石垣が残っていました。
 野面積という様式を用いており、戦国時代の石積様式を示すとても貴重なものです。定期的に発掘調査も行われ、御主殿跡では遺物が発見されています。中には、当時では珍しいとされていたベネチア産のレースガラスの破片が発見されており、ガイダンス施設で再現品を見ることもできます。

忌山と呼ばれた八王子城

 八王子城は、天正18年(1590)豊臣軍に攻め込まれ、わずか一日で落城してしまいました。八王子城跡には『御主殿の滝』があります。落城時には女・子供・兵士が自刃し、城山川の水は三日三晩その血で赤く染まったと言い伝えられています。

八王子城ガイダンス施設

 八王子城跡ガイダンス施設では、八王子城にまつわる展示だけでなく、かつて深く関わりのあった北条氏照についての展示もありました。施設内には、映像やパネルだけでなく模型の展示もあり実際に展示物を触ることもできました。また、ここでしか見ることのできない遺物も展示されています。

【御主殿から出土したベネチア産レースガラス器(再現品)】

 外には、周辺の散策マップが掲示されているため、施設内で紹介された場所を実際に見て回ることをおすすめします。

【ガイダンス施設周辺の散策マップ】
出典:八王子城跡散策マップ(web用)
https://www.hachioji-kotsu.co.jp/wp-content/uploads/2021/04/八王子城跡散策マップ.pdf

 私たちは、今回ガイドさんに説明していただきながら5〜11番の取材を行いました。「大手門」と呼ばれるかつてあった八王子城の正面口とされていた場所から始まり、北条氏照がかつて館としていた御主殿跡まで歩いて見学することができました。このエリアでは、ガイドさんと一緒でないと入ることのできない場所もあり、とても貴重な体験ができました。
 そしてさらに40分程歩くと11〜14番の八王子神社のエリアに入ります。なかにはここまで案内して頂けるガイドさんもいらっしゃるようなので、また機会があれば案内していただきたいです。
 みなさんも、このガイダンス施設で八王子城の歴史の知識を深め、当時の雰囲気を存分に味わうことのできる八王子城跡を散策してみてはいかがですか?

基本情報

開館時間:9:00~17:00
休館日:12月29日~1月3日(臨時休業あり)
入館料:無料
URL:https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kankobunka/003/005/p005205.html
所在地:〒193-0826 東京都八王子市元八王子町三丁目2664-2
アクセス:JR高尾駅北口1番バスのりばより、西東京バス「高尾の森わくわ くビレッジ」「宝生寺団地」「恩方ターミナル」「大久保」「陣馬高原下」「グリーンタウン高尾」「美山町」行きで、バス停「霊園前・八王子城跡入口」下車、徒歩約15分。土日祝のみ、JR高尾駅北口1番バスのりばより、「八王子城跡」行が運行。

<参考>
・八王子市公式ホームページ 「八王子城跡」,
https://www.city.hachioji.tokyo.jp/kurashi/kyoiku/005/bunkazaikanrenshisetsu/p005201.html
(2023/12/5).
・八王子城「公式ガイド」,
http://tensho18.jp/
(2023/12/5).

3.桑都日本遺産センター 八王子博物館”はちはく”

”はちはく”とは

 八王子の歴史と文化に出会える博物館。都内で唯一の「日本遺産」に認定されたストーリー「霊気満山 高尾山~人々の祈りが紡ぐ桑都物語」を紹介しています。

様々な工夫が施された4つのゾーン

①導入ゾーン
 外の通路壁面には、高尾山と織物をテーマにした巨大なイラストとプロジェクションマッピングの映像が流れており、繭から取られた生糸が八王子の歴史文化をめぐる冒険にでかける様子を楽しめます。きっと子供たちは釘付けになると思われます。
 館内正面では「はちはく」シンボルマークをかたどった大画面がお出迎えしてくれます。シンボルマークの部分に八王子の四季折々、歴史文化、日本遺産の構成文化財を紹介した3本のショート・ムービーが流れています。

