第二部: 地震予測、その可能性と課題 - 科学はどこまで迫れるのか
地震学者の本音:短期予測は可能なのか?
イベントの第二部では、
地震研究の最前線で活躍する北海道大学名誉教授の日置氏が登壇し、
地震予測、特に短期予測に関する現状と課題を、
地震学者の視点から率直に語りました。
日置氏によれば、
地震学者の間では、短期予測、
つまり地震発生直前に警報を出すことは
原理的に不可能だという考え方が根強いといいます。
その主な理由は、
「どんな地震も同じように始まり、最終的な規模は地震自身が知らない」という考え方です。
観測網の充実と予測への影響
1990年代以降、日本の地震観測網は飛躍的に充実しました。
しかし、皮肉にも、観測網の充実が短期予測への期待を打ち砕く結果となりました。
例えば、1930年の北伊豆地震では、
地震発生の数時間前から地鳴りや湧水などの前兆現象が観測されたとされています。
しかし、現代の観測網をもってしても、
そのような明確な前兆現象は捉えられていません。
この事実は、地震学者たちの間で「観測しても予測はできない」
という悲観論を強めることになりました。
新しい光: 電離層異常と前兆滑り
しかし、近年、新たな観測技術や研究成果により、
短期予測への希望の光も見え始めています。
一つは、上空の電離層における異常です。
巨大地震発生の数十分前から、
電離層の電子密度に異常が生じることが観測されており、
地震発生の予測に繋がる可能性が示唆されています。
もう一つは、地震発生直前の断層滑りです。
これまで、地震の直前に断層がわずかに動く
「前兆滑り」は存在しないと考えられてきましたが、
最新の研究では、
東北地方太平洋沖地震の際にも、
ごくわずかながら前兆滑りが検出されたことが報告されています。
南海トラフ地震: 予測の可能性と課題
日置氏は、これらの新しい研究成果を踏まえ、
次の巨大地震とされる南海トラフ地震において、
地震発生前に何らかの兆候が捉えられる可能性を示唆しました。
もし予測が実現すれば、
地震学の常識を覆すだけでなく、
防災対策にも大きな影響を与えるでしょう。
しかし、予測された情報をどのように社会に伝えるか、
誤報やデマへの対策など、解決すべき課題も山積しています。
まとめ: 地震予測研究の未来に向けて
日置氏の講演は、
地震予測という複雑なテーマに対する
地震学者の率直な思いと、
最新の研究動向を理解する貴重な機会となりました。
地震予測は、科学的な挑戦であると同時に、
社会的な責任も伴う難しい問題です。
しかし、新たな観測技術や研究成果によって、
少しずつその可能性が見えてきています。
私たちは、地震予測研究の進展を見守りながら、
日頃から防災意識を高め、いざという時に備えることが大切です。
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