アミクとカンズのクラシック音楽の旅【8】〜バッハの音楽人生~

松田 亜有子「クラシック音楽全史ビジネスに効く世界の教養」を参考にしております。

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Q:Quinze(カンズ)さん

A:Amique(アミク)さん

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Quinze(カンズ)さんとAmique(アミク)さんは最近バーで知り合った友達。Amique(アミク)さんがクラシック音楽を教える大教授であることから、彼から色々クラシック音楽について教わるQuinze(カンズ)。カンズの質問は、また今度コンサートに一緒に行ってから、詳しく話すと伝えた。なぜならアミクは気づいたらまたミウのことを考えていて、自分の話をする気にはならなかったのだ。バッハの「ブルデンブルク協奏曲」にぴったりな彼女。まだ自分も20歳であれば、コンサートにでも一緒に誘っていたのかな…と考えている自分に気づき、ふと微笑んだ。30年間、愛妻と楽しく平和な毎日を暮らしてきた中、彼は一回だけ一人大学の女子学生と「不思議な」関係を持ったことがあった。一年しか続かなかったが、とても素敵な出会いだった。ミウはそういえば、あの彼女と雰囲気が少し似ていた。アウトドアが好きだった元の彼女のヘルシーな小麦色の肌と違い、ミウの肌はなんだかずっと雪の中に隠れて過ごしてきたように真っ白だったが…

Q:アミクさん、アミクさん、こっちこっち!

A:やっぱりいたね。カンズさん。最近クラシック音楽を聴き始めたりしている?

Q:そりゃあおかげさまで。ヘンデルのこの動画が好きでね、聞くと心が若くなっていく気がするんだ。

A:ヘンデルは確かに、カンズさんにぴったりだな。

Q:はは、バッハのような繊細な音楽は似合わないよねー。さて、今日の話題は?

A:今日は時代をまた現代に近づけてくる。市民革命の時代だよ!市民革命により王の権力が弱体化し、富裕層が力を増すんだ。そうすると、音楽っていうのも向きが変わってね。

Q:クラシック音楽って、権威に仕えるもんなんだな。

A:ピュアな音楽のように見えるけど、歴史、社会を見ていくとそれは正しい認識だよね。教会音楽を作り続けたバッハだけど、教会っていうのも政治と切り離せない存在だから。

Q:まあでも、市民革命は、ある意味人々を自由にした。そうでしょ。名誉革命で議会の優位が確立した。

A:そう。だから、音楽も「音楽家自身のための」音楽になったんだ。王侯貴族のためではなく、市民のための。作家の個人的な情念を表現した芸術が生まれていくこと。

Q:なるほどね。なんかそこで有名な作家さんはいないのかい?

A:テレマンだね。彼は曲の多さでギネス世界記録をも持っている、面白い人だ。

Q:なんだか可愛く、気晴らしには最適な曲やな。

A:彼の作品は様式が豊かで、「バロック作品の百科全書」と言われていた。彼はバッハとヘンデルと親交を持っている。

Q:音楽家ネットワークを見ていくのもなかなか面白いもんだね。

A:だよだよ。こういう風に、ハイドン、モーツァルト、ベートーベンと時代が下がるとともに、表現のラジカルさは極まり、古典派の頂点、ロマン派の始まりに至る。そして1743年かな、ライプツィヒに市民が使える音楽会場が、繊維の倉庫兼取引所である「ゲヴァントハウス」と言われるところに創設されるんだよ。

Q:音楽が、貴族の嗜みではなく、市民の生活に入り込んだんや。

A:音楽はルソーが言う市民の啓蒙の1つのツールであったわけだ。

Q:ふむふむ。

A:十八世紀後半に入るけど、ここも1つのハイライトが来る。前、第九を聞いたと言っていたよね、第九は交響曲なんだけれど、この時代に生まれたんだ。これまで、音楽というのはどちらかというと「伴奏役」だった。神に捧げるため、オペラやダンスの脇で支えるためなどね。でも交響曲は、楽器の集団そのものが見所だったんだ。

Q:なるほどね。それを作ったのが…

A:ハイドン、モーツァルト、ベートーベンだよ。ウイーンの古典派と呼ばれる人たちさ。後者二名が特に有名だけれど、ハイドンも大人物だよ。それほど裕福な価値ではないが、音楽好きな家族で生まれ。彼は合唱団にまず入っていて、美しい声を出すことから、かなり重用されていたようだけれど、カストラートという高音域が歌える男性歌手にさせられることになって、やめたようだ。

Q:カストラートって、なんか怖い役割なのか?

A:高音域を歌うってことは、子供の時は簡単だけど、男の子は成長するにつれて、声が変わるじゃないか。声を変えないために、人工的に手術をするんだよ。

Q:まじか。あんな時代に、そんな手術をやってたのか。ごめんだね。絶対失敗率高いじゃん。

A:それはよくわからないけど、それが理由でやめたようだからね。でもハイドンはそれよりも、音楽を作ることが好きだったんだと思うよね。彼は交響曲をなんと104曲も作ったんだ。モーツァルトは41曲、ベートーベンは9曲だから、相当だよね。

Q:質的には、どなんない?

A:それは後世に名前が残るほどだから、素晴らしいものだよ。オックスフォード大学で名誉博士号を授与されたこともあるみたいだね。それを成したのが、「ザロモン交響曲」。これは、交響曲の第93番〜第104番を示しているもので。

Q:なんでザロモン?

A:興行師ザロモンがロンドンに招いて、この12曲を演奏したらしいね。

Q:いいね!今日はなんとか疲れたよ。また、明日会おうか。

A:了解。(バーテンダーに向かって)すみません、お会計お願いします。

(続く)

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