②テーマ展示ゾーン
 このゾーンでは、八王子の歴史文化と日本遺産のストーリーが、18枚の魅力的なイラストとともに紹介されています。それぞれの内容が1つの部屋にまとまっているので、分かりやすく八王子を学ぶことができます。絵本の世界に訪れた気分で八王子の魅力を感じることができるでしょう。また、鑑賞する順序が設定されていないため、自分が見たいと思ったところを自由に観ることができます。

 例えば、高尾山の魅力を歴史や信仰、自然、観光、行事などの角度から紹介していたり、北条氏照の居城である滝山城と八王子城を比較することができます。さらには幕府に仕えた千人同心の活動を知ることができます。また、八王子の発展を支えた養蚕や機織り、現在に伝わる伝統芸能なども学ぶことができます。説明文だけでなく資料も数多く展示されているので、私たち自身も楽しく、分かりやすく歴史を学ぶことができました。

③企画展示ゾーン
 
私たちが見学に行った11月中旬には、企画展「桑都はちおうじ絵巻」が行われていました。こちらは、2023年11月4日・5日に開催された「日本遺産フェスティバルin桑都・八王子」にあわせてスタートし、12月17日(日)まで開催されました。
 展示品の中で私たちが最も興味を持ったのは、八王子城跡出土のベネチア産レースガラスです。「レースガラス」はベネチアのみで生産されたと考えられており、戦国時代の城跡では、八王子城跡から出土したレースガラスが唯一のものです。
 現在は、年末年始に合わせた企画展「はちはくでお正月」が開催されています。旧家に伝わる恵比寿・大黒天の像や縁起物のだるま、押絵羽子板などが展示されているようです。

④交流ゾーン
 
交流ゾーンでは、原始・古代から現在までの八王子の歴史を一度に知ることができる年表が展示されています。黒電話などむかしの道具を体験することもでき、直接歴史に触れることができます。また、はちはくに訪れた人々が八王子の情報を自由に書き込める「みんなで知ろう!八王子の情報マップ」という大きなホワイトボードが設置されており、身近な情報を共有しあうこともできます。

体験

 私たちは、館内に置かれている機織り機を体験することができました。こちらはスタッフの方に声をかければ誰でも体験することができます。私たちは初めての体験でしたが、使用方法も丁寧に教えていただけるので、安心して体験できました。

 また、八王子車人形の体験もすることができます。八王子車人形とは、江戸時代から伝わる人形芝居のことです。演者がろくろ車(箱車)と呼ばれる小型の台車に腰を掛けて人形を遣う、一人遣いの人形芝居です。こちらは実際に人形を持たせていただきましたが、想像以上に人形が重く、驚きました。
 実際に体験することで身をもって歴史と文化を感じることができ、とても良い機会でした。はちはくを訪れた際には、是非体験してみてください。

基本情報

開館時間:10:00~19:00
休館日:12月29日~1月3日、及び館内整理日
入館料:無料
URL:https://www.city.hachioji.tokyo.jp/shisetsu/003/hachihaku.html
所在地:〒193-0826 東京都八王子市子安町四丁目7番1号 サザンスカイタワー八王子 3階
アクセス:JR八王子駅から徒歩3分(南口直結)、京王線・京王八王子駅から徒歩8分

まとめ

 いかがでしたか?八王子の名前の由来について、少し理解できたでしょうか。八王子という名前は、八人の王子を祀る八王子信仰が由来とされていることが分かりました。八王子城跡と桑都日本遺産センター八王子博物館を訪れてみて、八王子の歴史や文化を見て、聴いて、肌で感じることができる所だと思いました。老若男女問わず、誰でも楽しめる場所です。両施設とも無料で楽しめるので、ぜひ足を運んでみてください!

記事制作:2023年度 006班