注意されること

シェアハウスに住み始めて、数時間。

ドアの外で暴言が吐かれているのを聞く。

何事だろうとちょっと怖くなる。

それからコンコンと部屋のドアがノックされる。

ドアを開けると、私の指輪を手に持った女の人がいた。30歳を過ぎている。日本人じゃない。

「これ」あなたのでしょ、と言おうとしている目。

「あ、ありがとうございます」と受け取る。

それだけじゃないよね。ちょっと待つ。

「あのーここにルールブックあるでしょ。見ましたか?見てくださいね。ルールがありますから」

「あ、はい…」

会話が終わりドアが閉まった。

何を間違えたのだろう?

必死に考えたけど思い浮かばない。

シャワーの時に倒した吸水マットをもとに戻さなかったから?

シャワー室を拭いていなかったから?

不思議だったが、そのままにしておいた。

そして今日の朝、彼女にまたバッタリ会った。

「あのー、ここ。見ました?」シャワー室のドアを開いて、彼女はルールの紙を刺した「髪はまとめて自分の部屋にもち帰ってください」

「緑の箱に入っている紙ですか?それは私やっていないですよ」説明した。間違えられるのはごめんだ。

いや、黄色のです。と指を刺す彼女。

確かにそこは綺麗にしていないが、髪があったとしても数本だろう。だからそこまで気にしなかった。

無口になる私。

彼女も何も言わない。

気まずいと思って「はいはーい。わかりました〜!」と言って部屋に戻った。

世の中は、不寛容な方もいるんだと思った。キッチンは私がきた時すごく匂ってたから綺麗にしたのに。おまけに消臭機も自腹で買って設置したのに。

でもよくよく考えると、数本の髪とはいえ、確かに私は綺麗にしなかった。

それが私から見たらそこまで人の迷惑にならないだろうと思って甘えていたのを他の人からしたら髪の毛モンスターがずいに襲いかかるのではないかと思うぐらい怖がらしいものに映るのだろう。

それか数本だったとしても他の人の髪があったら気を壊し、自分の髪と一緒に持って帰るのが嫌になるのだろうか。

世の中はいろんな人がいるな。

だからルールが必要なんだな。

法学部に入るべき理由を四年生になってやっと見つけた。

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