見出し画像

会えない仲間

共同運営で回しているカフェで、先月からときどき店番をしている。今日はそこで開かれたイベントの手伝いをした。去年の11月に亡くなった運営メンバーの追悼イベントがあったのだ。

わたしは昨秋まで広島にいて、カフェに通うようになったのはこの春だ。だから、亡くなったメンバーには会ったことがない。ただ、みんながそのひとのことを懐かしそうに話すのを何度も聞いたし、そのひとが長い時間を過ごした場所に同じく入り浸っているわけで、赤の他人とは思えないのだった。

追悼の気持ちを込めて作られたzineが配られた。それを読んで、その人はかつて父が罹ったのと同じ病が原因で亡くなったのだと知った。

命日は2021年11月2日。生前に旅したメキシコでは死者の魂が帰ってくるとされる日だという。「あの世とこの世、行き来する気満々だよね。」とみんな話していた。

その人が亡くなり、みんなが悲しみに暮れていたころ、私は広島を発った。

そのひとが生きていた時間が、わたしの生きる時間と重なることはなかった。でも今日、少しだけその人生の片鱗に触れた気がする。

そして、その人が繋いだ縁の糸のはしっこをわたしも握っている。

恋人は、共同運営のカフェに何年か前から関わっている。初めて訪れたきっかけは、その人が雑誌に寄せた文章だったという。

今日は彼も一緒にイベントを手伝った。彼はお店で過ごす時間をとても大切にしている。そんな場所と繋いでくれたことに、静かに感謝していたのかもしれない。

わたしがお店を訪れたのは全然違うきっかけだった。でも、そのひとが雑誌に文章を書いていなければ、彼とわたしが出会うことはなかったのだ。

手伝いを終えて彼とご飯を食べ、ひとりで電車に乗ったときにそのことに気づいた。

会えない仲間、Hさん。
同じ時間は過ごせませんでしたが、みんなからよく話を聞きます。zineを読んでますます、お会いしたかったなと思いました。会うことは叶いませんが、Hさんが生きた時間の一部は確実にわたしの人生に繋がっています。Hさんの愛したこの場所を、わたしも大切にしていきます。どうぞ安らかに。   感謝を込めて まあじ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?