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母の実家の近くに
「キヨシちゃん」は暮らしていました

ワタクシが幼稚園や小学生の頃
盆や正月など

母の実家に行って
庭先などで遊んでいると

キヨシちゃんが道を通ります


母が
「きよしちゃん元気かい?」
と話しかけると

キヨシちゃんは
ただ、ただ、恥ずかしそうに

顔をクシャクシャにして
ニコニコ笑います


キヨシちゃんは
すこしあたまの弱い人のようでした


それでも
畑仕事を手伝ったりして
暮らしていました

昭和の40年代の事です


~~~~~~

大人になってから
キヨシちゃんのコトを思い出して

母に聞きました
「そういえば、きよしちゃん元気かな?」


母は言います
「きよしちゃんは、さー」


キヨシちゃんは
たくさんの兄弟の上の方らしく

子供の頃から
弟や妹の子守りをずっとしてきました

赤ちゃんが泣いていたりすると

すぐに走っていって
抱き上げて、上手にあやします



時代は進み
昔からの村の中に

畑をつぶして
あたらしい住宅地ができて

そこに
遠くから来た家族が住みます



ある時
遠くから来たお嫁さんは

キヨシちゃんが
泣いている自分の子供を抱き上げて
あやして始めたのを見て

「何をするの!」という出来事が
あったそうです


すこしあたまの弱い
キヨシちゃんには

自分の兄弟も
他人の赤ちゃんも区別がなく

泣いてる赤ちゃんが
いたので

いつものように
可哀想になって、走り寄っただけでしたが
それがイケナイことでした


~~~~~~

「子供の頃からきよしちゃんを
 知ってる人ばかりじゃないからなー」

と、母はすこし涙ぐみます


「何をしでかすかわからない」という
コワさを訴える声が上がって

話し合いの結果
キヨシちゃんは
遠くの施設に移っていったそうです

~~~~~~

その後
母が地域のボランティアで
その施設を訪れると
作業をする、キヨシちゃんがいたそうです

「きよしちゃん元気かい?」と
話しかけると

キヨシちゃんは
恥ずかしそうに
顔をクシャクシャにして笑います


「それが、淋しそうでなー」
と、母を目を潤ませます

~~~~~~

ワタクシは、時々
この話を思い出すたびに

ホントウに
「何をしでかすかわからない」のは
誰なんだろう?

と、

胃の中に熱した石を放り込まれたような
気分になるのです

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